(仮称)八の沢風力発電事業に係る環境影響評価方法書に係る知事意見

○環境影響評価方法書に係る知事意見 (平成27年4月3日)

1 総括的事項

(1)本方法書は、計画段階環境配慮書に対する知事意見において事業の位置及び規模、風力発電設備の配置及び構造の変更を含む事業計画のさらなる検討を求めたにもかかわらず、複数案の絞り込みなどの検討の内容及びその経緯が示されていない。       
事業者は、今後、風力発電設備、変電施設、送電線、現場事務所、工事用道路、管理用道路、作業ヤード、土捨場等の設置等、事業の実施に伴う土地の改変箇所等の決定その他の事業計画の検討に当たっては、2の個別的事項の内容を十分に踏まえ、適切に調査、予測及び評価を行い、その結果に基づき事業の位置及び規模、風力発電設備の配置及び構造を検討すること。また、事業の実施による環境影響を最大限、回避又は低減するよう環境保全措置の検討を行い、その検討の経緯を含めて具体的に準備書に記載すること。

(2)本方法書は、公道からの接続道路など事業の実施に不可欠な土地の区域の一部が対象事業実施区域に包含されていないことに加え、調査、予測及び評価の項目及び手法の選定等に係る具体的な記述がないものが多く見られるなど、今後実施する環境影響評価の方法等を記載すべき図書として不十分であり、一般にも分かりにくいものとなっている。
事業者は、今後準備書の作成に当たっては、各環境影響評価項目について実施した調査の詳細な内容、予測及び評価の手法等に係る考え方、根拠及びその結果等の必要な情報を遺漏なく具体的に、かつ一般にも分かりやすく記載すること。なお、専門的な表現等については、解説等を付すとともに、図表については見やすいものとすること。

2 個別的事項

(1)大気質
建設機械の稼働による窒素酸化物の予測及び評価について、建設機械の稼働による粉じんと同様の地点を追加すること。

(2)騒音及び超低周波音
 建設機械の稼働による騒音の調査、予測及び評価について、施設の稼働による騒音と同様の地点を追加すること。

イ 施設の稼働による騒音及び超低周波音の調査、予測及び評価について、建設機械の稼働による予測地点と同様の近隣住居の地点を追加すること。

ウ 周波数200ヘルツ以下の帯域の現況騒音の測定については、風の影響を可能な限り受けないよう風の強い日を避け、風の影響を受けているデータを除外する等の措置を講じること。

エ 風力発電設備と住居等の位置と苦情の発生事例との関係を踏まえ、風力発電設備の配置計画の検討過程を明らかにすること。

オ 施設の稼働による騒音及び超低周波音の調査、予測及び評価に関し、周波数200ヘルツ以下の帯域については、3分の1オクターブバンド中心周波数の音圧レベルで調査、予測及び評価を行うこと。

カ 対象事業実施区域及びその周辺は元来静穏な地域であることを踏まえ、施設の稼働による騒音及び超低周波音の評価に当たっては、最新の知見を用いるとともに、現況からの影響の増加分を可能な限り小さくするため、風力発電設備の配置及び構造等の変更を含めて、十分に回避、低減されているかの観点から評価すること。なお、周波数200ヘルツ以下の帯域については、低周波音に対する人の感覚のレベルとの比較対照により評価し、影響が生じる可能性がある場合には十分な環境保全措置を講じること。また、騒音及び超低周波音による心身への影響については不確実性があることから、稼働開始後に影響が確認された場合の対策について検討すること。

(3)水環境
 工事の実施による水の濁りについては、工事箇所からの影響を受けやすい知津狩川支流の合流点等や五の沢貯水池の流入部周辺を調査、予測及び評価の地点として追加すること。

 工事の実施により発生するおそれのある濁水に係る環境保全措置については、近年増加している局所集中的な降雨の傾向を十分に踏まえたものにするとともに、沈砂地等の施設の構造や処理能力等から理論計算等が可能なものは定量的に予測及び評価を行うこと。

(4)地形、地質
北海道水資源の保全に関する条例に基づき指定された五の沢貯水池地区水資源保全地域においては、土地改変及び樹林の伐採等を極力避けること。やむを得ずこれを行う場合には、当該保全区域における土地改変に伴う地形や土地被覆の変化による貯水池への流入水量を定量的に予測するとともに、利水状況等について貯水池の管理者等から聴取し、利水への影響がないことを明らかにすること。

(5)風車の影
施設の稼働による風車の影(シャドーフリッカー)については、影響が及ぶ時間の長短に関わらず人によって気になることがあるため、風力発電設備の配置及び構造等を見直した上で、環境保全措置を検討し、可能な限り影響の回避、低減を図ること。

(6)動物
 動物相の調査については、土地改変を予定する場所を網羅するよう調査ルートを設定するとともに、谷状の地形についても調査ルートに含めること。特に水流が認められるなど湿潤な場所については、小型の動物が好んで利用し、両生類の繁殖の場ともなることから、可能な限り上流域まで調査すること。

 ほ乳類の捕獲調査については、土地改変及び樹木の伐採等による影響を適切に予測するため、風力発電設備や道路の設置場所等の改変予定箇所など、地形や植生その他の生息基盤となる環境の特性に応じて適切な場所を選定し、調査地点に追加すること。
また、コウモリ類の捕獲調査について、科学的により正確な状況把握を行うため、事業実施区域内の複数の地点を選定し季節ごとに行うこと。

 鳥類に係る現地調査については、専門家等からの意見聴取において、対象事業実施区域及びその周辺で天然記念物であるクマゲラが多く生息することが指摘されていることから、同種の営巣・繁殖・採餌等の生息環境に対する影響を把握するため、積雪期に営巣木や採餌木等を調査・特定し、その後の利用状況を追跡調査するなどの適切な調査手法を検討すること。

 昆虫類のトラップ調査については、土地改変及び樹木の伐採等による影響を適切に予測するため、風力発電設備や道路の設置場所等の改変等予定箇所など、地形や植生その他の生息基盤となる環境の特性に応じて適切な場所を選定し、調査地点に追加すること。

 既存資料調査及び専門家からの意見聴取において、対象事業実施区域及びその周辺では、希少猛禽類のオジロワシ、オオワシの飛翔が確認されているほか、クマタカの繁殖の可能性が指摘され、希少鳥類であるコハクチョウやマガンの渡りが確認されている。また、対象事業実施区域内では、オオタカ、ハイタカ、チュウヒ等の採餌活動や繁殖の可能性が指摘されていることから、鳥類等の風力発電設備への衝突事故を回避するとともに、これらの種の生息環境に対する影響を把握するため、可能な限り最新の知見を収集し、専門家等から助言を得ながら、適切に調査、予測及び評価を行うこと。また、衝突率の予測には大きな不確実性を伴うことから、適切な方法、頻度及び調査期間により事後調査を実施すること。

 希少猛禽類の調査にあたっては、「猛禽類保護の進め方(改訂版)(環境省 平成24年12月)」を参考に年間を通じて実施し、営巣が確認された場合には、当該営巣について調査期間を2営巣期を含む1.5年以上に設定するとともに、特に営巣期における行動圏解析等を綿密に行うこと。

 希少猛禽類及び渡り鳥の調査については、専門家等の助言を得た上で、適切な時期に対象事業実施区域及びその周辺の希少猛禽類等の環境利用及び通過の状況を視認するのに必要な範囲内で適切かつ十分な地点数を選定して行うこと。なお、渡り鳥の調査の回数は、春、秋の渡りそれぞれ連続する3日間を1回として、3回以上を基本として行うこと。

(7)植物
ア 植物相の調査については、土地改変を予定する場所を網羅するよう調査ルートを設定すること。

イ 工事の実施に伴う土地改変及び樹木の伐採については、その範囲を必要最小限とすること。特に、自然度の高い植生の区域及び大径木の生育域を可能な限り回避すること。

ウ 工事の実施による土地改変に伴う表土の移動や、改変箇所の裸地化等により侵略的な外来種の生育域が拡大し、周囲の植生等に影響を及ぼすおそれがあることから、土地改変を予定する区域及びその周囲における侵略的な外来種の生育状況を把握し、工事の実施によりその分布が拡大することのないよう施工方法を検討すること。

(8)生態系
 生態系の調査、予測及び評価に当たっては、集水域などの地形単位や植生、土地利用等のまとまりを考慮して調査範囲を設定し、基盤環境と生物群集の関係を把握するとともに、事業による環境変化が注目種・群集へ及ぼす影響を詳細に調査、予測することで、可能な限り科学的、定量的に評価すること。

 注目種・群集の選定については、風力発電の事業特性による環境の変化により生息・生育及び繁殖等への影響を受けやすい種・群集であって、対象事業実施区域及びその周辺地域の種の多様性を維持する上で重要と考えられる地形、植生等に依存しているものを選定すること。

(9)景観
景観については、四季を通し、風力発電設備が視認しやすい天候時のフォトモンタージュを作成し、客観的かつ科学的な予測、評価を行うこと。また、眺望景観に対する支障の程度を適切に評価するため、フォトモンタージュは人の視野特性に近い水平画角60度程度で作成し、眺望範囲がこれを超える場合は、必要に応じパノラマ画像を用いること。

(10)人と自然との触れ合い活動の場
対象事業実施区域の東側に位置し、北海道自然環境保全指針で身近な自然地域に選定されている八の沢自然林内及びその自然観察路として利用されている五の沢林道の沿道周辺には、かつて石油採掘で栄えていた石狩油田八の沢鉱業所及び周辺集落の跡地等が存在し、これらを環境学習や歴史探勝の対象として自然観察会等が行われるなど、市民等が身近に自然と触れ合える貴重な場として親しまれてきた経緯がある。このことを踏まえ、当該触れ合い活動の場や利用の状況等について文献調査や関係者へのヒアリング等により詳細に調査し、施設の稼働時も含めて触れ合い活動等に及ぼす影響について予測及び評価を行うこと。

(11)廃棄物、残土等
本事業計画では、風力発電設備の設置基数や地形的特徴から他の同種の事業と比較して、残土の発生量が約69,000又は約86,000立方メートルと大量であり、対象事業実施区域内であるとしても残土処分することによる環境影響が大きいものとなるおそれがあることから、「残土」を環境影響評価の項目に選定し、残土の発生量及びその処分による影響を可能な限り低減するよう工事計画等を再検討の上、適切に調査、予測及び評価を行うこと。

 

カテゴリー

環境保全局環境政策課のカテゴリ

cc-by

page top