北の生活文化(和人の一生<誕生から成人儀礼まで )

 

 

北の生活文化(和人の一生<誕生から成人儀礼まで )


 

 
和人の一生<誕生から成人儀礼まで>
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48. 七五三・平成6年(札幌市) 49. 初誕生と一升餅・昭和54年
  (上:函館市、下:札幌市)
 人は生きる過程でさまざまな儀礼を行う。中でも誕生、結婚、葬送は、人生の重要な節目とされてきた。移住者たちも、苦しい開拓の中で誕生、婚姻を喜び、死を悼(いた)んで葬る儀礼を、地域の相互扶助で行ってきた。

 誕生にかかわる儀礼は、生まれる前に妊婦がする腹帯から始まる。古くは安産を願って夫のヘコオビ(ふんどし)を用いたり、産の軽いクマにあやかる呪術的な言い伝えもあった。後産は、子が丈夫に育つように玄関口に埋めたり、反対に穢(けが)れがほかに及ばないよう、人が踏まない、ヒ(太陽)の当たらない場所に埋める習わしもみられた。出産は、産婆の登場と共にス(巣)の中での座産から仰臥(ぎょうが)形態に変わり、現在では病院での出産が一般化している。

 産育儀礼には、生まれて7日目の名付けと、満一歳の誕生餅の儀礼がよく行われている。「一升餅を背負って歩くとよい」、逆に「早く家を出るので転ばせる」など地域によって言い習わしが異なる。初節句には、里から鯉幟(こいのぼ)りや掛け図が贈られる。母村の習わしに従い、両家の家紋を入れた旗織りを贈る習慣もみられる。成長祝いの七五三は、昭和40年(1965)以降盛んになり、全国よりひと月早い10月に行われる。

 現在は、満20歳になると誰もが成人になるが、戦前は徴兵検査が男子の成人の目安であり、女子は田植えや裁縫の技術が嫁入りの要素となった。
 
和人の一生<婚礼儀礼、葬送儀礼>
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50. 結婚嫁どり・昭和5年(小樽市) 51. 花嫁行列・昭和30年代(札幌市西岡)
 婚礼儀礼は、昭和30年代までは伝統的社会と同様に見合い→酒入れ(結納)→嫁方の立ち振る舞い→嫁迎え・婿入り→花嫁行列→入家→婿方での披露の順で行われた。嫁入り当日は、島田髪に留袖で、嫁方の親類や近所を招いて出立(でだ)ちの披露をした。その席に婿が迎えに来る事を嫁迎え、婿入りと呼ぶ。馬橇(ばそり)で婿方へ向かう途中、写真を撮って婿方へ入家(にゅうか)した。入家時には、裏口から入る、かがり火を焚く、落ち着き餅を食べるなど母村同様の儀礼が細やかに行われた。こうした儀礼は高度経済成長や生活改善を経て、嫁方・婿方が一堂に会して結婚の披露を行う会費制結婚式へと変化し、今ではこの形式が北海道における結婚式の特徴となっている。

 人生を締めくくる葬儀は、枕経(まくらきょう)→湯灌(ゆかん)・納棺→通夜→葬式・告別式→出棺・野辺送り→土葬・火葬→法要の順に行われた。身内はシロ(白)を着て、死者のために枕飯や四花(しか)を供え、荒縄の帯たすきで湯灌をして、身内が縫った経帷子(きょうかたびら)を着せて座棺(立棺)に納棺した。古くは土葬であり、昭和30年代まではオンボヤキ(焼き番)による野焼きの火葬も各地で見られた。こうした一連の儀礼は、すべて地域の人々の手伝いで行われた。昭和40年代からは、通夜・葬儀の前に火葬する地域もみられ、このころから葬儀儀礼に葬儀社のかかわりが大きくなった。
 
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