道北日本海側エリアにおける風力発電事業(仮称)計画段階環境配慮書に係る知事意見

○計画段階環境配慮書に係る知事意見 (平成27年9月29日) 

1 総括的事項
(1)
事業実施想定区域は、道北日本海側の7町村(天塩町、遠別町、初山別村、羽幌町、苫前町、小平町及び増毛町)にまたがる約84,700haにも及ぶ広大な面積であり、区域及びその周辺には、自然林や自然草原をはじめとする自然度の高い植生、鳥獣保護区や保安林などの重要な自然環境のまとまりの場や北海道水資源の保全に関する条例に基づく水資源保全地域が存在するとともに、利尻礼文サロベツ国立公園や暑寒別天売焼尻国定公園が存在している。
 また、オジロワシ、ハイタカ、オオタカなどの希少猛禽類の生息が確認されており、海岸沿いは、希少猛禽類をはじめとする多くの鳥類の渡りのルートとなっているほか、他社の複数の風力発電所が存在するとともに、新たな設置計画も進められている。
 さらに、区域の周辺には、多数の住居や学校等が存在している。 
 
(2)本配慮書では、広大な事業実施想定区域において、第一種事業を概ね10事業程度予定しており、最大出力60万kW、約200基の風力発電設備を設置する計画であるが、各々の事業区域が示されていないため、事業毎の環境要素に係る配慮事項の調査、予測及び評価の結果が明らかにされていない。
  また、住居や保安林区域が正確に把握されていないこと、風力発電事業の実施が想定されない場所が区域内に含まれていること、工事の実施に係る諸元や方針が示されていないことなど、計画熟度が低いことを踏まえても、環境保全のために配慮すべき事項の調査や検討が不十分なものとなっている。
 
(3)今後の事業実施想定区域からの絞り込みによる対象事業実施区域の設定、事業の規模、風力発電設備の配置及び構造・機種の検討に当たっては、次の措置を適切に講ずるとともに、2の個別的事項の内容を十分に踏まえること。
  なお、検討の結果、重大な環境影響の回避又は低減ができることを裏付ける科学的根拠を示すことができない場合は、対象事業実施区域の更なる絞り込みや事業の規模の縮小など、事業計画の見直しを行うこと。

 対象事業実施区域は、第一種事業毎に事業を実施する区域を適切に設定し、区域毎に、事業の実施に伴い影響を受ける各環境要素に係る配慮事項について、適切な方法により調査、予測及び評価すること。
 鳥獣保護区での事業実施は、野生鳥獣の保護・繁殖の基盤となる生態系に影響を及ぼすおそれがあるため、特別保護地区以外の鳥獣保護区についても対象事業実施区域から除外すること。
 風力発電事業の実施が想定されないスキー場、風力発電所、公園などの場所や北海道水資源の保全に関する条例に基づく水資源保全地域は、対象事業実施区域から除外すること。
 自然林等の重要な自然環境のまとまりの場は、対象事業実施区域から原則除外すること。
 希少鳥類の渡りや移動及び営巣に重大な影響を及ぼさないように配慮すること。
    特に、過去のバードストライクの発生情報からバードストライクが発生しやすいと思われる場所においては、風力発電設備の設置を極力避けること。また、オジロワシ及びその他の希少鳥類等の営巣地周辺は、対象事業実施区域から除外すること。
 利尻礼文サロベツ国立公園や暑寒別天売焼尻国定公園の景観資源の眺望に配慮すること。
 事業実施想定区域に含まれている富士見ヶ丘公園、みさき台公園、金比羅キャンプ場及び朝日公園花しょうぶ園については、直接改変による影響が生じるおそれがあるため、対象事業実施区域から除外すること。
 調査及び予測については、専門家等からの助言を得ながら科学的・客観的な方法により行い、対象事業実施区域毎の各環境要素に係る重大な環境影響の程度を評価するとともに、その経緯等についても、方法書に記載すること。
 
(4)事業実施想定区域からの絞り込みの結果、既設や計画中の風力発電所との累積的な影響が生じるおそれがある場合は、それらの区域及びその周辺に関連する環境要素に係る累積的な影響についても調査、予測及び評価すること。
 
 
2 個別的事項
(1)騒音及び超低周波音、風車の影

  事業実施想定区域の周辺には、多数の住居や学校等が存在し、特に海岸沿いは各町村の市街地に近接しており、これらに対する騒音及び超低周波音や風車の影による健康影響を含む重大な環境影響が生じるおそれがあるため、住居等と風力発電設備は十分な離隔距離を確保するとともに、1/3オクターブバンド音圧レベル(200 Hz以下)の情報と「心身に係る苦情に関する参照値」を含む様々な知見との比較や日影図の情報等に基づいた適切な方法により調査及び予測を行い、健康影響を含む重大な環境影響の有無を評価すること。
 
(2)水環境
  事業実施想定区域内には、遠別町、初山別村、羽幌町、苫前町、小平町及び増毛町の水道水源となっている河川の集水域が含まれるとともに、さけます増殖河川や保護水面となっている天塩川、遠別川、風連別川、羽幌川、小平蘂川、信砂川及び暑寒別川の集水域も含まれている。
  このため、工事に伴う土地改変による濁水や土砂の流出などによる影響を及ぼすおそれがあることから、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 
 
(3)動物
  事業実施想定区域及びその周辺では、オジロワシの営巣やクマタカ等の生息が確認されているほか、オオヒシクイやマガンなどのガンカモ類の渡りのルートになっており、さらに、既設の風力発電所ではオジロワシのバードストライクがこれまで多数発生していることから、事業の実施に伴い、これらの希少猛禽類等の生息環境に対して著しい影響を及ぼすおそれが極めて高い。
  このため、風力発電設備の配置については、専門家等からの助言を得ながら、バードストライクが発生しやすい海岸から適切な離隔距離を確保するとともに、営巣地や渡りのルートの周辺を避けること。また、渡りを含む移動経路や生息状況等に関する詳細な調査及び予測を行い、バードストライクや営巣の阻害などの重大な環境影響の有無を評価すること。 
  さらに、タンチョウについては、環境省の「タンチョウ生息地分散行動計画」の繁殖適地として、ペンケ沼・パンケ沼の周辺湿地を含む下サロベツ原野、ヌポロマポロ川と問寒別川合流点付近の湿地及び天塩川下流域湿地が選定されていることから、最新の生息情報を入手するとともに、専門家等からの助言を得ながら、生息が可能な地域への影響について適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
  また、コウモリ類をはじめとする重要種の生息等への影響については、専門家等からの助言を得ながら、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 
 
(4)植物、生態系
  事業実施想定区域内には、トドマツ-ミズナラ群落、エゾイタヤ-ミズナラ群落等の自然林を含む自然度の高い植生の区域や保安林等の重要な自然環境のまとまりの場が存在しており、海岸風が卓越する地域では、これらの森林植生が一度失われると、森林回復が大きく遅れ、あるいは回復が困難となることから、風力発電設備や搬入路の設置に伴う土地改変箇所の検討に当たっては、それらの範囲を避けるとともに、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
  また、生態系に関する上位性注目種や典型性注目種等については、地域における生息環境に即した適切な種を選定するとともに、事業の実施による影響について、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
 
(5)景観
  事業実施想定区域に隣接する利尻礼文サロベツ国立公園や暑寒別天売焼尻国定公園には、それらを代表する利尻島や暑寒別岳などの景観資源があり、風力発電設備の配置によりそれらの眺望に重大な影響を及ぼすおそれがあることから、全ての主要な眺望点からの眺望景観及び身近な景観への影響について、適切な方法で調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
  また、天塩町町民スキー場を主要な眺望点に追加するとともに、フォトモンタージュ等は、四季を通じて風力発電設備が視認し易い天候時に、人間の視野特性に近い水平画角60度程度で作成すること。
 
(6)人と自然との触れ合いの活動の場
  事業実施想定区域及びその周辺には、日本海オロロンライン沿いなどに人と自然との触れ合いの活動の場が多数存在しており、事業の実施に伴い、それらの施設等の利用性、快適性などに影響が生じるおそれがあるため、これらについても適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 

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