北の総合診療医 - その先の、地域医療へ(帯広協会1)

帯広協会病院

obihiro1_mainimg.png

2020.03.31 記事

プロフィール
2008年旭川医科大学を卒業
北斗病院で初期臨床研修を修了し、寿都町立寿都診療所、本輪西ファミリークリニック、江別市立病院、国保上川医療センターを経て、帯広協会病院に所属
資格
日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医
同上 北海道ブロック支部代議員
札幌医科大学医学部臨床講師
現職
北海道社会事業協会帯広病院 総合診療科責任医長
医療法人北海道家庭医療学センター理事

帯広市の中心部からほど近い帯広協会病院は、ベッド数300床、消化器内科、循環器内科、泌尿器科、外科、整形外科、脳神経外科、産婦人科など幅広い診療分野で急性期医療を展開しています。さらに地域周産期母子医療センター、スポーツ医学・心臓リハビリセンターを設けるなど専門医療も充実しており、出産から成長、老年期に至るまでさまざまな疾患のスペシャリストを揃えています。2016年4月に総合診療科を開設。北海道家庭医療学センター(草場鉄周理事長)から医師派遣を受け、個人、家族、地域、それぞれのニーズに応じて幅広い診療を提供すると同時に、同センターが進める専門医育成へ研修機能も果たしています。

総合診療科で活躍する堀哲也責任医長と浜名真由美看護副部長、大須田良太医事課長に総合診療科の果たす役割や病院経営への影響などについて話を伺いました。

  • obihiro1_img1.jpg

住民、医療者と接し
地域医療の大変さ、面白さを実感

堀責任医長は、学生時代に穂別町や礼文町の医療現場を見学し、さまざまな年代の地域住民や医療者と接して、地域医療の実状を目の当たりにしました。特に、旭川医科大学2年生の時に、北海道家庭医療学センターが運営する更別村国保診療所を見学したことが、地域医療を目指す決意をした大きなポイントになったそうです。

限られた医療資源、少子高齢化、過疎など、地域が抱える課題が、大学3、4年生くらいから見えるようになって、「地域で医療を行うことの大変さを知ると同時に面白さ、やりがいも感じ、地域の診療所勤務を決めました」。

  • obihiro1_img2.jpg

幅広い知識を生かし救急対応
救急患者さんの受け入れ増加に寄与

出身地である帯広市の北斗病院で初期研修を終え、後期研修は北海道家庭医療学センターで学び、さらにフェローシップとして2年間務めた後、診療所でも1年間実践を積み、帯広協会病院での総合診療科立ち上げで中心的な役割を担いました。家庭医療学センターから帯広協会病院に総合診療科の医師を派遣することは、診療科開設の1年前から話があり、堀責任医長は全国の病院を見学して、臨床だけでなく、教育も含めた総合診療科の在り方を学び、準備を進めました。

総合診療科は、当初の想定を上回る勢いで患者さんの数が増加しているといいます。総合診療科を受診する患者さんの多くは高齢者です。生活習慣病や高血圧、糖尿病のほか、肺炎、尿路感染症が多くみられるそうです。また、日中の救急患者さんの受け入れ対応も行っており、年間の救急患者さんの8割近くを担当しています。「救急では、軽度の交通外傷から、腹痛などの内科的な疾患まで、さまざまな患者さんを診ており、総合診療医としての幅広い知識と対応力が役立っています」。

救急車による搬送台数は年間1,400台ほどだったのが、1,700台にまで増えました。総合診療医が窓口となり、必要に応じて専門科と連携して治療を進めています。入院治療が必要になった場合は、退院調整を総合診療医が行うこともあり、救急医療でも大きな役割を果たしています。

在宅復帰の要・地域包括ケア病棟
院内デイ・口腔ケアで多角的な医療を展開

堀責任医長は、48床ある地域包括ケア病棟の責任者も務めています。年々、患者さんの入院期間が短くなっている中で、回復期や慢性期、在宅療養への円滑な移行に、地域包括ケア病棟の意義は大きくなってきています。限られた入院期間の中で、より効果的に患者さんの回復を図るため、院内デイサービスを取り入れています。週1回、歌やバレー、院外での自然観察などさまざまなレクリエーションを実施。「リハビリで元気がなかった患者さんも、レクリエーションでは明るい表情がみられます」と手ごたえを感じています。さらに、十勝歯科医師会と連携して口腔ケアの充実を図っていく考えで、患者さんを疾患だけでなく、その人の人生や生活面など多角的にみていく視点を生かした取り組みで、地域包括ケア病棟の充実を進めています。

  • obihiro1_img3.jpg

総合診療科は1人では成り立たない
パッケージ化のスタンダードを目指す

総合診療科を開設して、2020年3月で4年が経過しました。毎週病棟でカンファレンスを行うなどで、多職種と気兼ねなくコミュニケーションが取れるようにしてきたことで、院内の連携もスムーズになり、それも影響して、順調に患者さんの数が増えています。また、帯広協会病院での取り組みが医学生からも注目されるようになり、病院見学の数が年々増えているそうです。見学しに来た医学生には、見学だけでなく、診断、治療など医療者としての役割をしっかりと体験できるプログラムとなっています。「見学に来る学生の多くは、地域医療に対して高い意識をもっていることが感じられます。また、こうした学生と接することで、研修医も『後輩に成長した姿をみせたい』と、モチベーションアップにつながっています」。

総合診療医の育成は、総合診療科開設の重要な目的の1つでもあります。総合診療科を開設してから、帯広協会病院が受け入れる初期研修医の枠が4人から6人に増えました。現在、初期研修医は2年次6人、1年次が2人学んでいるほか、専攻医が4人おり、そのうち2人は医大の地域枠の卒業生です。研修医は、週1回、更別村国保診療所でも診療を行っています。「更別村から受け入れた患者さんだと、帯広協会病院での入院治療を担当し、さらに退院後の治療を更別村国保診療所で行うなど、継続した医療を学べるようになっています」。堀責任医長は、同じ総合診療科でも、地方と都市部では求められることに違いがあるといい、そのどちらもしっかりと学ぶことが重要だと指摘します。

「これまで総合診療科を行ってきて、総合診療医をポンと派遣すれば、それでいいわけではないと実感しています。帯広協会病院では、総合診療医の人数、周囲のスタッフの理解と協力、そして他施設との連携がなければ、ここまで来ることができなかった」と堀責任医長はいいます。今後、総合診療医が地域医療を支えていくには、帯広協会病院のような体制をパッケージ化して進めていくことが重要だとも指摘します。

「総合診療の一つスタンダードとして示せるよう、今後も頑張りたい。道内では総合診療医は足りていません。現場も行政も努力し、どんどん学ぶ人数を増やしていければと思います」。

総合診療医を目指す医師へのメッセージ

医師を目指すうえで、さまざまな疾患についての知識や治療技術も大切ですが、まずは患者さんの生活に目を向けることが重要です。欧米では、総合診療を学ぶことは当たり前となっています。患者さんが望む形の日常生活を送っていく中で、医療がどのような役割を果たせるのか、そういった目線で患者さんと接することは、他の専門医を目指す場合でも、将来、必ず役に立ちます。特に地域枠の学生にとって、地方で総合診療を学ぶことは、地域における医療や生活の実状を知るための良い機会になることでしょう。

帯広協会病院のほかの
医療スタッフのインタビューもご覧ください

  • etc_obihiro2.png
  • etc_obihiro3.png
link_btn_obihiro.png link_btn2.png

カテゴリー

page top