(仮称)浜中風力発電事業環境影響評価方法書に係る知事意見

○環境影響評価方法書に係る知事意見 (平成25年8月30日)

 

1 総括的事項
 
(1)本事業の事業用地の選定に当たっては3箇所の候補地を検討し、環境団体へのヒアリング等から主に鳥類に対する影響について配慮し、希少猛禽類への影響が軽減されるとの判断から最終的に浜中町内の当該事業用地を選定したとしているが、その他の候補地の検討内容及び当区域を最適とした理由について具体的かつ詳細に記載すること。
 
(2)風力発電設備、変電施設、送電線の埋設、現場事務所、工事に伴い設置される作業ヤード、工事用道路、管理用道路、土捨場等の設置に伴う土地の改変箇所(樹木の伐採のみを行う箇所も含む。以下同じ。)や面積を具体的に示すとともに、工事の時期、期間及び工程、建設工事における使用資機材及び作業車両の種類、規格、数量、通行経路並びに施設等の構造、仕様について準備書に詳細に記載し、これらのうち環境影響要因となるものについて適切に評価すること。
 
(3)準備書段階において設定する風力発電設備の設置箇所、設置基数について、環境影響ができる限り回避、低減されているかどうかの観点から、その設定理由及び経緯を明らかにするとともに、これらについて準備書作成以後変更が想定される場合には、想定される変更の内容及びそれに伴う調査地点の再検討の方針について記載すること。
 
(4)既に稼働している他の風力発電所における稼働後の環境影響や対応策などに関する情報を可能な限り収集し、それらを予測及び評価に活用するよう努めること。
 
(5)専門的な表現等については、一般にも分かりやすく記載するよう努めるとともに、図表については見やすいものとすること。
 
2 個別的事項
 
(1)大気環境
 
 風力発電設備の騒音及び超低周波音の調査時期、期間及び時間帯については、風況の季節的変化を踏まえ、適切に設定すること。
 
 暗騒音の測定については、風の影響を可能な限り低減するよう、マイクロフォンを地表面に設置し実施すること。
 
 「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書」(環境省 平成23年6月)の事例では住宅等が風車から1キロメートル離れているところでも騒音苦情が生じていることを踏まえ、風力発電設備の設置箇所と住宅等との離隔距離の設定に係る考え方につ いて準備書に記載すること。
 
 騒音に含まれる低周波音(20~100ヘルツ。)については、1/3オクターブバンド音圧レベルで測定し、予測及び評価を行うこと。
 
 工事車両による振動の影響を適切に評価するため、「最大振動レベル」を指標として追加すること。
 
(2)水環境
 
 準備書では、工事用道路や作業ヤードの造成区域、面積及び濁水の発生量等の詳細を示し、これに対する環境保全措置について検討する必要があるため、調査、予測及び評価に当たり、対象事業実施区域内の小河川も含め、適切に調査、予測地点及び調査時期、調査方法を選定すること。なお、風力発電設備設置に相当量のコンクリートが使用される予定であることから、河川水質についてはpHを調査、予測及び評価の対象に含めるとともに、河川に生息する魚類等の水生生物についても同様とすること。
 
 水の濁りに関する調査の時期及び期間については、原則1年間、各季節ごとに行うなど、四季の変動が把握できるよう設定すること。また、降雨時における濁水の状況調査については、降雨開始から終了まで連続的に調査を行うなど、適切に状況を把握できる手法を選定すること。
 
 工事の実施に伴い発生する濁水に係る対策について、沈砂地等を設置する場合は、当該施設の構造や処理能力等を具体的に示した上で、予測及び評価を行うこと。
 
 工事中及び施設稼働後の生活排水の処理計画を準備書に記載すること。
 
(3)動物
 
 動植物の生息又は生育、植生及び生態系の状況の調査に当たっては、地域の情報を丁寧に収集するとともに、専門家等にヒアリングするなどして、できるだけ現状に近い状況を把握すること。
 
 動植物及び生態系に係る環境影響の予測に当たっては、土地の改変箇所と土地利用、現存植 生図、調査により把握した動植物の生息等の状況を重ね合わせ、改変による影響について、可能な限り定量的に示すこと。
 
 「霧多布湿原生きものリスト2004」(特定非営利活動法人霧多布湿原トラスト 平成16年4月)によると浜中町内においてシマフクロウの生息が確認されていることから、対象事業実施区域及びその周辺での生息の可能性について検討し、生息の可能性がある場合には調査、予測及び評価を行うこと。なお、シマフクロウが調査対象となった場合、調査方法の選定や準備書への記載に当たってはその生息環境保全のため、予め専門家や関係機関等と協議すること。
 
 希少猛禽類の生息が多く確認される本地域の特性を踏まえ、建設機械の稼働、工事用資材等の搬出入など、工事中の騒音が動物の生息環境に与える影響について評価項目に選定すること。
 
 鳥類等の風車への衝突事故については、「鳥類等に関する風力発電施設立地適正化のための手引き」(環境省 平成23年1月)等を参考に、可能な限り最新の知見を踏まえて、適切に調査、予測及び評価を行うこと。
 
 鳥類定点観察調査地点については、風力発電設備や管理用道路の設置等による土地の改変の影響及び工事中の建設機械の稼働、工事用資材等の搬出入の影響が評価できるよう、適切な場所を設定すること。
 
 猛禽類の調査に当たっては、「猛禽類保護の進め方(改訂版)」(環境省 平成24年12月)を参考に年間を通じて実施するとともに、希少猛禽類の営巣が確認された場合には、調査期間を2営巣期を含む1.5年以上に設定するとともに、営巣期における行動圏解析等を綿密に行うこと。
 
 夜行性飛翔動物の調査は、渡り鳥のほか、フクロウ類、コウモリ類等も対象とし、専門家等の助言のもとに、より捕捉性の高い手法を選定すること。特に、コウモリ類の調査は、周辺のコロニー分布情報を集めるとともに生息状況を的確に把握できる調査頻度等を設定すること。
 
(4)植物
 
 植物の調査については、雪解け後の季節の変化が早い北海道の地域特性を十分考慮し、適切な時期に実施すること。
 
 作業ヤードや工事用道路及び管理用道路などの土地の改変箇所に侵略的な外来種が侵入し、周囲の生態系に悪影響を及ぼすおそれがあることから、外来種の生育分布についても把握し、そのうち、分布が拡大し周囲の生態系に悪影響を与えるおそれある種について、予測及び評価を行うこと。
 
(5)生態系
 
 地域特性から、タンチョウやオオワシ、オジロワシ等の希少猛禽類を生態系の上位種として位置付け、調査、予測及び評価を行うこと。
 
(6)景観
 
 浜中町はラムサール条約登録湿地の霧多布湿原をはじめとする豊かな自然環境資源に恵まれた地域であり、これらを観光資源とした景観を楽しむエコツアー等が実施されている。また、地元のNPO法人により霧多布湿原の保全を目的とするナショナルトラスト運動が展開されており、浜中町の「第5期浜中町新しいまちづくり総合計画」(平成22年3月)でも、自然環境の保全と景観との調和を図りながら各種産業を振興することとしている。このような地域状況を踏まえ、景観の調査、予測及び評価に当たっては「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」(環境省 平成25年3月)などを参考にし、調査地点の選定に当たっては近景、中景、遠景の別に適切な地点を選び、また、地元自治体等の意見に配慮し、自然景観の保全について十分検討すること。
 
 景観の調査地点については住民意見にもあるように「北太平洋シーサイドライン」を加え、調査、予測及び評価を行うこと。
 
(7)廃棄物等について
 
 建設工事及び施設の稼働に伴い発生する廃棄物や残土等については、発生工程、保管及び処理方法等を準備書に詳細に記載すること。

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