帯広市稲田・川西土地区画整理事業に係る知事意見


 方法書に係る知事意見 (平成12年10月27日)

 

1 環境影響評価項目の項目について

 機関庫の川は清涼で自然河岸を有するなど当該地域の河川生態系を特徴づける河川と考えられることから、工事中の雨水の排出先が機関庫の川となる場合には、河畔の植生や魚類及び底生生物について予測・評価を行うこと。

 

2 調査、予測及び評価の手法について

(1) 小型哺乳類及び昆虫類の調査地点について、地域の環境特性、移動経路等を考慮し、専門家の助言指導を得て適切に設定すること。

(2) 鳥類のラインセンサス調査について、地域の環境特性に応じた鳥類相を的確に把握するため、良好な自然環境を有する機関庫の川河畔などにもルートを設定するほか、要所で定点調査を行うこと。特に、調査の結果、猛禽類の繁殖行動が確認された場合には、猛禽類に詳しい専門家の助言指導を得て、調査範囲を拡大するなど適切に調査を実施すること。

(3) 動物及び植物について、学術上又は希少性のある重要な種の生息・生育が確認された場合には、専門家の助言指導を得て、動物の移動経路や植物の生育環境の連続性などを考慮し、調査範囲を適宜拡大すること。

(4) 動物及び生態系について、事業区域内の緑地の配置を踏まえ、動物の移動経路としての役割を果たすと考えられる緑地の連続性を考慮し、適切に予測・評価すること。

 

3 配慮事項について

 方法書において、「事業区域周辺の良好な自然環境にも配慮した道路配置や幅員構成について検討する。」とあることから、道路の配置等を定めるに当たっては、事業区域に隣接する機関庫の川河畔における動物、植物及び生態系への配慮について慎重に検討し、その経過を準備書において明らかにすること。


 準備書に係る知事意見 (平成14年12月26日)

 

1 全般的事項

(1) 評価書の作成に当たっては、準備書に一部説明が十分とはいえない記載や適切とはいえない記載があるため、記載内容の追加や修正を適切に行うこと。

(2) 工事中及び供用(部分供用を含む。)後においては、環境保全措置を的確に講じることはもとより、必要に応じて専門家の指導・助言を得て、それぞれの時点における最新の知見や技術・工法等を積極的に採用するなどして、環境保全に万全を期すこと。

 

2 個別的事項

(1)  大気環境

   工事の実施に当たっては、保全対象である既存の学校や既存住宅地が事業区域に囲まれており、工事期間が長期にわたることから、工区ごとに適切な工事計画を策定した上で粉じん等に対する環境保全措置を講じるとともに、特に造成工事で一時的に発生した残土についてはシートで覆う等の措置を講じるほか、緑道や緑地等については在来の種を中心とした植物の構成に配慮しながら早期に緑化すること。

   建設機械の稼働に関する騒音・振動の予測については、各建設機械が単独で稼働する場合の予測値のみが示されているが、建設機械が複数で稼働する場合が考えられることから、作業単位を考慮した建設機械の組み合わせを想定し、準備書記載の予測フローに従い予測・評価を行い、その結果を踏まえ、低騒音・低振動型機械の積極的な導入を図るなど適切な環境保全措置を講じること。

   供用後の道路交通騒音について、特に静穏な環境が求められる既存の学校や既存住宅地が事業区域に囲まれ、整備される予定の公園東通等の幹線街路に面することとなるため、自動車交通量増加等を考慮した道路交通騒音の影響について評価書に記載すること。

 

(2)  水環境

   工事中の事業区域から排出される雨水については、公共下水道等を経て、事業区域下流の機関庫の川に排出されることから、その経路を明らかにし、機関庫の川への流入地点における水質(水の濁り)に関する予測・評価を行い、評価書に記載すること。また、工事に伴い発生する濁水の処理に当たっては、設置を予定している仮設沈砂池の容量を明らかにし、堆積した土砂の除去等適切な維持管理を行うこと。さらに、仮設沈砂池を経て排出される処理水については、河川への影響の一層の低減を図る観点から、適切な水質目標値を設定し、十分な監視を行うなど機関庫の川の水質保全に万全を期すこと。

   事業区域内に設置予定の調整池に関し、水量の確保方法などを明らかにするとともに、維持管理の方法について評価書に記載すること。

   事業の実施後、新たな舗装道路などの出現による雨水の流出率等の変化に伴い、事業区域内の雨水の地下浸透量が減少し、土壌の水分含有量が変化する可能性も考えられることから、事業区域内の植生を保全する観点からも雨水の地下への還元方策について検討すること。

   準備書では、下水道管渠の埋設深等造成工事における切土深さを恒常的な地下水位より浅くすることにより地下水に及ぼす影響を回避させるとしているが、恒常的な地下水位が地盤面からおよそGL-4m~-5mの範囲にあるとした理由について、地下水調査に関する関連データを補完することなどにより明らかにし、評価書に記載すること。

   地下水の水質の現地調査結果について、地下水の採水方法(採水深さ等の諸元を含む。)を具体的に評価書に記載すること。また、機関庫の川の河川水と地下水との関係について、準備書では、難透水層の存在や河川水と地下水の水質の違いにより説明しているが、その内容が必ずしも分りやすいものとはなっていないことから記載内容の追加や修正を適切に行うこと。

 

(3)  自然環境(植物・動物・生態系)

   公園、緑地、緑道等から成る事業区域内における緑のネットワークについて、樹種の構成や植栽密度等の植栽計画を含めた整備の手順や維持管理の方法を明らかにし、評価書に記載すること。

   哺乳類及び昆虫類の調査について、調査地点数が少なく、特に将来宅地化される農地については、耕作放棄地しか設定されていない。農耕地は、営農活動を行っている実態にあるが、農耕地における動物の生息状況をさらに把握する必要があると考えられることから、農作物の生育状況を考慮して工事の実施前に哺乳類及び昆虫類の調査を行うこと。

   生態系の予測・評価に当たっては、事業区域の大部分が農耕地であり、準備書では農耕地を草原環境として位置付けていることから、草原性鳥類を典型性の注目種として抽出し、予測・評価すること。

   準備書では、生態系の環境類型区分について、樹林環境及び草原環境に分け、さらにそれぞれを陸域、水域、エコトーンに細分し、主として個々の環境類型区分内に生息・生育する動植物の予測・評価を行っているが、これらの環境類型区分の動植物間には、時期により強い食物連鎖の関係がある。このことから各環境類型区分間の食物連鎖の関係も含めた生態系の予測・評価を行い、「食物連鎖の概念図」を修正するとともに、予測・評価の結果を評価書に記載すること。

 

(4)  景観

 景観について、準備書では、供用後に新たな宅地が出現することにより景観に変化が生じるとしているが、この地域の自然豊かな田園景観にふさわしい住宅地景観の在り方について記載するとともに、さらにそれを踏まえ、供用後の景観のフォトモンタージュについて検討すること。

 

(5)  人と自然との触れ合いの活動の場

 人と自然との触れ合いの活動の場の一つに機関庫の川と無名川の河畔を選定し、供用後の予測・評価を行っているが、工事期間が長期にわたることから、特に機関庫の川河畔については地域住民に広く利用されている実態を踏まえ、人と自然との触れ合いの活動の場としての機関庫の川河畔の利用に及ぼす工事の影響について予測・評価を行い、必要に応じて環境保全措置を講じること。

 

(6)  廃棄物等

   建設発生土に関して建設工事に伴い一時的に発生する残土は、盛土材として事業区域内で全て転用することとしているが、保管場所や保管・移動方法を具体的に評価書に記載すること。

   廃棄物に関し、準備書では、造成工事に伴いコンクリート塊及びアスファルト・コンクリート塊が発生することが考えられると記載されているが、コンクリート塊については予測・評価されていないことから、発生量を予測するとともに、事業区域内から発生するコンクリート塊及びアスファルト・コンクリート塊の廃棄物については、できるかぎり発生抑制や再利用に努めること。

 

(7)  事後調査

 準備書では、自然環境に係る事後調査について、「予測の不確実性の程度」・「環境保全措置の効果の程度」を勘案して行うこととしているが、当該事業の工事期間が平成16年度から平成23年度までの8年間と長期にわたることから、食物連鎖や種の構成に着目して、調査期間や調査頻度など調査方法を検討し、評価書に記載すること。

ア 緑のネットワーク

 緑のネットワークが動物の移動経路等としての役割を果たすとしていることから、緑のネットワークの整備状況に応じて動物の移動に関する事後調査を行い、必要に応じて緑地の連続性や動物の移動経路の確保について具体的な方策を講じること。また、事業区域内の孤立林、屋敷林は街区公園と緑地に組み入れ、それが不可能なものについては、新設の緑道などへ現樹木の移植を行うとしているが、移植後の活着状況等を把握するために事後調査を行い、必要に応じて適切な措置を講じること。

イ 植物

 植物の事後調査に関し、重要な種の生育調査を供用後の平成25年に行うとしているが、工事期間が長期にわたることから、調査時期については平成25年だけでなく、工事着手後の適切な時期にも実施すること。

ウ 動物

(ア)  オオタカ等希少猛禽類について、工事期間が長期にわたることから、環境保全対策の効果等を検証するため、調査方法や調査期間を検討し、工事中から供用後に至る適切な時期に事後調査を実施すること。

(イ)  動物(昆虫類)の事後調査に関し、重要な種の生育調査を供用後の平成25年に行うとしているが、工事期間が長期にわたることから、調査時期については平成25年だけでなく、工事着手後の適切な時期にも実施すること。

エ 生態系

 事業区域周辺の機関庫の川に関し、河川生態系を特徴づける水生植物のバイカモについて、部分供用後及び供用後に事後調査を行うこととしているが、工事期間が長期にわたることから、調査頻度について検討すること。また、河川環境の変化の状況を的確に把握するためには、水生植物のほかに水生昆虫なども併せて調査することが必要と考えられることから、当該河川で生息が確認されているヒゲナガカワトビケラやオオクママダラカゲロウ等の水生昆虫についても調査対象として選定すること。

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