林業・木材産業の不思議な世界

山並み

 林業の世界ってどうなってるの?本州と比べて何が違うの?など、一般の方には馴染みの少ない林業・木材産業の現状や北海道の実情をわかりやすくご紹介します。

林業・木材産業とは

 林業・木材産業は、「植えて育てて、伐って使って、また植える」という森林資源の循環利用サイクルを回すことで、自然環境を保全し、人々の豊かな暮らしと持続可能な社会の実現をめざす産業です。
 ※朱書きは学院の卒業生の主な就業先になります。

循環サイクル

 また、林業は、森林の持つ様々な恩恵が社会全体に及ぼすことや、一人当たりの森林の所有面積が小さいことから、同じ一次産業である農業や漁業と異なり、次のような特色があります。

森林づくり=公共事業

 森林は、国土の保全や水源のかん養、二酸化炭素の吸収による地球温暖化防止など重要な役割を果たしていることから「緑の社会資本」と言われており、森林の整備は公共事業として行われる場合が一般的です。
 森林の整備を公共事業として行う場合は、森林所有者から委託等を受けた森林組合等が実施主体となり、森林所有者からの手数料と都道府県等からの補助金等で林業を行います(森林所有者が直接補助金を受け取ることもできます)。なお、森林の整備に伴って産出された木材を販売した場合、その収益は森林所有者が受け取ります。

林業は会社が担っている

 我が国では、10ヘクタール未満の森林を所有する者(森林所有者)は所有者全体の9割を占めており、所有規模が小さいため林業で生計を立てている者はごくわずかです。
 個々の森林所有者の森林を対象にバラバラに林業を行っても生産性が上がらないことから、現在は、森林組合や民間会社等が複数の森林所有者に働きかけ、個々の森林をとりまとめて作業の効率化を図り、森林経営を行っています。

木材利用を政府が後押し

 木材は再生可能な省エネ素材であり、木材利用を推進することはカーボンニュートラルな社会の実現やSDGsの達成などに資することから、国や都道府県等は木材の利用促進に取り組んでいます。
 令和元(2019)年度から、市町村等に対する森林環境譲与税の譲与が開始されたことから、今後、木材利用の取組や森林整備等が一層進むことが期待されています。

今が稼ぎどき

 北海道には約550万ヘクタールの森林があり、このうち約3割に当たる150万ヘクタールが人工林です。これらの人工林はその7割が植えてから40年以上経っており、ちょうど収穫の時期を迎えています。
 今後は、収穫量が増加しより多くの木材が市場に供給され、収穫後の再植林やその後の保育等の事業量が増えることが見込まれています。こうした状況は他府県も同じで、全国的に国産材への期待が高まっています。

齢級別人工林

 北海道森林づくり基本計画(平成29年3月策定)では、道産材の利用量や森林の整備量等が今後増加することを見込んでいます。

基本計画

しかし、人がいない!

 山にはたわわに実った果実があるのに、それを収穫するための人手が足りません。道内の林業労働者数(青い折れ線グラフ)は、昭和56(1981)年には約1万8千人いましたが、平成29(2017)年には約4千人と5分の1程度に減少しています。これは、長年にわたって安い外国産材を輸入したことで国産材の需要が減り、山林における雇用の場が失われてきたことによります。
 森林は、適期に収穫されなければ木材の品質が悪くなるほか、森林の様々な機能の減退や荒廃を招くおそれがあります。こうした危機感が近年の全国的な林業大学校の設立ラッシュにつながっています。

林業労働者数

北海道の強み

 北海道では、林業・木材産業が地域の基幹産業となっており、本州と比較して様々な優位性があります。

木材生産量と植林面積は日本一

 下のグラフは、木材の生産量と植林の面積が多い都道府県上位3県について示しています(平成30年森林・林業統計要覧)。いずれも北海道が全国第1位で、我が国の林業・木材産業を牽引しています。

木材生産量・植林面積

仕事の流儀 -伐ったら植える-

 伐採面積と植林面積の関係について全国と北海道で比べてみました(森林・林業統計要覧)。全国では伐採面積に対する植林面積は3割程度に止まっていますが、北海道では8割を超えています。
 下のグラフは、伐採と植林が行われた時期が必ずしも同じ年ではありませんが、北海道では伐採後に概ね植林が行われている実態を読み取ることができ、森林資源の循環サイクルが確立されている地域であることがわかります。

再造林率

木材自給率は全国平均の2倍

 国産材の自給率は、木材の輸入自由化により昭和30年代以降減少しましたが、近年の世界的な木材需要の高まりや国内資源の充実により回復傾向にあります。
 北海道では、地域で生産された木材を地域で消費するという考えのもと、産業界が連携して木材利用に取り組んでおり、道産材の自給率は全国平均の概ね2倍となっています。

木材自給率

北海道林業の底力

 森林経営計画は、森林所有者等が森林(民有林)の整備等について自主的に作成する5年間の計画です。森林の整備を公共事業で行う場合は、この計画を作成する必要があり、北海道はその作成率が民有林全体の7割を超え全国一を誇っています。
 また、森林認証制度は、独立した民間の第三者機関が森林経営の持続性や環境保全の観点から、森林又は経営組織などを認証する仕組みです。我が国には約251万ヘクタール(令和3年3月時点)の認証森林がありますが、このうち約6割を北海道の森林が占めています。
 こうした森林経営計画の作成率の高さや森林認証の積極的な取組が豊富な木材生産量や伐採後の着実な植林、木材自給率の高さにつながっています。

森林経営計画作成率と認証森林面積

まとめ

 以上、林業・木材産業の現状や北海道の実情についてご紹介しました。民間の調査会社によると、北海道は住んでみたい都道府県の上位に毎年ランクインしており、その魅力は優れた自然環境、つまり豊かな森林が広がっていることにほかなりません。
 北森カレッジには、東京、大阪、名古屋、大分など全国各地から生徒が集まっており、仕事を辞めて家族連れで北海道に移住し学んでいる方もいます。豊かな自然に恵まれ、食べ物が美味しく、冷涼で過ごしやすい北海道で、林業・木材産業で働きたい若者を心からお待ちしております。

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