JA 北海道厚生連 ニセコ羊蹄広域 倶知安厚生病院
専攻医
横山 誓也
医師プロフィール

出身
岡山県岡山市
略歴
- 2020 年 香川大学医学部卒業
- 2020 年 北海道大学病院 臨床研修
- 2022 年 JA 北海道厚生連 ニセコ羊蹄家庭医養成プログラム
- 2022 年 JA 北海道厚生連 ニセコ羊蹄広域 倶知安厚生病院に勤務
趣味
ダンス、バレーボール、動画編集、フラワーアレンジメント
座右の銘・ モットー
You reap what you sow.(結果は後からついてくる)
総合診療医を志した理由
初期研修を始めた当初、特に志望する診療科はありませんでした。「患者さんとしっかり関わりが持てる科がいいな」と漠然に感じていたとこに出会ったのが、地域医療研修で訪れた倶知安厚生病院の総合診療科でした。
恥ずかしながら、それまで総合診療という言葉すら聞いたことがないレベルでした。え、そんな診療科があるんですか?
という。
「なんでも診られる医師」、医師の道を志したときに、一度は誰もが憧れる理想像です。しかし臨床を経験するにつれ、その実現がいかに難しいかを痛感すると思います。ところが総合診療科の先生方はその無理をやってのけているんです。
患者さんのどんな問題にも目を背けない。病気だけでなく生活のこと、ご家族のこと、何でも。その人を取り巻くすべてに向き合っている。
「自分でなければこの患者さんを誰がみる?」
その人のすべてをみるというのは大きな責任を伴い、とても困難なことです。ともすればプレッシャーかもしれません。
けれど私からすれば、患者さんの人生に深く関わらせていただける、かけがえのない経験であり、何よりの喜びです。
「逃げ場のない難しさ」の中に溢れる魅力に、私は強く惹かれました。

国籍の壁をこえて、すべての人に医療を届けたい
専門研修の研修先は迷うことなく倶知安厚生病院に決めました。最初に総合診療科に出会って衝撃を受けた場所だったこともありますし、もともと英語を使って仕事をしたいという思いもありましたから。外国人患者さんとの関わりが持てる環境を重視していました。
倶知安町・ニセコ町エリアは国際的なリゾート地で、冬のトップシーズンには3,500人を超える外国人が居住します(※)。人口比で約20%です、驚異的です。街中はまるで外国そのもの、スーパーには大きなカートに山盛りの食材やお菓子を積み込んで歩く外国人の家族連れ、温泉地としても有名な当エリアは浴場がどこもテルマエ・ロマエ状態です。
そのため、日常的に外国人の患者さんを診る機会があります。スキー場等でケガをして救急車で運ばれてくるケースも多く、私の定期外来に通院されている方も少なくありません。
皆さんが思い浮かべる、外国人患者さんの医療における壁といえば、まずは言語の壁ではないでしょうか。実際、言語面も問題は非常に大きな障壁です。翻訳ツールを駆使したり通訳の方の協力をもってしても、それでも伝言ゲームのようにニュアンスが抜け落ちたり、解釈のズレが生じたりすることがあります。
言語の壁だけでなく文化や制度の違いも、また一つの大きな障壁です。たとえば外国人患者さんの中には、医療システムの違いに戸惑ったり、費用の不安から受診を控えてしまう人もいます。その一方で夜間の救急外来に緊急性のない日常のお困りごとを相談に来られる方もいます。こうした外国人の方々に対して、十分な理解を持たないままでいると、私たち医療者側が「また外国人の方か」と、無意識的に身構えたりしてしまう危険性があります。外国人の方々は私たち医療者側に迷惑をかけたいわけではなく、ただ助けを求めているだけなのに、手を差し伸べるべき側が邪険に彼らを扱ってしまうような望ましくない世界です。
言語、文化や医療制度の違いといったギャップを正しく理解し、どのように対応すれば外国人患者さんたちが安心して受診できる環境を整えられるのか。それが今後の課題だと感じています。
だからこそ私は、日々の診療を通して気づいた課題や患者さんの声を院内で共有し、そして地域で暮らす外国人の方に発信することを通して、医療機関と外国人患者さんとの間にあるギャップを少しでも埋めていけたらと考えています。
私一人が、たとえば英語力を高めたとしても、それで救える人は限りがあります。持続的に多くの方を支え続けられる医療を実現するためには、病院という組織全体、そして地域社会を巻き込んでいくことが必要だと感じています。その考えを実践していこうと、周辺のホテル等の民間事業者の方と共に協力しながら、外国人対応の仕組みづくりに取り組んでいます。
※倶知安町 https://www.town.kutchan.hokkaido.jp/profile/toukei/「外国籍住民数」より

病気ではなく、人を診る医療
私は日々、「目の前のこの人を”患者さん”にさせない」という思いを胸に診療にあたっています。これは単に病気を予防するという話ではありません。病気を持つ人とばかり捉えないようにするという意味です。
誰しも病気になりたくてなるわけではありません。病気を抜きにすればもともとは誰もが家庭人であり、仕事人、趣味を持つ一人の人間です。
それを、たとえば健康診断で血圧やコレステロールの値が引っかかっただけで、「生活習慣病」とラベルを貼られてしまう。本人に自覚症状もなく困っていないのに、突然患者というカテゴリーに入れられるのは、当人からすれば戸惑いや不本意さを感じるものではないでしょうか。
もちろん病気を治療することは大切で、特に病院という場ではどうしても病気の話が中心になります。それでも私が心がけているのは、その人を病気の面だけで論じないようにすることです。
私たち総合診療医は、病気そのものだけでなく、家族構成や仕事、生活習慣など、いわゆる全人的なコンテクストの理解に努めます。そうした背景を知ることで、その方に合った治療の糸口が見つかります。
何より信頼関係が生まれます。結果的としてそれが治療効果の向上につながることも、国内外のさまざまな研究で明らかとなっています。
皆さんも、たとえば生活習慣病を持っていたとして、あまり信頼をおけない医者に「甘いものを控えましょう」「運動をしましょう」と伝えられても素直に「よし、やろう」とはならないでしょう? 医師・患者間の信頼関係の深さで、言葉の響き方や行動の変化、ひいては治療効果も大きく違ってきます。
私はこのように患者さんの背景や思いを理解しながら関わることで、その人自身と病気とのより良い関係の築き方を一緒に模索できると考えています。そしてその積み重ねの中で生まれた関係が、その人の健康を支える力になるとも考えています。年齢も性別も、職業も国籍もさまざまな患者さんと向き合う日々、その一つひとつの出会いが、私自身の視野を広げ、総合診療医としての成長を実感させてくれています。
地域にフィットする、スライムのような医師に
総合診療科の強みは柔軟性だと考えます。その地域のニーズに合わせて、自分の役割や提供する医療を柔軟に変えられる。
そうした対応力を身につけるために、専門研修の4年間で多様なセッティングでの診療を経験させていただきました。
倶知安町では、外国人の患者さんへの対応が求められているように、病院・診療所のある地域ごとにそれぞれ異なる課題があります。現在は先ほど述べました通り、外国人住民の方の医療課題に対して、院内外でできることを考え、その解決の一助になりたいという気持ちで日々の診療に当たっています。
これを読んでる方の中に医学生や研修医の方といった方もいると思いますが、きっとどの診療科を選ぶか、どんな場所で働くか悩んでいる方もいらっしゃると思います。ぜひ一度、総合診療科に触れてみてください。「こんな面白い領域があるんだ」「そういえば自分はこんな医師像に憧れていたよな」と、ピンとくるものがあるかもしれません。私自身がそうだったように。悩んでいる人にこそ、きっと響く領域だと思います。
総合診療は「浅く広くみる医者」とも言われたりしますが、実際は深く広くみる医者だったりもします。「それだとやっぱりすごく勉強や臨床経験も積まないといけないんですか?」はい、その通りです、めちゃくちゃ大変です(笑)。でもそれに見合う楽しさ、面白さ、充実感に溢れている世界です。ぜひ飛び込んでみてください。


「外国人患者さんを診たい」
世界的に有名なリゾート地であるニセコエリアを診療圏に持つニセコ羊蹄広域倶知安厚生病院。
外国人診療に興味があった先生は、その地を研修の軸の地と選びました。
そこで診療を重ねるうちに、外国人患者さんが抱える医療の壁、医療スタッフ側の壁に気づき、こうした壁を取り払えるように日々取り組んでいると話します。