電気工学科 電気の「ワンポイント」なるほど
電気の「ワンポイント」なるほど
お話その3 晩ご飯の最中に突然、家の中が真っ暗になった!…。
今夜の晩ご飯は、A君の大好きな焼き肉です。ホットプレートで牛カルビを次々焼いて、楽しみにしていたテレビ番組を見ながら、家族で楽しい時間を過ごしていました。
しかし、弟B君が自分で冷凍庫からソーセージを取り出し、電子レンジでチンした途端、家の中が真っ暗になってしまいました。何が起きたのでしょうか?
どうやら、玄関付近の壁にあるブレーカーが落ちたようです。原因は、皆さんが中学2年の理科で習った「電力W=電圧V×電流A」によって理解することができます。
<解説>
一般住宅の電気は、契約アンペア数30Aなど電気会社との契約で決まっています。
つまり、30Aであれば、住宅内で消費電力が3,000W(100V×30A)を超える家電を同時に使ったら、契約オーバーとして供給電気が切れる仕組みになっています。
なお、安全のため、住宅内の各コンセントは、一定個数ずつ1グループ(系統)につながっていて、3~6グループ構成になっていますが、1グループ内で使われた電力が2,000Wを超えるとブレーカーが落ちるようになっていますので、使うコンセントを分けたつもりでも近いコンセントで多くの家電を使うとブレーカーが落ちる場合があります。
それでは、A君の家で起きたことを理科で習った電力を思い出して考えて見ましょう。次の家電の消費電力は、家電の稼働初期等に生じる最大消費電力で考えます。
ホットプレートの消費電力は1,300W、テレビの消費電力は250W、冷蔵庫の消費電力は500W、電子レンジの消費電力は1,300W、4つの合計は3,350Wです。
契約アンペア数30Aで、4つの家電が同時に最大消費電力になれば、一時的に3,000Wを超え、ブレーカーが落ちて当然となります。消費電力の大きな家電を同時に使うのは要注意です。
このように、皆さんが理科でならった電力の計算は、生活に必要な知識でした。
なお、住宅内の配線の設計や工事をする電気工事士は、建て主さんの希望を聞いたり、最近の生活スタイル、使用家電等の最新情報を収集しながら、住宅を使う人が快適に暮らせるよう、電力の計算をしながらコンセントの配置を考えています。
お話その2 キッチンのガスコンロをIHクッキングヒーターに替えるには200Vが必要です。…。
おばあちゃんの家の台所のガスコンロを安全のためにIHクッキングヒーターに換えてあげようと思ったら、IHは電気をたくさん使うから200Vがないとダメといわれました。家の中のコンセントはどれも100Vのはずなのに、何か工事が必要になるの?
<解説>
実は、近年の戸建て住宅への電気の引き込みは、外の電柱から単相3線式といって、3本の電線(L線は+100V、N線はいわゆ±0V、L’線は-100Vで、L線とL’線を使うと200Vになる)が住宅内の分電盤まで引かれることが多くなっています。
ですから、分電盤内に200V使用可能なブレーカーがなければ、電気工事士にお願いして分電盤内等の配線工事を少ししてもらえば、IHクッキングヒーターは使用可能になります。
発電所で作られた電気は、ロス無く遠くまで送るために交流になっていて、高い鉄塔の電線も住宅周辺の電柱の電線も3本一組の3相3線式で送電されていますので、このことをもう少し自分で調べて、友達に自慢してみるのもいいと思います。
お話その1 地下鉄の中でもスマホがフツーに使えていますが…。
少し前までは、ドライブしていてトンネルに入るとラジオが切れちゃった、電車がトンネルに入った途端に電話が切れちゃったという話をよく聞きました。
しかし、今は、トンネル内でもラジオが聴けることが多く、地下鉄に乗っていてもずっとスマホが使える便利な世の中です。でも、ラジオや携帯電話の電波が地面を通過してトンネル内や地下まで届いている訳でもないのになぜでしょうか?
それは、私たちの安心安全、あるいはサービス向上のために、トンネル等の工事に関わる人たちがある技術を使ってトンネル内や地下でも必要な情報を受け取る、電波を受信できる環境を作ってくれているからです。
では、どんな技術かというと、電波をトンネル内や地下にいる私たちに届けるには、真っ直ぐ遠くに電波が飛ばせるアンテナを使う方法もありますが、今回は「電波の漏れる同軸ケーブル」を使った技術を紹介します。
最近、よく耳にする「スマホを置くだけで充電」もそうですが、小学校や中学校の理科の授業で習った「電流によって磁力が発生」「磁力を変化させて誘導電流が発生」する原理が大いに発揮しています。
そもそも電波とは、電線に電流を流すと直角方向に磁界が発生する原理を利用していて、 プラスマイナスを短時間で変化させる高周波電流(交流)を電線に流すと、高周波電流の変化に連動して、電線と直角方向に磁界(と電界)が発生し、それが波が伝わるように空間に広がっていく電磁波のことです。
つまり、ラジオ番組や携帯電話などの音声情報は、一度、地上の機械で高周波電流という振幅が変化する電流に変えて電線に流し、流れた電流が電磁波に変わってアンテナから外の空間に放出され、私たちのラジオやスマホのアンテナでそれを受信し、再び高周波電流を音声情報に戻し耳で聞くことができるようになります。
でも、交流電流が流れる電線から電磁波が発生すると、まわりの機器に「誘導電流」を発生させ誤作動など悪い影響を及ぼしたり、高周波数電流にのせられている情報を盗聴されたりする恐れがあるなどの問題があるため、多くの機器では電磁波を通さない材料で電線を包んだ「同軸ケーブル」が通常使われています。
皆さんの家庭のテレビの裏から出ている丸い電線が「同軸ケーブル」です。
しかし、発想を逆転させて、あえて、この同軸ケーブルに小窓(水とかホコリが入ったら困るので穴が空いている訳ではありません。)を空け、高周波電流に応じた電磁波が空間に漏れ広がるようにした「漏えい同軸ケーブル」(アンテナの役割をするケーブルということです。)が考え出されました。
このケーブルをトンネルや地下鉄の軌道内に張り巡らし、そのケーブルから漏れる電磁波を自動車のアンテナやスマホが受信することで、私たちはラジオを聴き、通話を続けることができる仕組みになっています。
子どもの頃に理科で習った電気の原理と発想の転換で、私たちの暮らしがグンと便利になっています。
皆さんも、電気の仕事に就いて、ぜひ、もっと素晴らしいモノを見つけてください。