札幌観光バスにて、運転士として採用された佐藤さん。
6年前に移住し、現在は札幌観光バスで唯一の女性バス運転士として活躍しています。
バス事業者を目指したきっかけは?
以前から旅行が好きで、自ら運転しては遠出をし、日本を一周したこともありました。
前職を退職し専業主婦として過ごしていた時に、好きなテレビ番組を見ていたら突然「 運転することが好きだし、二種免許にチャレンジしてみようか」と思い立ち、「取るなら大型二種免許でしょ!」と、勢いまかせに合宿免許を申し込みました。
その後、取った免許は活かさなきゃと、またも勢いまかせにインターネットでバス運転士の求人を検索し、通勤しやすく、未経験者への研修が手厚い現職場に応募しました。
また、普段運転していて、尊敬したくなるような走り方をしているのはバスで、そういうふうに自分もなりたいと考えたことが、バスを目指した大きなきっかけです。
入社後の研修で苦労したことは?
・業界未経験だったため、話に出てくる言葉の意味がわからないことがあり、本やネットで調べるか、周囲に尋ねるなどして解決していました。
・教官も常に真剣なためどうしてもきつい言葉で指導されることが多々ありましたが、自分が出来るようになるしかない、そしてこれは安全のために必要なことであると理解し、受け止めていました。
・移住してきて約6年、まだまだ土地勘がなく今までナビ頼りだったため、道を覚えることがとても困難…研修走行の際にメモを取り、GPSログを記録し、走行ルートを地図にメモして要点をまとめたノートを作り、ノートの内容だけを頼りに自分の車で走るといったことをしていました。
実務が始まってどうですか?
実務が始まって半年過ぎたところでようやくバスの車体感覚に慣れ、ある程度思いのままに操作することができるようになってきました。
移住者でありもともと北海道の地理に詳しくないことと、これまでカーナビに頼りきりだったので、道を覚えるのが最も苦労している部分で、休みの日にドライブを兼ねて次に仕事で行く場所まで走ったりもしています。
もうすぐ2年が経ちますが、あまり行ったことのない場所に関しては業務の前夜までに道を調べて自分で地図を作っておくなどの対策は欠かしません。
それでも、初めの頃と比べると、最近はあまり地図を見なくても行けるようになった場所が少しずつ増えてきているので少し気が楽になっています。
業務を行う上でこれだけはブレないように持っておこう、という意識づけに関する事柄がいくつかあり、
・二種免許を持つ者は他のドライバーの模範となる
・急ぐことよりまずは安全
・自分以外の人間はすべてお客様(どこへ行っても誰かから必ず見られている)
上記3点は常に頭の片隅に置いています。
女性ならではの苦労などはありますか?
・帰りが遅くなることが多く、家事との両立が難しいので子育てや介護をしている方だと観光バスは難しいかもと感じます。
・男女で物事のとらえ方や思考のプロセス、表現手段なども違う部分がある…ということを認識した上で、多少キツいことを言われても気にしないこと、相手の言いたいことは何なのかを考えるようにしています。
ガチガチの男社会でやってきた教官が「どうやって教えたら理解してもらえるだろうか?」という面で不安に思っているのだという話も耳にし、歩み寄ってくれていると感じました。
・バス事故のニュースで「女性運転士と乗客が」と表現をしていたことがあり、運転士とだけ言えばいいのになぜ「女性」と誇張するのか?と疑問に思いました。
やりがいや達成感を感じたことは?
以前研修で行ったときに「こんな場所に入れるの難しすぎる!」と思った駐車場があったのですが、最近一人でその場所へ行くことになり、実際入れてみたら案外すんなり入れられたとき、思わず一人ニヤニヤしてしまいました。
また、ツアーの最後、降車場所でお客様をお見送りするときに握手を求められたことも強く印象に残っています。
バス事業従事者を目指す人へのメッセージ
よく「女だから」と色々と制限されるような物言いをしますが、女性だからといって不可能はないと思います。運転士不足の今、先輩方も会社の方々も皆凄く応援して助けてくれます。
観光バスは旅の思い出の一つとして記憶にも記録にも残りますし、多くの人々の生命を預かって走る責任重大な仕事でもあるのでプレッシャーは大きいですが、その分得るものも多いはずです。
二種免許取得からサポートしてくれる会社もあるので、全く知らない世界に飛び込んでみたいという願いも叶いやすいです。