高校生の挑戦 自慢の食材を選手村へ!

高校生の挑戦 自慢の食材を選手村へ!

東京2020大会の「食」によるおもてなし

「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」という3つの基本コンセプトが掲げられた東京2020大会では、選手の活躍を支えた選手村の「食」も、食品の安全性や持続可能性への配慮等について、高い品質が求められました。

東京2020大会の選手村で使用された食材・産地リスト

東京2020大会の選手村では、北海道の米、じゃがいも、たまねぎ、メロン、牛肉等、計16品目が使用されました。
詳しくは、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の公式ホームページをご覧ください。
(組織委員会ホームページにリンク)

食の未来へ繋がる農業に

東京オリンピック・パラリンピックの期間中、選手村等で提供される食材は「持続可能性に配慮した調達コード」を遵守することが必要で、第3者からの認証を受けたGAP※は、基準を満たすものとされました。このGAPの認証を取得し、選手村への食材供給の認定を受けた北海道の高等学校4校をご紹介します。

※GAPとは

GAPは、Good Agricultural Practicesの頭文字をとった言葉で、直訳すると「よい農業の取組」という意味ですが、一般的には「農業生産工程管理」と呼ばれています。
工程管理とは、言い換えれば、「農産物を作る際に適正な手順やモノの管理を行い、食品安全や労働安全、環境保全等を確保する取組」のことです。
GAPに取り組むことで、わたしたちが口にする食品の安全や、自然環境の保全、生産者の労働安全や人権の保護に配慮し、将来的に持続可能な農産物の供給の実現につながります。
また、持続可能な取組を求める2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村などで提供される料理にGAP農産物が使われました。

北海道大野農業高等学校(北斗市)

選手村への供給食材 認証取得しているGAPの種類 GAP認証品目
JGAP 米(玄米・精米)
ASIAGAP りんご、ぶどう、西洋なし、日本なし、トマト、ミニトマト

北海道大野農業高等学校について

認証書と精米の製品認証にメインに取り組んだ農業科3年水稲班
●認証書と精米の製品認証にメインに取り組んだ農業科3年水稲班

本校は昭和16年に創設され、今年度創立80年の節目を迎える農業高等学校です。現在の3年生までは「農業科」「園芸科」「食品科学科」「生活科学科」の4学科を設置していました。現在の2年生からは「農業科学科」「園芸福祉科」「食品科学科」の3学科に再編し、新たな大野農業高校が出発しています。また、北斗市は1658年に道内で初めて稲作が行われた北海道水田発祥の地であり、水田はもとより、園芸作物や果樹栽培も盛んな地域です。

GAP取得に取り組んだ経緯や、取組による教育変化について

今年度の審査の様子(維持審査)
●今年度の審査の様子(維持審査)

以前より、安全・安心な農作物を生産しようと様々な取り組みをしていました。しかし、科学的な根拠となるものが何かないだろうかと考えていたところ、2020年東京オリンピック・パラリンピックが近づき、GAPが注目されるようになり、GAP認証を目指しました。本校で生産される米はほぼ精米で販売していることもあり、精米まで認証範囲のあるJGAPの認証を目指し取り組みはじめました。その後、地域でも生産の盛んな果樹と野菜でASIAGAP認証を受けています。

東京2020大会出場のオリンピアン、パラリンピアンに食材供給できたことについて

水田発祥の地碑
●水田発祥の地碑

GAPに取り組みはじめるときに、オリンピックの選手村などでは、GAP認証がないと、食材として採用されないということから、安全性の証明になるものだと考え、取り組みはじめた事もあり、実際に食材を提供できたことに関して、本校の生産工程が安全であるということが証明されたことだと感じています。また、地元で生まれ育った「ふっくりんこ」を世界中の人に食べてもらえたということも、北海道米の良いPRになったと感じています。

東京2020大会への食材供給に向けた取組の経験により得たもの。今後にいかしたいこと。

GAPのルールに則った除草剤散布
●GAPのルールに則った除草剤散布

食品の安全がいかに難しく、大切なことかを実感しました。そして、GAP取り組み前に考えていた安全は、経験値から来る安全が多かったと感じています。これからは客観的な安全、科学的根拠のある安全が大切であり、それが農業に求められている時代だと思います。農業王国北海道の農業高校として、GAP認証の有無にかかわらず、安全なものを生産し、安心も一緒に販売できるような農業を目指していきたいと考えています。

東京2020大会を通じて取り組んだこと、取り組んだことを卒業後にどういかしていきたいですか?

生徒の声 農業科/3年

食材提供に関しては,大会終了後に知ったので、意識して取り組んでいたことはGAP認証農場への取組でした。特に、リスク管理については、農場での実習時にも、何のための作業か、何に気をつけたら良いのか、この作業にはどんな危険があるかなどを考えるようになりました。卒業後は直接農業に関わる進路ではないですが、このリスク管理は有意義なものだと考え活かしていきたいと思います。

北海道岩見沢農業高等学校(岩見沢市)

選手村への供給食材 認証取得しているGAPの種類 GAP認証品目
GLOBALG.A.P. 米(玄米)、ダイズ、タマネギ、スイートコーン、サツマイモ、トマト、ホウレンソウ、ネギ、ニンニク、カボチャ

北海道岩見沢農業高等学校について

GAP審査時にGAPチームと審査員で集合写真を撮影しました
●GAP審査時にGAPチームと審査員で集合写真を撮影しました

本校は明治40年に開校した北海道では最も古い歴史のある農業高校です。全校生徒は709人(1月12日現在)で、学科は農業科学科、畜産科学科、食品科学科、生活科学科、農業土木工学科、環境造園科、森林科学科の7学科を有しており、それぞれ特色ある教育活動を展開しています。校訓「至誠」のもと、生徒の自己実現、先進的で実践的な学び、地域農業に根ざした学習、国際化や情報化に対応する学びを重視しています。卒業生の多くは地域・北海道農業のリーダーとして活躍されており、生徒たちも「未来の地域のリーダー」となるべく日々の学習に励んでいます。実習生産物も米、作物、野菜等農産物。卵や牛乳といった畜産物。ハム・ソーセージ・チーズ・ケチャップ等の加工品。花や林産加工品など学科の実習において生産・製造しています。

GAP取得に取り組んだ経緯や、取組による教育変化について

審査時の様子です。多くのご指摘・指導をいただきました
●審査時の様子です。多くのご指摘・指導をいただきました

本校農業科学科は農家子弟、農業後継予定者が全体の約6割在籍しており、将来に向けて日々、農業の基礎基本から、将来に活きる専門的な学習を行っています。近年オリパラの食材調達基準を契機にGAP認証取得が話題となり、世界基準の農業経営の実践について実学を通して学ぶ目的で取得を決めました。しかし、認証取得を数年続ける中で、目的や取得の意義はより多岐にわたってきている気もします。経営改善、販路の拡大・マーケティングを考えるきっかけ、経営者としてより良い労働環境を考えるきっかけ等、現在は「GAPをする」ことの意義、「GAPをとる」ことの目的を十分に感じながらGAP認証に生徒達と共に向き合っています。

東京2020大会出場のオリンピアン、パラリンピアンに食材供給できたことについて

施設の整備・清掃も定期的に行っています
●施設の整備・清掃も定期的に行っています

世界規模のイベントにおいて食材供給できたことは生徒たちにも大きな自信につながっていると考えます。GAPをとることの効果や意義について、普段学習をしていますが、「食材調達基準としてGAPがある」ということをより実感できたと同時に、なぜGAPが重要視されているのか。なぜ食材調達基準となっているのか等について考えることで、よりGAPの意義について理解を深めることができたと感じます。併せて食材供給を通して世界の農業について考え、国際社会の中での日本の農業の位置づけを理解し、そのことから自らの将来の農業経営や世界のマーケットを意識することにもつながったと感じます。

東京2020大会への食材供給に向けた取組の経験により得たもの。今後にいかしたいこと。

リスク評価についてはグループワークを行い整理します
●リスク評価についてはグループワークを行い整理します

GAP認証はオリンピック・パラリンピックに向けてだけではなく、将来の農業経営の選択肢・手法を学ぶ意味もあったため、今後も継続します。今回食材供給できたことで上記したような生徒たちの変容があり、成長があったことが大きな成果であったと考えます。また普段あまり農業の「国際化」について身近に考える機会がないのですが、今回はそのきっかけにもなりました。生徒の中には「将来は自分の作った米を輸出するんだ!」と目標を立てる生徒も出てきました。

東京2020大会を通じて取り組んだこと、取り組んだことを卒業後にどういかしていきたいですか?

生徒の声 農業科学科/3年 南 葵衣さん

私は将来、医療系の仕事に就くため進学します。農業分野には進まないのですが、GAP認証の学習やオリンピック・パラリンピックでの食材供給を通してリスク管理の大切さや、安全で安心な農産物を供給することの大切さについて深く勉強することができました。このことは今後の仕事にも活きることだと考えています。医療と食は重要な関わりがあると思うので、高校時代の経験を今後に活かしていきたいと考えています。

GAPの取組を通じて学んだこと、卒業後、農業経営にいかすとしたらどのようなことですか?

生徒の声 農業科学科/3年 石川 勇雅さん

私は高校卒業後、農業機械の会社に就職し、その後将来的には実家の農業を継ごうと考えています。GAPで学んだことは将来に直結することばかりで、農業生産に関わる資材の整理や無駄のない農薬や肥料の管理、そしてオリンピック・パラリンピックの食材供給を通して国際水準の農業を意識するようになり、将来は我が家の米を輸出したいという夢も生まれました。高校で学んだことをもとに就農に向けてさらにGAPへの理解を深めていきたいです。

北海道旭川農業高等学校(旭川市)

選手村への供給食材 認証取得しているGAPの種類 GAP認証品目
ASIAGAP 米(籾・玄米)、メロン、セルリー
※令和4年1月現在の認証品目はメロン、こまつな

北海道旭川農業高等学校について

国際水準GAP教育推進プロジェクトでの活動発表
●国際水準GAP教育推進プロジェクトでの活動発表

本校は1923年(大正12年)に創立され、2023年には創立100周年を迎えます。平成14年に学科転換を実施し、農業人・担い手育成に向けて取り組む「農業科学科」、地域産業に関わる産業人育成に向けて取り組む「食品科学科」、林業担い手育成に向けて取り組む「森林科学科」、花育活動に視点をおいた教育実践に取り組む「生活科学科」の4つの学科体制で農業教育を実践しています。

GAP取得に取り組んだ経緯や、取組による教育変化について

生育の記録(記録の保管)
●生育の記録(記録の保管)

GAPの理念の中に農産物の安全を確保して消費者を守り、地球環境を保全し、同時に持続的な農業経営を確立することが最終的な目標とあります。この目標を達成する過程の中で農産物の生産工程についてのPDCAサイクル、消費者を考える栽培計画・管理・品質・流通・販売、農業環境を保全する地域交流食育学習と農業環境保全啓蒙活動、農業経営の観点から経営分析や作付け、地域農業者との交流、リスク評価、農業管理システムの活用から記録の整理整頓など、漠然と広がっていた農業の知識・技術・管理手法が整理され3年間しかない学習環境の中で地域農業を学び具体的に課題を発見し、学校農場を活用したプロジェクト学習や経営実践を行えるため、GAPを教材として活用することは学びを深める教材の一つであると考えています。

東京2020大会出場のオリンピアン、パラリンピアンに食材供給できたことについて

管理情報共有(情報共有)
●管理情報共有(情報共有)

消費者の声はなかなか生産者に届かないところが1次産業を支える農業の少し寂しいところです。しかし、コロナ禍で開催された東京2020大会はオリンピアン、パラリンピアンの方々の熱戦や選手村での笑顔溢れる滞在の様子は連日報道機関を通して私たちのもとへと届きました。間接的ではありますが、それらの情報を通じて世界各国から参加された選手の方々の活躍を食材提供を通して支えることができたのは生産者の喜びです。

東京2020大会への食材供給に向けた取組の経験により得たもの。今後にいかしたいこと。

品質確認(TACCP、VACCP)
●品質確認(TACCP、VACCP)

認証取得により国際規格で安全を担保するため、リスク評価など農業生産における多くの必須管理点が明確になりました。また、次世代につながる人材育成や地域農業の担い手と一緒に考える場が生まれ、地域農業を発展させるという意識やコミュニティの輪が広がりました。蓄積した管理圃場のデータは、更なる進化に繋がるもので、今後の大切な運用データとなりました。GAPは一農家で取り組んでも意味の無いと考えます。地域全体で取り組むからこそ地域全体の信頼や信用が高まり、世界を相手に農業経営をするときに生産量や品目面で対応が可能になり、農産物の流通・販路が拡大されます。引き続き地域と共に進化し続ける農業人の育成に努めていきます。

東京2020大会を通じて取り組んだこと、取り組んだことを卒業後にどういかしていきたいですか?

生徒の声 農業科学科/3年 加藤 頼亜さん

「当たり前」なことですが、全ての生産物は安心で安全なものでなくてはならない。それは「想い」だけでも「知識・技術」だけでも「システム」だけでもいけない。全てがそろった上で、継続されなければ「当たり前に安心・安全な生産物」にはならない。卒業後は食肉加工・解体業に就職します。当たり前の事を当たり前にこなす大人になります。

GAPの取組を通じて学んだこと、卒業後、農業経営にいかすとしたらどのようなことですか?

生徒の声 農業科学科/3年 羽根 有哉さん

持続可能な農業生産工程がGAPです。優良農産物栽培手法ではありません。GAPの最も大切なことは広い意味での「安心・安全・信用・信頼」の証明です。良いものを美味しいものを育てた上で、様々な角度から「安心・安全・信用・信頼」を証明します。理想は一農家での証明ではなく、地域、北海道、日本と見方が変わっても証明ができることです。まずは地域と団結できる農業経営者を目指します。

北海道士幌高等学校(士幌町)

選手村への供給食材 認証取得しているGAPの種類 GAP認証品目
ジャガイモ GLOBALG.A.P. ニンニク、ニンジン、コムギ、ジャガイモ

北海道士幌高等学校について

食材提供されたジャガイモ
●食材提供されたジャガイモ

士幌町は酪農や畑作を基幹産業とした農業地帯であり、そこに位置する士幌高校は栽培、畜産、食品加工と幅広い分野を学習できる農業高校です。ドローンや農業ICT機器を導入し、農業教育の専門性を向上させ、特色のある体系的農業教育を推進し、生徒の個に応じて自己実現への道を支援することを目標に、現在125名の生徒が在籍しています。栽培ではGLOBALG.A.P.や有機JAS認証、畜産ではアニマルウェルフェア認証、食品加工では北海道HACCP認証を取得し、栽培から加工まで一貫して管理された生産体系を確立しています。これらの教育活動は『志』プロジェクトによって、生徒一人一人の夢や目標がブランド化され、自己実現につながっています。

GAP取得に取り組んだ経緯や、取組による教育変化について

ジャガイモ収穫の様子
●ジャガイモ収穫の様子

東京2020オリンピック・パラリンピック開催を機に持続可能な農業の推進として、士幌高校では5年前より、GLOBALG.A.P.認証取得とその普及活動を行ってきました。最初は書類の整理や細かい決まりを守る事への戸惑いはありましたが、経験を重ねるごとに学校全体として定着しています。GAPの管理点を授業の中に盛り込むことにより、生徒の安全確保や農産物の衛生管理につながっています。生徒達は自ら認証審査に対応し、その経験を「高校生GAPコンサルタント」として、地域に普及する役割も果たしています。また、GAPの更なる研究をするため大学へ進学した生徒や、教師や普及員としてGAPを指導したい生徒など、進路実現にも大きな効果をもたらしています。

東京2020大会出場のオリンピアン、パラリンピアンに食材供給できたことについて

GLOBALG.A.P.公開審査
●GLOBALG.A.P.公開審査

士幌高校では認証審査を重ねるごとに生徒の意識や、農場の管理が改善され、より衛生や環境に配慮した栽培が可能となり、選手に安心・安全な農産物を届けることができました。また、化学農薬や化成肥料を使用しないで栽培する有機JAS認証も同時に取得しています。今回提供したジャガイモも有機JAS認証圃場で栽培しており、選手の健康に配慮した農産物を提供することができました。私たちが栽培したジャガイモを食べた選手が大会で活躍する姿を目にすると、私たちも食のオリンピアンとして活躍できたことを大変嬉しく思います。

東京2020大会への食材供給に向けた取組の経験により得たもの。今後にいかしたいこと。

GAP食材を使った高校生おもてなしコンテストのメニュー(中央 ジャガイモのチャンチャン焼きのピンチョス)
●GAP食材を使った高校生おもてなしコンテストのメニュー
(中央 ジャガイモのチャンチャン焼きのピンチョス)

今回の食材提供を通して、安心・安全な農産物を栽培するにあたりGAP認証の重要性を理解することができました。これらの経験によって得た知識は生徒の自信となり、進路実現へつながっています。また、「高校生GAPコンサルタント」として地域の農家へGAPを普及することができました。今後は日本の農業情勢を把握し、「みどりの食料システム戦略」を見据えて、有機農業の普及にも力を入れていきます。次に日本でオリンピック・パラリンピックが開催されるまでにGAPや有機JASの認証農場を増やし、選手のみならず国民も安心できる食料生産につなげていきます。

東京2020大会を通じて取り組んだこと、取り組んだことを卒業後にどういかしていきたいですか?

生徒の声 アグリビジネス科 /3年 安部 拳太さん

私たちは先輩達の代から、東京2020オリンピック・パラリンピックへの食材提供を目指して、GLOBALG.A.P.認証に取り組み、食の安全性を理解することができました。私は今後、農業系の大学進学を予定しており、そこでGAPや農産物の安全について更なる研究を行い、将来は農業高校の教師となって、生徒に教えていきたいです。そして、次に日本で開催されるオリンピックへ食材提供ができるように、オリンピックレガシーを次世代に継承します。

カテゴリー

page top