(仮称)道北中央風力発電事業計画段階環境配慮書に係る知事意見

○計画段階環境配慮書に係る知事意見 (平成26年9月26日)

1 事業計画及び計画段階環境配慮書について
 本配慮書は、10事業程度とする第一種事業ごとの位置その他の諸元を明らかにしていないほか、市街地、鉄道、幹線道路、河川その他の風力発電事業の実施が想定されない区域が事業実施想定区域に広く含まれていることに加え、環境影響評価法の求める環境の保全のために配慮すべき事項の実質的な検討が十分に行われていない結果、本事業計画によって重大な環境影響を生じないと判断するに足る内容を備えておらず、法の趣旨からは、熟度の低い計画段階にあることを考慮してもなお、計画段階の配慮事項を記載した図書として扱うことは困難である。
 事業者は、第一種事業ごとに事業の実施を現実に想定する区域を適切に設定し、工事の実施に伴って影響を受ける環境要素に係る配慮事項の選定についても再検討した上で、適正に調査、予測及び評価を行うとともに、各事業の諸元が一定程度定まった時点で、法の趣旨及び目的に沿って環境配慮の視点から十分検討を行い、改めて配慮書を作成するべきである。

2 検討が不足している内容
(1)騒音及び超低周波音

 事業実施想定区域内及び周囲2kmの範囲内に存在する住居、学校、病院等(以下 「住居等」という。)の分布状況を戸数により把握し、住居等が騒音及び超低周波音の影響を受ける可能性があると予測した上で、まとまって存在する市街地や集落などの住居地域、並びに騒音規制区域の指定を受ける稚内市街地周辺を対象事業実施区域から外すことや、風力発電機の配置計画等の検討の際に、住居等から十分な距離の確保に努めることで、重大な環境影響は低減されるものと評価するとしている。
 しかし、環境配慮の検討結果として、「十分な距離」をどの程度とするかなど配慮の実質的な内容を示していない上、単一で存在する住居等については、事業実施想定区域から外すこととしていない。にもかかわらず、このような評価を行うことは、客観的・科学的な根拠を欠くものである。
 さらに、真に十分な距離を確保するならば、重大な環境影響を回避することは容易であるにもかかわらず、この「回避」の可能性については評価すらしていない。

(2)地形及び地質
 「宗谷丘陵の周氷河性波状地」及び「宗谷丘陵」の全体に対する改変を受ける可能性がある区域の割合は最大で0.6%、「サロベツ湿原」の全体に対する改変を受ける可能性がある区域の割合は最大で0.4%、「天塩川」の全体に対する改変を受ける可能性がある区域の割合は最大で1.0%となる。いずれの重要な地形及び地質においても、今後、事業計画の策定にあたり、改変面積の最小化等の環境保全措置を検討することにより、重大な影響は回避又は低減されるものと評価するとしている。
 しかし、対象となっている重要な地形はそもそも広大な面積を有しており、事業実施想定区域に含まれる面積の割合は一見して小さいように見えるが、直接改変を受ける可能性のある面積が3つの地形全体で約1,100haと広大であることから、環境影響の程度を面積割合のみで評価することは適当ではない。
 また、「サロベツ湿原を対象事業実施区域から外すことを検討する」としながら、「改変面積の最小化に努める」と土地改変の意思を示し、実質的にどのように具体的な配慮をすることとしたのか明らかにしていない。にもかかわらず、このような評価を行うことは、客観的・科学的な根拠を欠くものである。

(3)風車の影
 事業実施想定区域内及び周囲1kmの範囲内に存在する住居、学校、病院等(以下 「住居等」という。)の分布状況を戸数により把握し、住居等が騒音及び超低周波音の影響を受ける可能性があると予測した上で、まとまって存在する市街地や集落などの住居地域を対象事業実施区域から外すことや、風力発電機の配置計画等の検討の際に、住居等から十分な距離の確保に努めることで、重大な環境影響は低減されるものと評価するとしている。
 しかし、環境配慮の検討結果として、「十分な距離」をどの程度とするかなど配慮の実質的な内容を示していない上、単一で存在する住居等については、事業実施想定区域から外すこととしていない。にもかかわらず、このような評価を行うことは、客観的・科学的な根拠を欠くものである。
 さらに、真に十分な距離を確保するならば、重大な環境影響を回避することは容易であるにもかかわらず、この回避の可能性については、評価すらしていない。

(4)動物
 重要な動物について、直接改変及び風力発電機の稼働による影響の可能性が予測されたが、今後の環境影響評価の現地調査において生息状況を把握し、風力発電機の配置計画、土地改変及び樹木伐採の最小限化、濁水対策等の環境保全措置を検討することにより、重大な環境影響は回避又は低減されるものと評価するとしている。
 しかし、環境配慮の検討結果として、風力発電機の配置計画の考え方を示さず、土地改変及び樹木伐採の最小限化、濁水対策等の環境保全措置を具体的にどのようにするかなど配慮の実質的な内容を明らかにしていない。にもかかわらず、このような評価をすることは、客観的・科学的根拠を欠くものである。
 また、声問大沼が事業実施想定区域内に位置し、春と秋の渡りの中継地となっているため事業による影響を受ける可能性があるとしながら、風力発電機の配置計画と渡りのルートとの関連性を示しておらず 、稼働後の重大な環境影響は回避又は低減されるとする理由が見当たらない

(5)植物
 重要な植物及び重要な植物群落(1箇所)について、直接改変による影響の可能性が予測されたが、今後の環境影響評価の現地調査において生育状況を把握し、風力発電機の配置計画、土地改変及び樹木伐採の最小限化等の環境保全措置を検討することにより、重大な環境影響は回避又は低減されるものと評価するとしている。
 しかし、環境配慮の検討結果として、風力発電機の配置計画の考え方を示さず、土地改変及び樹木伐採の最小限化等の環境保全措置を具体的にどのようにするかなど配慮の実質的な内容を明らかにしていない。にもかかわらず、このような評価をすることは客観的・科学的根拠を欠くものである。
 また、上記以外の重要な植物群落については、事業実施想定区域内に分布しないことのみで影響はないと予測しているが、事業実施想定区域には湿原性の重要な植物群落が近接しており、近傍における土地改変や工作物の新設等による生育環境への影響は容易に想定されるところであり、本配慮書の予測自体に重大な誤りがあると考えられる。

(6)生態系
 重要な自然環境のまとまりの場のうち、自然林の亜寒帯・亜高山帯自然植生とブナクラス域自然植生、自然草原の河辺・湿原・湖沼地・砂丘植生、特定植物群落、鳥獣保護区、保安林については、その一部が改変され、影響を受ける可能性が予測されたが、風力発電機の配置計画、土地改変及び樹木伐採の最小限化等の環境保全措置を検討することにより、重大な環境影響は回避又は低減されるものと評価するとしている。
 しかし、事業実施想定区域に自然林が7,309ha、自然草原が2,046ha、特定植物群落が26ha、保安林が3,660ha含まれており、環境配慮の検討結果として、風力発電機の配置計画、土地改変及び樹木伐採の最小限化等の環境保全措置を具体的にどのようにするかなど、配慮の実質的内容を明らかにしていない。にもかかわらず、このような評価をすることは、客観的・科学的根拠を欠くものである。   
 特に、鳥獣保護区については、生態系の保全上極めて重要であり、その設定の趣旨に鑑み、改変等を避ける必要があるにもかかわらず、その検討がなされていない。

(7)景観
 景観資源及び主要な眺望点の改変の程度について、今後、事業計画の検討にあたっては、景観資源についてはその状況を踏まえながら、主要な眺望点については眺望点の状況や利用の状況を踏まえながら、風力発電機の配置等を検討することで、重大な環境影響は回避又は低減されるものと評価するとしている。   
 また、主要な眺望景観の改変については、眺望景観の状況や眺望の方向、眺望点の利用状況等を踏まえながら風力発電機の配置等を検討することで、重大な環境影響は低減されるものと評価している。
 しかし、環境配慮の検討結果として、具体的にどのような考え方で風力発電機の配置等を検討するのかなど、配慮の実質的な内容を明らかにしていない。にもかかわらず、このように評価することは客観的・科学的根拠を欠くものである。
 さらに、主要な眺望景観に関する重大な環境影響の「回避」の可能性については、評価すらしていない。

(8)人と自然との触れ合いの活動の場
 人と自然の触れ合いの活動の場の全部又は一部が改変を受ける可能性が予測されたが、今後、事業計画の検討にあたっては、人と自然との触れ合いの活動の場の状況等を踏まえながら風力発電機の配置等を検討することで、重大な環境影響は回避又は低減されるものと評価するとしている。
 しかし、環境配慮の検討結果として、風力発電機の配置等を具体的にどのようにしていくのかなど、配慮の実質的な内容を明らかにしていない。にもかからず、このように評価することは、客観的・科学的根拠を欠くものである。

カテゴリー

環境保全局環境政策課のカテゴリ

cc-by

page top