森林機能評価基準(北海道)

はじめに

 森林は国土の保全や水源のかん養、生活環境の保全など、さまざまな機能を有しているが、これらの機能の発揮状況について客観的に評価する基準がないことから、森林の整備や保全を行うことの必要性を道民に十分説明できていない状況にある。

 このため、平成14年度に道庁内プロジェクトを設置して、森林の「めざす姿」に対する現在の森林の状況を分かりやすく示すための評価基準(案)を作成し、平成15年度は、道有林を試験地とした実証を経ながら、この評価基準を作成した。

 この基準では、評価する機能により評価結果が点数やランク付けなどで表されているが、結果そのものにこだわるのではなく、その原因(評価の経過)について説明することの方がより大切であり、この評価基準を用いる際に数ある森林の構成要素のうち何に着目し評価を行うかということを十分に理解することが重要である。

 なお、評価基準の作成にあたっては、地域住民等の使用(地域の森林づくりを考える際の検討材料)も考慮し、簡便性(データの入手しやすさ、調査の容易さ)を重視した。

 森林の機能については、まだ限られたことしか分かっていない状況にあることから、新しい知見が得られた場合、必要に応じて積極的に取り入れていきたい。

1 目的

 森林の機能の発揮状況を道民にわかりやすく説明し、道民の森林に対する理解を深め、道民との協働による森林づくり※を進めるため、森林機能評価基準(以下「評価基準」という)を定める。

※「道民との協働による森林づくり」とは、「北海道森林づくり条例」第3条の基本理念の1つである。
第3条 3 森林づくりは、道民、森林所有者、事業者及び道の適切な役割分担による協働により推進されなければならない。

2 基本的な考え方

(1)評価対象とする森林の機能

 「北海道森林づくり基本計画」では、地域の特性に応じた森林づくりを進めるため、(1)国土の保全や水源のかん養、(2)生態系や環境の保全、文化の創造、(3)資源の循環利用、の機能を重視した森林づくりをめざすこととしている。
 評価基準では、森林の多面的機能のうち〔1〕水土保全機能、〔2〕生活環境保全機能、〔3〕生態系保全機能、〔4〕文化創造機能、〔5〕木材生産機能、の5つを評価対象とする。

(2)評価基準の作成にあたっての留意事項

ア 「めざす姿」の設定

 評価対象とする機能の性質に応じ、機能が十分に発揮されている森林の状態を「めざす姿」として設定し、評価結果はめざす姿との比較であらわすこととした。

イ 評価項目の選定

 機能の発揮状況を評価するために必要な評価項目については、当該機能と関連性があり、測定可能なものを科学的知見に基づいて選定した。

ウ 項目毎の評価

 選定した評価項目について、科学的知見に基づいて、点数化・ランク付けを行い、機能の発揮状況を表すこととした。

エ 最終的な評価結果

 各項目間の関わりなどを総合的に判断し、最終的にそれぞれの機能にふさわしい評価手法により点数化・ランク付け・類型化した。

(3)評価結果の関する留意事項

ア 評価結果の独立

 同じ森林を対象として、複数の機能についての評価を行う場合、それぞれの機能の評価結果は独立したものとして取扱う(他の機能の評価結果には、左右されない)。  また、評価結果はそれぞれの評価箇所における「めざす姿」に対する機能の発揮状況であり、他の森林の評価結果との直接的な比較は行わない。

イ 機能の優先順位

 森林は多面的な機能を有しており、評価する人や地域のニーズにより、求められる機能は異なることから、どの機能を優先させて森林整備等を行うのかということについては、地域で検討する必要がある。

3 各機能の評価基準

(1)水土保全機能

ア はじめに

 森林は、良質な水の安定供給や山地災害(地すべりや山崩れなど)の防止などの機能を持っている。 これらの機能について、道民の関心が高まっているが、評価基準が定められておらず、適正に評価されていない状況にある。 このため、森林が土壌の保全・形成、降水の土壌への浸透促進といった役割を通して水土保全機能を発揮している点に着目し、土壌表面を覆う森林の面積割合をもとに、評価基準を作成した。

イ 基本的な考え方

(ア)機能の定義
 この評価では、水土保全機能を、次の4つに分類して定義する。

  1. 渇水・洪水緩和機能(雨や雪を一時保水し、川の流量をならす働き)
  2. 水質保全機能(窒素やリンなどの栄養塩の過剰発生や水温上昇などを抑制する働き)
  3. 土砂流出防止機能(雨水による土壌浸食を抑える働き)
  4. 土砂崩壊防止機能(斜面での崩壊、崩落などを抑える働き)

(イ)めざす姿
 水土保全機能を高度に発揮する森林とは、土壌を保全・形成し、その乾燥を防ぐため、常に地表面を覆っている「安定した壊れにくい森林」であり、次の条件を満たす森林を目標とする。

○降水が直接地表面に当たらないための樹冠層が十分確保されている森林
 樹冠(樹木の枝や葉の集まり)が地表面を適度に覆い、降雨による土壌の流出を抑えたり、直射日光の遮断により土壌の乾燥を防ぐことにより、降水の地下へのしみ込みを促進していること。

○下層植生が確保されている森林
 樹冠からの雨滴による影響を防ぎ、周囲から流入した土砂の捕捉効果を発揮させるため、樹冠が過密になっておらず下層植生(地表付近の植生)が十分確保されていること。

(ウ)評価対象とする森林の単位
 森林の水土保全機能は、その影響が河川を通じて海域にまで広がる場合も多いため、一定の広がりを持つ流域(降った雨が川に流れ込む範囲)単位で評価することを基本とする。この評価では、山地・丘陵を主体とした森林地域の流域を対象として、流域面積数百ha程度のスケールを想定している。

(エ)前提条件
 以下の前提条件に基づき評価を行うこととする。

○森林土壌や基岩層に着目して評価する
 水土保全機能を発揮する上で重要な働きをしているのは、樹木や下層植生のほか、降水の浸透・貯留、水質の改善などに深く関わっている土壌及び基岩層(風化を受けていない岩石の層)である。

○森林の役割は土壌表面を覆うこと
 森林では、樹冠が土壌表面を覆うことで、表面浸食防止などの土壌の保全、根系や落葉による土壌の形成、降水の地中浸透の促進などの効果を通して水土保全機能が発揮されると考えられる。

○面積割合を指標とする
 水土保全機能は、流域全体を単位とした森林の機能であることから、機能を十分発揮していない状態の面積割合を指標とする。

ウ 評価方法

 水土保全機能の評価方法は、水土保全上マイナスと考えられる項目(表-1)による減点法で「森林の今の状態」を評価するものである。何も減点される項目のない「満点」の森林が「めざす姿」となる。

 この評価では、次の4つの機能ごとに評価点数を算出し、これを平均して総合得点とする。

  • 渇水・洪水緩和機能(NW)
  • 水質保全機能(NQ)
  • 土砂流出防止機能(ND)
  • 土砂崩壊防止機能(NL)

具体的な評価方法のイメージは図のとおりであり、次のa~hの手順により評価を行う。

図1評価方法のイメージ

図1評価方法のイメージ

a 流域を選定し、山地斜面と渓畔域の面積を求める。
○常に水が枯れない河川の両岸から左右30 m※を渓畔域として、以下の式で渓畔域面積と山地斜面面積を求める。

  渓畔域面積(ha)  =流路総延長(m)×60(m)/10,000
  山地斜面面積(ha)=流域面積(ha)-渓畔域面積(ha)

※30mという値は、水質を浄化する渓畔林の幅を算出した過去の研究例(文献8)を参考にした。

○b~eの計算は、渓畔域と山地斜面のそれぞれについて行う。

b 渇水・洪水緩和機能、水質保全機能、土砂流出防止機能の評価項目に該当する面積を次の方法により求める。

○次の7分類18項目について、山地斜面、渓畔域別に該当する面積を算出する。

  • 下層植生のある森林土壌(疎、無立木)
  • 下層植生のない森林土壌(中以上、疎、無立木)
  • 固結していない地質(砂礫、シルト、粘土、火山灰など)が露出した場所(中以上、疎、無立木)
  • 客土、盛土などで、締め固められた土が露出した場所(中以上、疎、無立木)
  • 客土、盛土などで、締め固められた土に植生の回復した場所や人工的な草地、砂利で覆われた場所(中以上、疎、無立木)
  • 貯水地(無立木)※渇水・洪水緩和機能では評価対象外
  • 舗装、基岩(中以上、疎、無立木)※水質保全機能では評価対象外

※( )は樹冠の状態を示し、中以上(41%以上)、疎(11~40%)、無立木(10%以下)に区分している。

c 土砂崩壊防止機能、土砂流出防止機能の評価項目に該当する面積を求める。
○森林調査簿、GIS(地理情報システム)等により、山地斜面、渓畔域についてそれぞれ傾斜が20°以上で、林齢が15年生以下の林分又は無立木地の面積を算出する。斜面崩壊は傾斜が30~50°で発生しやすいため(文献19)、安全性を見越して30°よりやや低い20°とした。崩壊は10~20年以下の林齢の場所で起こりやすいことから(文献9、27)、中間の15年を判断基準の値とした。

d b及びcで算出した面積をそれぞれについて山地斜面面積、渓畔域面積に対する百分率を求め、それを面積率とする。

e 山地斜面、渓畔域の各機能に関するスコアを以下の式で算出する。

 山地斜面における渇水・洪水緩和機能のスコア(SW)
  =100-Σ((表-1の18項目の重み付け係数(水量))
    ×(bの項目に該当する山地斜面の面積率))

 渓畔域における渇水・洪水緩和機能のスコア(RW)
  =100-Σ((表-1の18項目の重み付け係数(水量))
    ×(bの項目に該当する渓畔域の面積率))

 山地斜面における水質保全機能のスコア(SQ)
  =100-Σ((表-1の18項目の重み付け係数(水質))
    ×(bの項目に該当する山地斜面の面積率))

 渓畔域における水質保全機能のスコア(RQ)
  =100-Σ((表-1の18項目の重み付け係数(水質))
    ×(bの項目に該当する渓畔域の面積率))

 山地斜面における土砂崩壊防止機能のスコア(CL)
  =100-Σ((表-2の2項目の重み付け係数)
    ×(cの項目に該当する山地斜面の面積率))

 渓畔域における土砂崩壊防止機能のスコア(DL)
  =100-Σ((表-2の2項目の重み付け係数)
    ×(cの項目に該当する渓畔域の面積率))

※土砂流出防止機能のスコアは、SQ、RQ、CL、DLを用いて計算されるため(fを参照)、計算式は記載していない。

表1 渇水・洪水緩和機能、水質保全機能、土砂流出防止機能を低下させる項目
地表の状態 樹冠の状態 重み付け係数数量 重み付け係数水質 地被状況の例
下層植生のある森林土壌 中以上 下層植生のある林分
0.07 0.004 疎林状態の林分
無立木 0.16 0.009 草本が残存している皆伐跡地、湿原など
下層植生のない森林土壌 中以上 0.02 0.011 林内が極端に暗く、十分に間伐(樹木の成長を促すための間引き)がなされていない林分
0.10 0.018 地拵えなどによって表土、植生がはぎ取られた後、十分に植生が回復せず、まだ、下層植生の少ない植栽地など
無立木 0.19 0.028 地拵え、かき起こしなどによって表土、植生がはぎ取られ、植生の回復していない場所など
団結していない地質(砂、礫、シルト、粘土、火山灰など)が露出した場所 中以上 0.30 0.585 林内の、有機物層の一部が流出して失われた浸食地→浸食地部分の面積を簡易測量か目視で求める
0.46 0.767 樹木が侵入し、森林が回復しつつある崩壊跡地など
無立木 0.67 1.0 樹木のない崩壊地など
客土、盛土などで、締め固められた土が露出した場所 中以上 0.30 0.406 *樹木に覆われた土場(丸太を集めておく場所)及び砂利のない路面
0.46 0.534 *部分的に樹木に覆われた土場及び砂利のない路面
無立木 0.67 0.697 畑地、*樹木に覆われていない土場及び砂利のない路面
客土、盛土などで、締め固められた土に植生の回復した場所や人工的な草地、砂利で覆われた場所 中以上 0.21 0.017 *樹木に覆われた砂利路面
0.34 0.026 樹木が点在する放棄草地、*部分的に樹木に覆われた砂利路面
無立木 0.51 0.037 スキー場、ゴルフ場、牧草地等の人工的な草地、*樹木に覆われていない砂利路面
貯水地 無立木 0.087 水田、貯水ダム
舗装、基岩 中以上 0.50 樹木が繁茂した岩盤露出斜面(急斜面で土場がない場所など)、*樹木に覆われた舗装路面
0.72 樹木が点在する岩盤露出斜面*部分的に樹木に覆われた舗装路面
無立木 1.0 岩盤のみが露出した斜面、*樹木に覆われていない舗装路面

 

※-の項目は、評価対象外を意味する。*の項目は、渓畔域に存在する場合にのみ評価する。また、土砂流出防止措置が適切に実施された集材路、作業路などの路面については、現地の状況により人工的な草地として扱う。

※これらの項目は、土壌の状態(森林土壌、固結していない地質、客土や盛土などの人為的に導入された土など)と下層植生の状態(森林土壌に関してのみ、ある、なしで区分)を考慮した各区分に、樹冠の閉鎖具合(中以上、疎、無立木)をそれぞれ組み合わせて区分されたものである。

※道路の路面面積については、林道、作業路、集材路延長から、以下の式で面積を算出する。 路面面積(ha)=林道延長(m)×4/10,000+(作業路延長+集材路延長)(m)×3/10,000

表2 土砂崩壊防止機能を低下させる項目の例
斜面傾斜 森林の状態 重み付け係数 地被状況の例
20°以上 林齢15年以下 0.87 急傾斜地で植栽した直後など
無立木 1.0 急傾斜地にある皆伐跡地など

 

※表1、表2の重み付け係数の計算方法は、別紙である水土保全機能評価マニュアルに記載。

f eで求めたスコアを用いて、4機能の評価点数を以下の式で算出する。
 渇水・洪水緩和機能(NW)=SW×0.5+RW×0.5
 水質保全機能(NQ)   =SQ×0.1+RQ×0.9
 土砂流出防止機能(ND) =(SQ+CL)×1/2×0.4+(RQ+DL)×1/2×0.6
 土砂崩壊防止機能(NL) =CL×0.5+DL×0.5
  ※式にある重み付けの根拠は「オ 重み付け係数の算出根拠」に記載。

g 総合評価得点を算出する。
○総合評価得点は、4機能の得点を平均した値である。
  水土保全機能の総合評価得点(S1)=(NW+NQ+ND+NL)/4

エ 評価結果の取扱い(留意事項)

○水土保全機能を向上させるためには、森林の状態、流量や水質などについて、継続的にモニタリング調査を実施し、結果を検証する必要がある。

○この機能では、流域ごとの森林の状態を評価することにしているが、地質も考慮しなければならない場合(対象流域が地すべり多発地帯など)には、総合評価得点S1に表層地質係数(表-3)を考慮した得点(S2)とする。

表3 表層地質係数(文献24を参考にした)
表層地質係数(f) 該当項目
0.7 破砕を受けた花崗岩類およびその風化層、地すべりが多発している第三紀の泥岩層
0.8 第三紀・第四紀の火山岩堆積(堆積岩地の混在地域を含む)
0.9 中・古生層(古第三紀を含む)、新第三紀堆積岩(先述した泥岩層を除く)、凝灰岩の破砕帯など中・古生層(古第三紀を含む)、新第三紀堆積岩(先述した泥岩層を除く)、凝灰岩の破砕帯など中・古生層(古第三紀を含む)、新第三紀堆積岩(先述した泥岩層を除く)、凝灰岩の破砕帯など
1.0 その他

 

○総合評価点数が極端に低い結果になった場合、点数だけを議論するのではなく、点数を下げた要因および水土保全機能を高めるにはどのようにしたらよいかについて説明することが大切である。

○この評価は、現時点で森林整備が必要かどうかを判断するときに使用する。また、森林整備によって期待される効果は、水土保全上マイナス項目の面積率が改善されることにより表されることになる。

○機能を発揮させるためには、樹冠で地表面を被陰することにより、土壌の保全と乾燥を防止する森林整備が必要である。また、森林整備の上で必要不可欠な作業道であっても、渓畔域に設置すると、機能の発揮に影響を及ぼす場合があることを知る必要がある。

○複層林(樹齢、樹高の異なる樹木により構成された森林)は、病虫害などで一斉に無立木地状態になるリスクを回避する意味で有効であり、「安定した壊れにくい森林」はめざすべき姿であるが、水土保全機能に直接効果があるという研究例はない。そのため、今回の評価項目では、複層林の項目は入っていない。

○保安林(森林法に基づき、水源のかん養など公共目的を達成するため、一定の制限が課せられている森林)等では皆伐等の森林施業に制限が加えられており、将来的に機能発揮に必要な森林が維持される可能性が高いことが期待される。水土保全機能は、森林の社会的位置付けを前提としていることを考慮すると、保安林等の指定面積を評価項目に加えることが必要と考えられる。しかし、本基準は評価時点での現在の森林そのものを評価しようとしたものであることから、保安林等の指定についての評価は今後の検討課題とした。

オ 評価項目の算出根拠

 表1の重み付け係数は、森林を基準として各地被項目から流出した物質(水、土砂)の量が何倍であったかを表した比を利用して算出している(文献5、6、10、12、16、17、20、21、22、25、28)。表2の重み付け係数は、幼齢林面積率と崩壊地面積率の関係や伐採前後の崩壊地面積率の変化を参考としている(文献27)。
 また、4つの機能の評価において、山地斜面と渓畔域の重み付けは、以下のとおりとした。
 渇水・洪水緩和機能では、山地斜面と渓畔域は、ともに水の流出経路となるため、重み付け係数を山地斜面、渓畔域ともに0.5とした。
 水質保全機能では、渓畔域の裸地化などによる水質への影響が山地斜面に対して非常に大きいため(文献29)、重み付け係数を山地斜面では0.1、渓畔域では0.9とした。
 土砂流出防止機能では、地表面の浸食等による影響と山腹崩壊による影響を受けることが考えられるが、土砂の流出に直接的な影響は渓畔域が大きいと考えられるため、重み付け係数を山地斜面では0.4、渓畔域では0.6とした。
 土砂崩壊防止機能では、斜面勾配を主な評価基準としたが、土砂崩壊の影響は山地斜面と渓畔域で明確な差は認められないため、重み付け係数を山地斜面、渓畔域ともに0.5とした。

カ 参考・引用文献

  1. 有光一登(1988)森林の土壌保全機能. 森林の公益機能解説シリーズ(11). (社)日本治山治水協会.
  2. 藤森隆郎(2000)森との共生-持続可能な社会のために-. 丸善ライブラリー.
  3. 東三郎(1985)北海道森と水の話. 北海道新聞社.
  4. 北海道水産林務部治山課・北海道立林業試験場監修(1999)治山技術者のための森林整備技術マニュアル. 北海道治山協会.
  5. 市川正巳(1990)水文学.朝倉書店.
  6. 川口武雄(1986)森林の土砂流出防止機能. 森林の公益的機能解説シリーズ(5). (社)日本治山治水協会.
  7. 川口武雄(1987)森林の土砂崩壊防止機能. 森林の公益機能解説シリーズ(6). (社)日本治山治水協会.
  8. 渓畔林研究会(2001)水辺林管理の手引き 基礎と指針と提言. 日本林業調査会.
  9. 小橋澄治(1993)山地保全学.文永堂出版.
  10. 國松孝男・村岡浩爾(1990)河川汚濁のモデル解析.技法堂出版.
  11. 丸山岩三(1986)森林の水源かん養機能. 森林の公益機能解説シリーズ(4). (社) 日本治山治水協会.
  12. 村井宏・岩崎勇作(1975)林地の水および土壌保全機能に関する研究(第1報).林業試験場報告 274:21-84.
  13. 中村太士(2002)森林の公益的機能と施業計画論. 林業技術 No.721 (社)日本林業技術協会.
  14. 中野秀章・有光一登・森川靖(1989)森と水のサイエンス. (社)日本林業技術協会.
  15. 太田猛彦(2002)地球環境時代の水と森(講演記録). フォレストコンサルNo. 90 林業技術士会.
  16. 太田陽子・中津川誠(2002)出水時を考慮した水質成分負荷量の推定と流域土地利用との関係.平成13年度環境成果報告書 独立行政法人北海道開発土木研究所.
  17. 太田陽子・中津川誠(2002)出水時を考慮した水質成分負荷量と流域土地利用との関係について.水工論文集 46:84-89.
  18. 岡本芳美(1995)緑のダム、人工のダム. 亀田ブックサービス.
  19. 応用地質学研究会(1992)応用地質学.国際科学振興財団.
  20. 林野庁編(2002)平成13年度森林・林業白書 日本林業協会.
  21. 関根享(1994)群馬県吾妻川流域における森林種類及び土地利用別の水・土流出量観測結果. 第105回日本林学会論文集:603-606.
  22. 志水俊夫・藤枝基久・菊谷昭雄・岸岡孝(1986)桜川上流における森林および採石流域の渓流水質について.日本林学会関東支部大会発表論文集 37:173-176.
  23. 森林と水研究会編(1996)森林と水-主要な研究結果から-. (社)日本治山治水協会.
  24. 杉村乾(2001)わかりやすい林業研究解説シリーズ109 森林の役割評価とその適正配置. 林業科学技術振興所.
  25. 武田育郎(2002)針葉樹人工林の間伐遅れが面源からの汚濁負荷量に与える影響.水利科学 267:63-84.
  26. 塚本良則(1995)森林水文学.文永堂書店.
  27. 塚本良則(1998)森林・水・土の保全.朝倉書店.
  28. White, S. (1995) Soil erosion and sediment yield in the Philippines sediment and water quality in river catchments. John & Wiley.
  29. 柳井清治・寺澤和彦(1998)北海道南部沿岸山地流域における伐採が渓流の土砂および有機物の流出に及ぼす影響.北海道林業試験場報告 35:1-10.

(2)生活環境保全機能

ア はじめに

 森林は、空気中の二酸化炭素を吸収・貯蔵して地球温暖化を防止したり、強風をやわらげ農地を守ったり、寒さや暑さなど気象条件を緩和したり、騒音の影響をやわらげるなど、私たちの快適な生活環境の保全・形成に役立っている。
 今回、こうした機能のうち、地球温暖化防止機能と自然災害防止機能について、評価基準を作成した。
 なお、気象緩和、湿度維持などの役割を果たす快適環境形成機能については、科学的知見が十分でないため、今回の評価対象としない。

イ 基本的な考え方

(ア)機能の定義
 以下の機能を対象として、基準を作成した。

機能の定義

a 二酸化炭素吸収・貯蔵機能
 植物が光合成により二酸化炭素と水を原料として植物体を形成し、維持することにより発揮される機能である。

b 防風機能
 林帯(帯状の森林)によって乱流を発生させ、風上や風下の風速を抑制する機能である。林内の幹、枝、葉が遮蔽物となって風を弱める防風効果、防風効果にともなって発揮される昇温効果、砂や吹雪粒子などの粒子捕捉効果、土などが飛ばされるのを防ぐ浸食防止効果などを含む。

c 飛砂防止機能
 飛砂による被害を防止する機能である。植生や落葉による被覆によって飛砂の発生を抑制する効果と、樹木の枝葉により風速を抑えて飛砂の移動を抑制し、林帯に堆積させて風下への移動を阻止する効果を含む。

d 防潮機能
 津波や高潮として林内に侵入した海水の流速を樹幹の摩擦抵抗によって低下させたり、海から飛来する塩分を捕捉する機能である。破壊力を減少させるエネルギー吸収効果、漂流物の移動を立木によって阻止する漂流物移動阻止効果、塩分を捕捉する飛塩防止効果からなる。

e 防霧機能
 樹冠によって霧粒を捕捉する効果、暖められた樹冠(樹木の枝や葉の集まり)によって気温を上昇させる効果、林帯が作り出す乱流によって、梢や地面で暖められた空気を拡散させたり霧粒が樹冠に捕捉されやすくする乱流効果などによって、霧を消失させる機能である。

(イ)めざす姿

a 二酸化炭素の吸収・貯蔵機能
 個々の林分※では、二酸化炭素吸収機能については若齢林、貯蔵機能については壮齢林で最大となり、双方を同時に満たすことはできない。このため、森林整備を積極的に行い、旺盛な成長と吸収機能の最大化を持続させながら、貯蔵機能の大きい高蓄積の林分に導くことを目標とする。

※林分・・・樹種、林齢などが同じ森林のまとまりの総称

b 防風機能
 防風林は樹木が疎らであっても、過密であっても、機能が低下する。そのため、地域に適した樹種により林帯が適切に管理された、防風効果範囲の大きい健全な森林を目標とする。

c 飛砂防止機能
 地表を樹木で被うことにより、飛砂の発生が防止されるとともに、風速が抑えられ、飛砂の後方への移動が抑制される。そのため、樹冠のうっ閉度(樹冠に覆われている面積の割合)が高く、気象害などに対する抵抗性の高い健全な森林を目標とする。

d 防潮機能
 海水のエネルギーを吸収したり、漂流物の移動を阻止する効果は、太い樹木が多数生育しているほど高いため、胸高直径の大きな樹木からなり、単位面積あたりの胸高直径が大きく、かつ気象害などに対する抵抗性の高い健全な森林を目標とする。

e 防霧機能
 霧は、樹木が発生させる乱流によって、樹冠に捕捉されやすくなる。そのため、大小の樹冠が配置され、乱流の激しく起こる林分構造をもち、霧粒捕捉能力の高い健全な森林を目標とする。

(ウ)評価対象とする森林の単位

a 二酸化炭素吸収・貯蔵機能
 二酸化炭素吸収・貯蔵機能は、個々の林分により樹種の構成や林齢などが異なっていることから、小班※単位で評価する。
※小班・・・樹種や林齢、作業上の取扱いが同一な森林の区画

b 防風機能
 防風機能では、具体的保全対象がありかつ帯状に連続している森林を評価の単位とする。複雑な形態の林分で、林帯幅等を判断しにくい場合には、評価の対象とする林帯の区間を定め、対象区間の平均的な林帯幅を用いることとする。

c 飛砂防止機能
 飛砂防止機能では、海岸に沿って帯状に分布する森林を対象とし、海からの影響を緩和する効果が期待されることから、防風機能に比べて林帯幅が広く、多様な樹種や林齢の森林を含むため、小班を評価単位とする。

d 防潮機能
 飛砂防止機能と同様に、小班を評価単位とする。

e 防霧機能
 飛砂防止機能と同様に、小班を評価単位とする。

(エ)前提条件

a 二酸化炭素吸収・貯蔵機能
 二酸化炭素吸収機能と貯蔵機能についてはそれぞれの機能が最大となる林齢が異なり、両機能を同時に最大限に発揮することはできない。このため、両機能について、個別に評価基準を定めることとする。 二酸化炭素吸収機能は森林の成長量、貯蔵機能は森林の蓄積を基に評価を行う。

b 防風機能
 防風効果を評価対象として、現地調査によって得られた樹種、林帯幅(W)、樹高(H)、閉鎖状況を基に計算される防風範囲、樹種の適性、形状比(樹高/胸高直径)を基に評価を行う。防風効果範囲は、相対風速70%以下の範囲とする。

c 飛砂防止機能
 林分がうっ閉することにより、飛砂の発生を抑制し、風速を抑えて飛砂の移動を抑制できると考えられることから、現地調査によって得られた林分のうっ閉率、形状比を基に評価を行う。

d 防潮機能
 エネルギー吸収効果と漂流物移動阻止効果を個別に評価する。エネルギー吸収効果は、ヘクタール当たりの胸高直径合計と形状比を基に評価を行う。漂流物移動阻止効果は、ヘクタール当たりの平均胸高直径と形状比を基に評価を行う。胸高直径合計、平均胸高直径は値が大きいほど機能が高いと言えるが、評価に当たっては、機能評価基準の作成過程で実施したケーススタディの結果等をもとに、目標値をそれぞれ50,000cm/ha、20cmとする。
 飛塩防止効果については、樹冠による塩分の捕捉は霧粒の捕捉効果と類似しているため、防霧機能の評価基準を用いて評価する。

e 防霧機能
 樹冠の凹凸度(森林を横から見たときの樹冠の凹凸の度合い)が高まることにより、乱流が発生しやすくなり、樹冠による霧粒の捕捉などの効果が高まると考えられることから、現地調査によって得られた樹冠の凹凸、樹種、形状比を基に評価を行う。樹冠の凹凸度を示す樹冠凹凸指数は大きいほど機能が高いと言えるが、評価に当たっては、機能評価基準の作成過程で実施したケーススタディの結果等をもとに、目標値を3とする。

ウ 評価方法

(ア)二酸化炭素吸収・貯蔵機能

a 二酸化炭素吸収機能
 (1)小班ごとの樹種、林齢、材積などの一覧表である森林調査簿等を使用し、単年度のヘクタール当たり材積成長量を調査する。
 (2)(1)に、拡大係数※1、木材比重※2、炭素含有率※3を乗じる。
  吸収機能評価 = ha当たり成長量×拡大係数×木材比重×炭素含有率

b 二酸化炭素貯蔵機能
 (1)森林調査簿等を使用して、ヘクタール当たり蓄積量を調査する。
 (2)(1)に拡大係数※1、木材比重※2、炭素含有率※3を乗じる。
  貯蔵機能評価 = ha当たり蓄積×拡大係数×木材比重×炭素含有率

※※1 拡大係数・・針葉樹では1.7、広葉樹では1.9とする(文献10)。拡大係数は、根や枝など全てを含めた全材積に対する幹材積の比である。
※2 木材比重・・針葉樹では0.4、広葉樹では0.6とする(文献10)。木材比重は、材積に対する乾重量の比である。
※3 炭素含有率・・木材の重量に対する炭素の割合で、一般的に0.50が使われる(文献3)。

(イ)暴風機能

防風機能の評価については以下の手順で行う。
a 現況と最大の防風範囲の比を求める
 (1)現地調査により樹種、林帯幅(W)、樹高(H)を求める。
 (2)魚眼レンズを用いて全天写真を撮影し、画像解析から、風を防ぐ枝や葉の量を示す幹枝葉面積指数(TAI)を求める。
 (3)TAD=TAI/Hによって、幹枝葉面積密度(TAD)を求める。
 (4)TADとWを掛けたTAD・Wと以下の関係式から、相対最小風速を求める。
  相対最小風速(%) = -20.5 × ln (TAD・W) + 71
  この式は、林業試験場における調査データをもとに、算出したものである。
 (5)現況の防風範囲を以下の関係式で求める。
  現況の防風範囲(樹高の倍数) =-0.00423×(相対最小風速)2+0.208×相対最小風速+9.95
 この式は、文献2などのデータをもとに、算出したものである。
 (6)以下の関係式で数値Aを計算する。
  A = 現況の防風範囲 / 12.5 × 100
  数値Aは現況防風範囲と最大防風範囲(樹高の12.5倍)の比である。

b 形状比を求める
  ヘクタール当たり胸高直径上位250本の形状比の平均値を求める。形状比70以下の場合は1、70以上の場合は(70/形状比)を係数Bとする。

c 樹種の適性を調べる
 以下の3項目について、表-4のとおり評価し、係数を求める。それぞれの係数をC1、C2、C3とする。

  • 地域に適しているか
  • 最大樹高が十分に高くなることが期待できるか
  • 開葉特性が期待される防風機能に適しているか
表4 防風機能の樹種の適性による評価
評価項目 評価内容
地域に適しているか(C1) 地域に適した郷土樹種 外来種だが良好に成長 適さない
最大樹高が十分に高くなることが期待できるか(C2) 高い 中庸 低い
開葉特性が期待される防風機能に適しているか(C3) 適している 中庸 適さない
係数 1 0.9 0.8

 

d 総合評価
 以下のとおり計算し、総合評価とする。  
 総合評価 =A×B×C1×C2×C3  
 林分の持つ防風機能が適正に発揮された場合、総合評価は最大で100となる

(ウ)飛砂防止機能

 (1)空中写真又は現地調査により、林分のうっ閉率を求め、数値Aとする。
 (2)ヘクタール当たり胸高直径上位250本の形状比の平均値を求める。形状比70以下の場合は1、70以上の場合は(70/形状比)を係数Bとする。
 (3)数値A×係数Bを総合評価とする。林分の持つ飛砂防止機能が適正に発揮された場合、総合評価は最大で100となる。

(エ)防潮機能

 (1)ヘクタール当たりの胸高直径合計を求める。胸高直径合計(cm/ha)が50,000以上の場合は100、50,000未満の時は(胸高直径合計/50,000×100)を数値Aとする。
 (2)ヘクタール当たり胸高直径上位250本の平均胸高直径を求める。平均胸高直径(cm)が20以上の場合は100、20未満の時は(平均胸高直径/20×100)を数値Bとする。
 (3)ヘクタール当たり胸高直径上位250本の形状比の平均値を求める。形状比70以下の場合は1、70以上の場合は(70/形状比)を係数Cとする。
 (4)エネルギー吸収効果は数値A×係数C、漂流物移動阻止効果は数値B×係数Cを計算し、総合評価とする。
 注)飛塩防止効果については、防霧機能の評価基準を用いて評価する。

(オ)防霧機能

(1)現地調査により、樹冠の凹凸の長さを測定し、樹冠の凹凸の長さ(X)と測線の長さ(Y)の割合(X/Y)を樹冠凹凸指数とする(図-2)。樹冠凹凸指数が3以上の場合は100、3未満の時は(樹冠凹凸指数/3×100)を数値Aとする。
(2)樹種を調査し、針葉樹の場合は1、広葉樹の場合は0.8を係数Bとする(混交林の場合は樹種構成から判断する)。
(3)ヘクタール当たり上位250本の形状比の平均値を求める。形状比70以下の場合は1、70以上の場合は(70/形状比)を係数Cとする。
(4)総合評価は数値A×係数B×係数Cとする。

図-2 樹冠凹凸指数の計算方法

図のように求めた樹冠の凹凸の長さ(X)と測線の長さ(Y)の割合(X/Y)を樹冠凹凸指数とする。
図2 樹冠凹凸指数の計算方法

エ 評価結果の取り扱い(留意事項)

○二酸化炭素吸収・貯蔵機能の評価は数値が大きいほど機能が高く、樹種により差はあるが、主として森林の成長量や蓄積により評価されることから、機能を高めるには適切な森林施業が重要である。また、より大きな単位(市町村など)で評価する場合は、小班単位の評価を積み上げることで行う。このとき、伐採分については吸収量から差し引く必要がある。

○自然災害防止機能については、適切な森林施業により機能を高めることが可能である。また、この機能は、人家や農地などの保全対象が存在すること、気象などの自然条件が存在することにより発揮されるという特性があるが、現時点ではデータの蓄積が少ないため、保全対象や地域ごとの気象条件、林分配置による評価は行っていない。

○防潮、防霧機能については、気候条件により生育が大きく変わるが、評価に当たっては現時点での目標値を示している。

○個々の評価項目については、現在までに得られた限られた知見をもとに作成しているため、評価結果は絶対的なものではない。新たな知見とデータの蓄積により、基準を随時見直していく必要がある。

オ 評価項目の算出根拠

 防風機能の評価における最大防風範囲(樹高の倍数)は、これまでの調査事例から林分が最大に達成可能な12.5とした。
 防潮機能のうちエネルギー吸収機能については、樹木の抵抗によって吸収される津波・高潮のエネルギーは、森林を横から見たときの幹の面積に応じて増加するとされているため、ヘクタール当たりの胸高直径合計を評価項目とした。
 防潮機能のうち漂流物移動阻止機能については、文献4において、林縁部や疎開部を除き、ほぼ安全な浸水高H (m) と胸高直径d (cm)の関係が、H=(d/0.37)1/3 で示されていることから、胸高直径を評価項目とした。
 森林の整備にあたっては、風倒などの被害に備えて健全な林分となるよう管理する必要がある。一般的に、形状比(樹高/胸高直径)が70以上になると風雪害を受けやすくなり機能が発揮できない恐れがあるため、防風、飛砂防備、防潮、防霧機能については、形状比70以上の林分では減点することとした。

カ 参考・引用文献

  1. 藤森隆郎(1998)地球温暖化における森林の役割. 農林水産技術研究ジャーナル 21(4): 43-49.
  2. Heisler, G. M. & DeWalle, D. R. (1988) Effects of windbreak structure on wind flow. Agriculture, ecosystems & environment 22/23: 41-69.
  3. 北海道(2000)北海道地球温暖化防止計画. 北海道.
  4. 石川政幸(1988)森林の防霧、防潮、飛砂防止機能. 森林の公益機能解説シリーズ(9). (社)日本治山治水協会.
  5. Kikuzawa, K., Umeki, K. & Koyama, H. (1995) Canopy surface morphology of birch stand.Proceedings of IUFRO International Workshop on Sustainable Forest Managements: 302-306.
  6. 工藤哲也(1988)森林の防風機能. 森林の公益機能解説シリーズ(10). (社)日本治山治水協会.
  7. 村井宏・石川政幸・遠藤治郎・只木良也編(1992)日本の海岸林:多面的な環境機能とその活用. ソフトサイエンス社.
  8. 佐藤創(2003)クロマツ海岸林の密度管理方法. 光珠内季報 129: 11-14.
  9. 鳥田宏行・根本征樹(2002)防風林の疎密度と林帯幅に関する風洞実験. 日本林学会誌 84: 85-90.

(3)生態系保全機能

ア はじめに

 森林生態系とは、"ある森林において、動物・植物・微生物などが、それらを取り巻く環境との間や生物の間で、物質・エネルギーをやり取りしながら一定の構造を保つシステム"を指す。この生態系というシステムは、非常に微妙なバランスの上になりたっており、一度破壊されたら元と同じように復元することが難しいという特徴がある。このため、今日においては、森林でおこなわれる人間活動のあらゆる面で、生態系へ配慮することの重要性が認識されるようになった。
 ここでは、その森林の持つ"生態系をはぐくむ力"を指して生態系保全機能と呼んでいる。森林は、多くの場合「緑のゆりかご」としてたくさんの生命を育んでいるが、気候や立地、規模、あるいは人為の入り方によってその機能の発揮のされ方は異なる。もしも、あるものさしを使って森林が現時点でどれほどの「生態系をはぐくむ力」を有しているのか判れば、今後の森林の取り扱いを決める上で、ひとつの目安となる。以上のような視点に立って、森林の生態系保全機能をより簡易に評価できる基準を作成した。

イ 基本的な考え方

(ア)機能の定義

生態系保全機能とは、森林の有する機能の一つで「森林生態系を構成する生物・無機物(土壌や岩石など)・物理的環境(地形や地質など)とその相互関係を維持する」という機能である。生態系保全機能が高いかどうかの判断は、次のとおり定める。
 ここでは「生態系保全機能の高い森林」を以下の3つのいずれかの条件を満たす森林と定義する。

  1. 希少性が高い(希少な種が生息・生育※1できる環境が維持されている)
  2. 多様性が高い(生息・生育している種が多様である)
  3. 自然性が高い(その土地の潜在自然植生※2に近い植生を保っている)

※1 動物には生息、植物には生育という言葉を当てている。
※2 潜在自然植生・・・もし人為的な行為がなければ、その土地が支え得ると推定される自然の植生(植物の集団)のこと

図3 生態系保全機能の高い森林

図3 生態系保全機能の高い森林

(イ)めざす姿

以下のような森林がイメージされる。
○希少な種が生息・生育できる環境がある
 絶滅のおそれがある種の要求する環境条件を現在でも維持している森林。

○林内植生が多様であり、野生生物にとって重要な環境要素が保護されている
 林内植生(森林の中に生育している植物の集団)が多様で、野生生物の生息や生育、繁殖に重要な役割を果たす環境要素、たとえば樹洞※のある木、動物の好む実のなる木などが豊富で保護されている森林。
※樹洞・・・木の幹の洞(ほら)のこと

○潜在自然植生に近い植生を保ち、生態系が外来種の影響を受けていない
 潜在自然植生(P18参照)に近い植生を保ち、在来種が守られている森林。なお、外来種※とは、野生生物の本来の移動能力を超えて、人の手によって意図的に(または非意図的に)移動された種のことを指す。
※ここでは北海道外来種データベース2004(ホームページhttp://bluelist.hokkaido-ies.go.jp/で公開されている)に掲載されている種とする。

○さまざまな樹種や林齢の森林がモザイクのように並び、しかも連続している
 多様なタイプの森林が並び、そのため多様な野生生物が生息・生育することができる森林。また、連続性が保たれ、動物の行動圏や植物の種の散布先が確保されている森林

(ウ)評価対象とする森林の単位

 評価対象とする森林の単位については、行動圏の広い鳥類・哺乳類を考慮に入れなければならないため、設定がきわめて難しい。そこで便宜上、ここでの評価スケールは森林の区画の最小単位である小班※とし、必要に応じてその周辺の環境を考慮することとした。
 まず評価対象となる小班(1)があるとする(図-4)。基本的に調査は小班内で行うが、その小班に隣接する環境((2))、さらに周辺の環境((3))で得られる情報も評価に反映させる。(3)の範囲は、(1)の中心部から半径2kmの円内とする。

図4 対象となる森林と考慮すべき隣接・周辺環境

図4 対象となる森林と考慮すべき隣接・周辺環境

※小班は、樹種や林齢、管理の方法などが等しい森林の区画のことである。本来は、小班よりも "ランドスケープ(さまざまなタイプの森林や草原、川などを一体としてとらえた「生態系のまとまり」)"という評価単位がもっともふさわしいとされる。しかしランドスケープの明確な区切りを設定することは困難なため、評価の便宜上採用しなかった。かわりに「考慮すべき周辺環境」のスケールの目安として、ヒグマ(本道における最大の陸上動物)の雌の行動圏を参考にした。文献11、12によると、現在まで渡島半島で約5-15km2、知床半島で約4~22 km2という行動圏が記録されている。平均を12-~15 km2程度とみなすと、仮に行動圏を円ととらえたとき、おおむね半径2kmの円内と考えることができる。

(エ)前提条件

 以下の前提条件に基づき評価を行うこととする。
○「希少性」「多様性」「自然性」の評価は現地で得られた生息・生育情報をもとに行う
 このため評価に必要な現地調査が多くなっている。

○「希少性」「多様性」「自然性」の評価はそれぞれ独立である
 1つの評価が高ければ後の2つも高いというわけではない、という関係にある。
  例1~ハイマツ帯は一般に自然性は高いが多様性は低い
  例2~オオタカは希少性が高いが都市近郊林にも生息し、 その生息環境は自然性が高いとは限らない

○「希少性」「多様性」「自然性」のうち、どれか1つでも高いと評価された森林は、生態系保全機能が高い森林とする
 例えば、自然性は高いが多様性が低い森林と、多様性は高いが自然性が低い森林との優劣をつけるのはきわめて難しい。このため、どれか1つでも高い評価を得られた森林は総合評価も高い、と定義する。

○「多様性」の評価には外来種は含まない
 多様性の判断は、在来種を念頭に置いて行い、種数のカウントに外来種は含まないこととする。

ウ 評価方法

植生調査などで得られた現地データと、蓄積された過去の調査データに基づき、基準1から4までの結果を出し統合する。

◆基準1:希少性の評価
対象森林に、北海道レッドデータブック2001に記載されている絶滅のおそれのある種※(絶滅危機種・絶滅危惧種・絶滅危急種)が生息・生育しているかどうかで評価する。絶滅のおそれのある種が1種以上生息していれば評価を「高い」とし、確認されなければ「確認されず」とする。
※環境の悪化や人為的な要因(盗掘や密猟など)等により、絶滅の危機に瀕(ひん)している生き物のこと。
絶滅のおそれのある種全てのリストについては、北海道レッドデータブック2001参照(ホームページhttp://rdb.hokkaido-ies.go.jpで公開されている)。

森林に生息・生育する主な絶滅のおそれのある種
絶滅危機種絶滅危惧種絶滅危急種
植物アツモリソウ
イブリハナワラビ
エゾオオケマン
エゾサカネラン
エゾセンノウ
カラフトアツモリソウ
キバナノアツモリソウ
クロミサンザシ
コアツモリソウ
サカネラン
シュンラン
ヒダカミツバツツジ
レブンアツモリソウ
イチゲイチヤクソウ
オクシリエビネ
キンセイラン
クシロネナシカズラ
クマガイソウ
コイチヨウラン
サルメンエビネ
ヒメホテイラン
ベニバナヤマシャクヤク
ユウシュンラン
アカスゲ
イチヨウラン
ウラホロイチゲ
エゾギンラン
エゾツリスゲ
エビネ
カモメラン
カラフトハナシノブ
クシロチドリ
クシロワチガイソウ
シラネアオイ
スギラン
タカネフタバラン
チャボチドリ
ツリシュスラン
トラキチラン
ヒナチドリ
ヒメドクサ
ヒメムヨウラン
フクジュソウ
フサスギナ
ホソスゲ
ミヤウチソウ
ほ乳類オコジョ
ヒメホオヒゲコウモリ
鳥類シマフクロウ
ミユビゲラ
ワシミミズク
イヌワシ
クマタカ
オオタカ
クマゲラ
ハイタカ
両生・は虫類キタサンショウウオコモチカナヘビ

◆基準2:多様性の評価
動物の多様性、植物の多様性を現地調査により判断し、規定値以上の種数が確認されれば評価を「高い」とする(4段階評価)。

動物の多様性→定点調査により、森林の多様性を表す鳥類の指標種
鳥類の指標種評価
ツツドリ・アカゲラ・コゲラ
キビタキ・ハシブトガラ・ゴジュウカラ
キクイタダキ・コガラ・ヒガラ
センダイムシクイ・ビンズイ・カケス
ミソサザイ・コマドリ・オオルリ・ホオジロ
8種以上確認→「高い」
5種以上7種以下→「やや高い」
1種以上4種以下→「普通」
確認されず→「低い」

※ある特定の環境を好み、それが確認されたことで特定の環境条件を示す種のこと。例えばオオルリは水辺の森を好む野鳥であり 、オオルリが確認された森の近くには水辺があることが多い。

植物の多様性→植生調査で、20m×20mの方形区画内の種類を確認
対象森林の種類 上木の種数 草本の種数 評価
針葉樹林 5種類以上 12種類以上 上木・草本種数のどちらかが基準値以上であれば「高い」
針広混交林 10種類以上 15種類以上
ブナ林 5種類以上 8種類以上
その他広葉樹林 10種類以上 20種類以上

 

○評価の統合→鳥類調査で得られた評価(「高い」「やや高い」「普通」「低い」)をベースに、植生調査で得られた評価が「高い」であった場合に限り、評価を1ランク上げて基準2の評価とする。

◆基準3:自然性の評価
対象となる森林の植生の自然度が高いかどうかを以下の表で評価する。

植生のタイプと植生の例
植生のタイプ 植生の例

評価

市街地植生地・無立木地など 市街地植生地・無立木地など 市街地植生地・無立木など 人為的影響により木本類がほとんど存在せず、外来種の草本が主に生育する地域人為的影響により木本類がほとんど存在せず、外来種の草本が主に生育する地域人為的影響により木本類がほとんど存在せず、外来種の草本が主に生育する地域 低い
単層・複層の人工林   普通
植栽木以外の樹種の侵入が進んだ人工林 上木において、植栽木と侵入木の比率が25%以上の人工林 やや高い
人為的影響の大きい二次林 人為的影響により生育環境が改変されており、潜在自然植生とかけ離れた二次林:排水された湿地、かきおこし地など
種組成を改変された天然林 人為的影響により種組成を改変された天然林:植え込み地など
自然林に近い二次林 潜在自然植生に近い二次林 高い
原生的な天然生林 生育環境が本来の自然状態に近く、種組成に人為的影響の少ない天然林
原生林 人為的影響を受けていない自然植生

 

◆基準4:周辺環境の評価と補足評価
 対象森林の周辺環境も含め、これまでの評価で網羅できなかった部分を補足して評価する。以下の表の「評価方法」の欄に従って、「○」「×」のいずれかをチェックする(該当がなければ無印とする)。最後に○一つを1点、×一つをマイナス1点、無印を0点に換算して、範囲(1)から(3)のポイントをすべて合計する。合計で10点以上得られた場合は総合評価に反映する(後述)。

森林の小班(範囲(1))で評価するもの
  構成要素 評価方法
希少種 北海道レッドデータブック2001掲載の「希少種」の生息・生育の確認情報 あれば○
樹木 大径木(胸高直径※30cm以上) あれば○
樹洞のある木 あれば○
立ち枯れ木(胸高直径20cm以上) あれば○
倒木(直径20cm以上) あれば○
動物の好む堅果類(ミズナラなど) あれば○
動物の好む液果類(ヤマブドウなど) あれば○
ギャップ 0.4-0.8ha程度の林内間隙 あれば○
林緑 林の外周部分の植生 発達していれば○
林床植生 更新の阻害要因としてササが大きいか藪(ササ藪を除く)の存在 大きいと思われれば×
あれば○
※階層構造 階層  
高木層 0 1/3 2/3 1 合計点数3以上で○2つ
亜高木層 0 1/3 2/3 1 合計点数2以上で○1つ
低木層 0 1/3 2/3 1 その他は無印
草本 0 1/3 2/3 1  

 

※胸高直径は、成人の胸の高さ(地際から130cm)の位置における木の直径のこと。
※ 階層構造は、高木から草本まで4階層のそれぞれの葉密度を4段階で評価したときの合計点。たとえば高木層が「中」なら2/3、亜高木層が「疎」なら1/3、低木層が「無」なら0、下層植生が「密」なら1となる。2/3+1/3+0+1=2となることから、合計点数が2以上となり、評価は○1つということになる。林層構造の最高点はすべて「密」の4点、最低点がすべて「無」の0点となり、その間の値におさまる。

(1)に隣接する環境(範囲(2))で評価するもの
  林相・構造・配置 評価方法
水系 河川 あれば○

湖沼・湿原・湿地

あれば○

苔の生えた礫(れき)

渓畔に裸地がある

谷への枝条等の廃棄

見られたら○
あれば×
あれば×
地形特性 岩場・風穴・洞穴など 確認できれば○
岩壁 河川とともにあれば○
土崖 河川とともにあれば○
森林の配置 モザイク構造の有無 樹種・樹高など異なるタイプの林分が混在していれば○
林齢 壮齢林※が含まれるか 含まれれば○2つ
一般人の立入 駐車場のある施設、歩道がある 施設のみ→× 施設と歩道→×2つ

 

※成熟した段階に達した森林のことで、林齢で50年生が目安。

(1)の中心より半径2kmの円内(範囲(3))で評価するもの
人工林率 対象森林を含む森林のまとまりの人工林面積率 0%で○、50%以上で×
林道密度 基準値(道内民有林平均) 登山道・作業道のみ→○
基準値以上または公道あり→×

 

◆総合評価の導き方:基準1から基準3の中で、最も高い評価が得られたものを総合評価とする(基準1で「確認されず」の場合は基準2と3で判断)。ただし基準4で10ポイント以上が得られた場合は、総合評価を1ランク上げる。

エ 評価結果の取り扱い(留意事項)

○総合評価は「高い」「やや高い」「普通」「低い」の4段階で森林の生態系保全機能をあらわすものだが、厳密に言うと、森林の生態系保全の役割は、その森林の立地条件(大きさや連続性、周辺の土地利用など)によっても異なる。そのため評価結果は、それらを考慮して森林整備・保全に生かされることが望ましい。

○以下は、森林の大きさ・連続性などを考慮して森林を5つに類型区分し、森林整備の方向性について示したものである。類型ごとに生態系保全機能を高めるための取扱いの方向性が異なり、総合評価の目安も異なることに留意する。

図5 大きさ・連続性からみた森林の類型区分のフローチャート

図5 大きさ・連続性からみた森林の類型区分のフローチャート

表5 類型区分と総合評価の目安 類型区分
類型区分森林の特徴と生態系保全機能を高める取扱いの方向性 総合評価の目安

(1)重要種生息型
 
面積の規模や立地条件に関わらず、絶滅のおそれのある種の生息地・生育地として重要。種の生息・生育する環境の維持を最優先とする。 (「高い」が得られる体系になっている)
(2)コア型面積的まとまりが大きく、多くの種が生息可能。林内植生の多様化・林分のモザイク配置を考慮し、野生生物にとって好適な環境が消失したり質的に低下しないよう配慮。「やや高い」以上が得られるようにしたい
(3)林縁型人為的土地利用に隣接。人の出入りの多い場所は移入種が侵入しやすく乾燥化が進みやすい。取扱いはコア型に準ずるが、形状によっては動物の移動経路として特に保全する。 「やや高い」以上が得られるようにしたい

(4)コリドー※型(踏み石型を含む)
周辺の森林との位置関係によって、移動経路として動物が利用。動物が安全に移動できる環境を確保、鳥類・昆虫の多様性を高める広葉樹を増やす。 「普通」を維持できれば望ましい
(5)孤島型一般に乾燥化が進み多様度が低く、分断されているが、都市部においては生物の生息地・生育地・避難所として重要。森林として維持することに大きな意味がある。「普通」以上の評価が得られたら意味が大きい

※コリドーとは森と森の間をつなぐ林帯のこと。緑の回廊とも呼ばれる。踏み石型とは、生物が中継地として活用しながら移動できるような断続的な森林のこと。

○以上の評価は、現地調査に基づく調査のため、調査の時期や調査区画の取り方によって評価が大きく左右される可能性がある。そのため、必要に応じて数回調査を実施し、信頼性を高める必要がある。

○なお、以上の評価基準は現在までに得られたごく限られた知見の中から作成されたため、評価結果は絶対的なものではない。新たな知見と、評価結果の蓄積から、定期的に基準の見直しを行う必要がある。

オ 評価項目の算出根拠

 生態系保全機能は評価に点数や数式を用いない。評価の基準値(「○種以上」など)については、文献資料のほかプロジェクトチームの現地検討結果及び森づくりセンターでのケーススタディの結果をもとに設定した。

カ 参考・引用文献

  1. 日本自然保護協会(1985)指標生物-自然をみるものさし-. 思索社.
  2. 北海道保健環境部(1987)北海道自然環境保全指針.
  3. 北海道保健環境部自然保護課(1987)野生動物分布等実態調査報告書.
  4. 由井正敏(1988)森に棲む野鳥の生態学. 創文社.
  5. 東正剛ほか(1993)生態学から見た北海道. 北海道大学図書刊行会.
  6. 由井正敏ほか(1994)林業と野生鳥獣との共存に向けて-森林性鳥獣の生息環境保護管理. 日本林業調査会.
  7. 鷲谷いづみほか(1996)保全生態学入門~遺伝子から景観まで. 文一総合出版.
  8. 前橋営林局(1997)オオタカなどの保護と人工林施業等との共生に関する調査研究.
  9. 岩手県(1999)岩手県自然環境保全指針.
  10. 藤巻裕蔵(2000)北海道鳥類目録・改定2版 帯広畜産大学野生動物管理学研究室
  11. 北海道環境科学研究センター(2000)ヒグマ・エゾシカ生息実態調査報告書4.
  12. 斜里町立知床博物館編(2001)知床のほ乳類2 しれとこライブラリー(3).
  13. 北海道ギャップ分析研究会(2002)北海道におけるギャップ分析研究報告書-新たな生物多様性保全戦略に向けて.
  14. 北海道立林業試験場(2002)エゾシカ被害推移のモニタリングと新たな森林造成技術.
  15. 長池卓男(2002)森林管理が植物種多様性に及ぼす影響. 日本生態学会誌52: 35-54.
  16. 北海道(2001)北海道の希少野生生物 北海道レッドデータブック2001

(4)文化創造機能

ア はじめに

 「森の文化」とは、森林を保全しながら有効に利用していく知恵や、その結晶としての技術、制度、生活様式の総体をいい、21世紀の時代変化に即した「森の文化」を創造する機能は、今後の北海道の森林に期待される役割のひとつである。
 この機能は、個人の感性や価値観を通して評価せざるを得ないことから、一義的・客観的な評価基準を設けることがきわめて難しい。ここでは、その難しさを認識した上で、5つの指標によるレーダーチャート化と森林利用型の分類による基準を作成した。

イ 基本的な考え方

(ア)機能の定義

 「森の文化」を育む機能とする。より具体的には、森林が心身を休養する場やレクリエーション・教育の場、優れた景観などを提供することで、人間に対し快適でゆとりのある生活をもたらすという機能である。

(イ)めざす姿

 どのような利用(あるいは保全)が想定される森林かによって「めざす姿」が異なるのが特徴である。後述するが、「保全型」「自然重視型」「社会重視型」「景観型」「活用型」の各型で想定される活動ごとに、森林の多面的な機能をそこなわない範囲内で利用者の満足度の高い森林が「めざす姿」と言える。

(ウ)評価対象とする森林の単位

 特に評価対象とする森林の単位(大きさ)の目安は設けないが、文化創造的利用を考えるときに、一体として利用するのが望ましいとイメージされる森林の大きさとする。

(エ)前提条件

 以下の前提条件の下に評価を行うこととする。
○人との何らかのかかわりのある森林のみを評価の対象とする
 これは、文化創造機能が人の感性や価値観を通してのみ評価できるということによる。

○評価軸ごとの点数化により、森林の文化創造的な"個性"を評価する
 評価軸ごとに点数化を行い、評価の対象となっている森林が、どういうところに秀で、どのような活動に向いているのかという情報を表すこととする。このため、評価にはレーダーチャートを用いる。

○人間が短期間に創り出すことの難しいものを評価する
 例えば、休憩施設や駐車場は、人間が短期間に創り出すことが可能であるが、巨木・銘木や史跡は難しい。このことを念頭において「人間が短期間に創り出すことの難しいもの」を評価に用いる。

ウ 評価方法

(ア)評価項目

 機能の評価に用いる評価軸を「固有性」「自然性」「郷土性」「傑出性」「眺望性」(人間が短期間に作り出すことの難しいもの)の5つとした。

(イ)評価手順

○評価軸ごとに得点化する
 まず、以下の表を用いて、5本の評価軸から対象森林を見たときにどんな評価が得られるのか得点化する。最高が3点、最低が1点である。

評価軸
評価するポイント参考例評価方法
固有性 ・その地方にしかない種、群落、生態系がある
・地名を冠した種がある
・地域あるいはもっと広い範囲で減少しつつある要素がある
・春国岱アカエゾマツ純林など
・アポイカンバ、オオヒラウスユキソウなど
・要素が道内に広く知られている場合は3、地元や愛好家に限って知られている場合は2、要素がない場合は1(3点満点)
自然性・多様な自然が見られる(広葉樹林、針葉樹林、渓流、湿原など)
・魅力ある植物群落を含む、または野生動物の痕跡が見られる
・花の美しい植物等
・キツツキ類の食痕や鳥の巣、動物の足跡など
・最低を1とし、評価するポイントにあてはまる数だけ1点を加算(3点満点)
郷土性・古い時代から継承されてきた要素
・地域の生活文化と関わりの深い要素
・地域のシンボルとして親しまれる要素
・・・のいずれかが存在する
・遺跡、森を舞台とした伝承・祭事など
・道祖神、寺社林、御神木、銘木
・固有性に同じ
傑出性・高さ、広さ、古さ、美しさ、特殊さなどの点において傑出している・大径木、巨木
・樹木でアーチ状に形成されたトンネルなど
・全道的に見て傑出している場合は3、地域的に見て傑出している場合は2、それ以外は1(3点満点)
眺望性・人工物と森林が調和が取れている
・多くの人の目に付きやすい
・自然性に同じ

○レーダーチャート化する
「固有性」「自然性」「郷土性」「傑出性」「眺望性」の5つの軸を使ってレーダーチャート化を行う。

レーダーチャート

○レーダーチャートの形から5つの型のどれかに当てはめ総合評価とする
レーダーチャートの形を以下の例と比較し、対象森林にふさわしい利用のタイプを示した「保全型」「自然重視型」「社会重視型」「景観型」「活用型」の5つの型のどれかに当てはめ総合評価とする。これにより、その森林の特徴を生かした活動がわかる。

レーダーチャート分類

エ 評価結果の取り扱い(留意事項)

評価結果は、以下のように取り扱われることが望ましい。

○森林の現在の利用状況も考慮する
 評価結果から導かれる「型」はひとつの例であり、それがそのまま"もっとも望ましい利用のあり方"とは限らない。将来的にその森林をどう活用していくかを考える際には、まず現在その森林がどのように利用されているか(あるいはされていないか)を調査し、考慮する必要がある。

○利用性・快適性も考慮する
 この評価は、人間が短期間に創り出すことの難しいものを対象に行っているが、実際には、人為的な工夫によって森林の利用性や快適性が向上する場合がある。将来的な利用方法の検討の際には、それらも考慮することが望ましい。利用性・快適性は、以下のようなポイントで判断できる。

利用性・快適性について
利用性 ・その森林までアクセスする道路・駐車場がある

2つ以上当てはまれば1(高い)

それ以外は0(低い)

・今の時点で林内に適当なルートやビューポイントが存在する
・ヒグマの目撃頻度が低いなど利用時に危険性が少ない
快適性

・林内感(人が「林の中に居る」と快適に感じられる感覚のこと。人工的な音からの隔絶のほか、林内の見通し距離や立木密度などが影響するといわれている)が高い

2つとも当てはまれば1(高い)

それ以外は0(低い)

・地盤がゆるい、急傾斜地が多いなど、文化活動からみた危険な要素が少ない

 

以下は、森林を5つに類型区分し、利用性・快適性も考慮した森林整備の 方向性について示した例である。類型ごとに機能を高めるための取扱いの 方向性が異なることに留意する。

レーダーチャート分類(利用性・適用性)

○保全型で快適性「高い」利用性「高い」
→利用者が多くなり、環境収容力を超える可能性がある。保全のため のルール作りが必要
○保全型で快適性「低い」利用性「低い」
→そのまま。無理にいじらない

○自然重視型で快適性「高い」利用性「高い」
→自然を重視した活動の舞台として魅力が大きいので、活動目的に合 わせて整備を進めると良い。固有性の維持に注意
○自然重視型で快適性「低い」利用性「低い」
→たとえば視点の変化にとんだルートを作り、林内感を高める整備を することで、より機能を高められる。

○社会重視型で快適性「高い」利用性「高い」
→郷土や歴史、景観などを重視した活動の舞台として魅力が大きいの で、活動目的に合わせて整備を進めると良い。固有性の維持に注意
○社会重視型で快適性「低い」利用性「低い」
→あまり想定しづらい

○景観型で快適性「高い」利用性「高い」
→眺望に優れており、名勝史跡を楽しむような活動の舞台として魅力 が大きい。採取型活動などは過剰利用が景観の劣化をまねかないよ うな配慮が必要
○景観型で快適性「低い」利用性「低い」
→たとえば林内にルートを作り、ビューポイントを工夫するなどの整備をすることで、より機能を高められる

○活用型一般
→文化創造機能が高い森林とは言えないが、地元の要望が強ければ、利用目的にあった整備をすることで活用することができる

 それぞれの型で、快適性と利用性のどちらか一方が高くて一方が低い場合も多いことが予想されるが、その場合は森林をどのように活用したいか地域で検討する必要がある。
※なお、利用性や快適性の現在の水準が、利用者にとって本当に望ましいのか否かの判断は、厳密には社会調査が必要となる。

○評価担当者の判断による影響が大きいことを念頭に置く
この評価は、人の感性・価値観を通して評価せざるを得ない面があることから、評価担当者の判断による影響が大きいということを前提に説明する必要がある。

オ 評価項目の算出根拠

1967年から1999年に発表された134件の文献調査から、自然環境アセスメントに使われる15種類の評価軸の中で、人間の価値観との間に一定の関係性が認められたとされる11の評価軸を抽出した文献6を参考に、類似性の強いものを統合するなどの検討を重ねて5つの評価軸に絞った。

カ 参考・引用文献

  1. 海津ゆりえほか(1996)自然観察における動植物の認識構造に関する考察 ランドスケープ研究59.
  2. 堀繁ほか(1997)フォレストスケープ~森林景観のデザインと演出. 全国林業改良普及協会.
  3. 香川隆英(1998)自然風景地における森林景観整備の新しい方向―フォレストスケープの実践. ランドスケープ研究 62(2).
  4. 鷲田豊明ほか(1999)環境評価ワークショップ-評価手法の現状-. 築地書館.
  5. 大萱直花ほか(2000)景観認識の分析を基にした森林の保健休養機能評価法の開発. 森林計画誌34(1).
  6. 松井孝子ほか(2002)学術研究および環境アセスメントにおける景観解析手法の変遷とその比較に関する研究. ランドスケープ研究 65(5).

(5)木材生産機能

ア はじめに

 私たちは、日常生活の中で、木材を住宅部材,家具,食器,箸などのほか,新聞やノートなどの紙製品の原料として利用している。また、木材は、生態系の中で生産された生物材料であり、持続的な森林管理がなされる限り、循環的な利用が可能である。したがって、木材を有効に利用することは、人間社会の理念である持続可能な循環型社会の構築に、きわめて高く貢献するということができる(文献1)。

 森林づくり基本計画では、人と環境にやさしい資材である木材が、林業を通じて適切に生産され、さらに木材産業等を通じて積極的に人々に利用されるという循環の仕組みづくりを進めることとしている。
 しかし、現在、木材価格の低迷や世代交代による森林所有者の山離れなどさまざまな社会情勢から、木材の生産に必要な森林の手入れがなかなか進まない状況が生まれている。

 このため、森林所有者が自分の山林の機能を高める森林づくりについて改めて考えていただく目安とするとともに、道民の方々に森林の持つ木材生産機能について理解を深めていただく目安としての評価基準を作成した。従って、立木や丸太の価格を評価するための基準ではないことにご留意願いたい。

 なお、木材生産機能の評価については、林地の生産力や路網の状況などによる機能発揮の可能性の大きさ(ポテンシャル)を評価することが一般的であるが、ここでは森林を今後どう育てていくかに視点を合わせ、森林の現況を評価することとした。

イ 基本的な考え方

(ア)機能の定義

 木材には、建築用材、木製品原料、パルプ原料、バイオマス資源等、様々な利用の用途があり、用途に応じた施業体系というものがある。この施業体系は、人工林と天然林、針葉樹と広葉樹、小中径用材と中大径用材、皆伐と非皆伐、単層林と複層林などさまざまな要素ごとに分類される。

 本基準では、全道一円で活用しやすい基準となるよう、施業体系ごとの分類をせず、針葉樹人工林での建築用材を主な利用用途とした施業を想定した。
 そのような前提において、木材生産機能が高いかどうかの判断基準を、次のとおり定めた。

【木材生産機能が高いかどうかの判断】

  1. 良質の木材の生産が可能である
  2. 木材の効率的な生産が可能である
  3. 健全性が高い

 なお、ここでいう健全性とは、森林の良好な成長を保証し、木材の安全・確実な供給の基礎となる、自然災害や病虫獣害に対する耐性の高さを指す。

(イ)めざす姿

 上記の、木材生産機能が高いかどうかの3つの判断(質、効率性、健全性)を統合し、次のとおり定めた。

良質の木材を効率的に産出できる健全な森林

木材生産機能判断基準

 ここで「良質の木材の生産が可能な森林」とは、木材としての形質に優れ、利用価値の高い材を産出することができる森林をいう。具体的には、間伐や枝打ちなどの手入れが行き届いており、材に気象害や病虫獣害等の影響が見られない森林をいう。

 また、「木材の効率的な生産が可能な森林」とは、単位材積(m3)あたりの生産コストが低く、高能率の作業を進めることが出来る森林をいう。具体的には、傾斜がゆるい、林内路網が発達している、など搬出作業が容易であるものや、伐採対象林分で単位面積あたりの材積が確保され、作業効率の高い森林をいう。

 「健全性が高い森林」とは、木材を安全・確実に供給する基礎となる能力に優れている森林をいう。具体的には、最低蓄積が確保され、一定量の年間成長量があり、適正な密度を維持し、林床植生に富み、気象害・病虫獣害などへの耐性が高い森林をいう。

(ウ)評価対象とする森林の単位

 個々の森林所有者が、自分の所有する森林を評価するにあたっての評価のしやすさを考慮し、樹種や林齢、作業上の取扱いが同一な森林の最小単位である小班とした。
 なお、木材の安定的な生産という観点から広い範囲での評価が求められる場合は、類似した隣接小班を併せて評価することも可能である。

(エ)前提条件

○評価項目の選定にあたり、簡便性を重視することから、なるべく単一の因子で、木材生産機能の多くが説明できるような評価体系の構築を試みた。
○本基準では、主因子として形状比※1を採用した。形状比は、めざす姿で掲げた木材の質や効率的な木材生産、森林の健全性などに総合的に関連する指標であり、この基準では形状比が低いと評価が高くなる。形状比が低いということは、適切な密度管理が行われ、単木の生長量や直径が大きく、かつ風雪害や病虫獣害に強い健全な森林であるということを表す(詳細は留意事項、算出根拠で記載している)。
○樹冠の閉鎖した後の単層の針葉樹人工林を対象とした基準とする。
○評価は、ランク1(最低)からランク10(最高)の10段階評価とする。
○胸高直径や樹高に関する、現地での簡単な調査に加えて、森林調査簿など既存のデータを用いた評価とする。

※1  形状比は、樹高を胸高直径(成人の胸の高さ:地際から130cmの位置における木の直径)で除した値であり、樹幹の形状を表すために使われる指標のひとつであり、この値が大きくなるほど幹が細く長い状態を表していることになる。

形状比 (GIF 11.5KB)

ウ 評価方法

(ア)評価項目

  『形状比』、『成長量』、『蓄積』、『枝打ち』、『林内路網』、『平均傾斜』、『小班面積』、『材の欠点』の8項目とする。  なお、これらの項目は、それぞれ、木材生産機能の3つの判断基準である「質」、「効率性」、「健全性」に主に次のとおり関連する。

質  ~形状比、枝打ち、材の欠点
効率性~形状比、蓄積、林内路網、平均傾斜、小班面積
健全性~形状比、成長量、蓄積

(イ)評価手順

a 評価に必要なデータを集める

  1. 森林調査簿より、樹種と林齢と小班面積
  2. 小班の最も平均的な林相・成長を示す箇所に設定した20m×20mの標準地内の立木本数、単木ごとの胸高直径、樹高(※2)、枝打ちの有無、病虫獣害の状況、曲がりの状況
  3. 小班の傾斜、最寄の林道・作業道までの距離

※2 胸高直径は、全木について測定する。樹高は上層から4本と中層・下層各1本の計6本について測定する。

b 蓄積、林分形状比、林分成長量を計算する

○ 蓄積を求める  標準地調査から得られた上層・中層・下層の各1本(上層は4本の中で最も樹高の高い木)の胸高直径と樹高の両者の関係より、関係式(樹高曲線式)を導く。この関係式を用い、調査した木の胸高直径に対するそれぞれの樹高を求める。このようにして求めた胸高直径と樹高から全調査木の材積を算出※3・積算し、haあたりに換算して蓄積を導く
(別表1「蓄積の計算方法」参照)。
※3 「北海道立木幹材積表」(文献11)より

○ 林分形状比を求める
 『林分形状比』※4あるいは単に「形状比」とは、林分の上層樹高※5を平均胸高直径で除した値とし、以下の式で導く。
※4 林分の形状比は、「平均樹高を平均胸高直径で除する数値」や「単木ごとに樹高を胸高直径で除した値の平均値」を使用する場合もある。今回は、簡便性を重視し「上層樹高を平均胸高直径で除した値」を使用した。なお、この値は、他の2つの数値に比べ若干高くなるが、林木の大きさ等が正規分布している林分では両者のズレは極めて小さい。
※5 上層樹高は,樹高の高い木から順に上位100本(1haあたり)の平均樹高を使用することとし、ここでは樹高を測定した上層木4本(400m2あたり)の平均値を使用する。

○ 林分成長量を求める  
 林分成長量あるいは単に「成長量」とは、haあたり蓄積を(林齢-A)で除した値とする。
 Aは、林地の生産力が高くない立地における、総蓄積にあまり影響しない、生育初期の期間であり、樹種によって異なる。

表1 期間A
樹種A
カラマツ3
トドマツ16
アカエゾマツ19
スギ5

c 8項目についてそれぞれ評価する

表2 木材生産機能の評価項目と評価方法について
評価項目の名称 評価方法 点数 備考
形状比 林分形状比を求め、樹種ごとの表(表-3)より点数を決定する。ただしhaあたり蓄積が50m3以下であれば一律1点とする 1~5点 点数をそのままポイントとする
林分成長量 林分成長量を求め、樹種ごとに定めた林分成長量(表-4)を上回れば1点 0~1点

合計5点以上→5ポイント、 4点→4ポイント 以下、点数をそのままポイントとする合計5点以上→5ポイント

4点→4ポイント

以下点数をそのままポイントとする

蓄積 haあたり蓄積が、150m3以上なら1点 0~1点
枝打ち 標準地で20本程度の立木に枝打ちを実施していれば1点(※6) 0~1点
林内路網 最寄の林道・作業道まで100m以内であれば1点 0~1点
平均傾斜 傾斜が10度以下の面積が、小班の50%以上を占めれば1点 0~1点
小班面積 小班面積が1ha以上であれば1点 0~1点
材の欠点 なければ1点(※7) 0~1点

 

※6 標準地に20本残っていない場合でも、将来的な立て木に枝打ちが施されていれば1点
※7 材に気象害や病虫獣害等の影響が見られない、曲がりが少ない、と思われるものであれば1点

表3 樹種別林分形状比基準
カラマツ形状比得点トドマツ・アカエゾマツ・スギ形状比得点
80未満5点70未満5点
80以上90未満4点70以上80未満4点
90以上100未満3点80以上90未満3点
100以上110未満2点90以上100未満2点
110以上1点100以上1点
表4 林分成長量基準
樹種林分成長量(m3/ha・年)
カラマツ6
トドマツ5
アカエゾマツ4
スギ7

d 総合評価をおこなう  

形状比をベースに、林分の状態・木材としての質・作業適性などを判定し、木材生産機能を総合的に評価する。  形状比については、点数をそのままポイントとする。それ以外については、合計5点以上を5ポイント、4点を4ポイント、・・・、1点以下を1ポイントとする。  すべてのポイントを合計したものが総合ポイント=ランクである。

エ 評価結果の取り扱い(留意事項)

○ 評価結果は、決して不変ではなく、森林の手入れの仕方によって変わっていくものである。むしろ、評価した森林の今後の保育の目標はどこかという目安として用いることができる。

○ 配点で重視した形状比と管理の方法との関係としては、形状比のきわめて高い、細くて密な林分で、より細い木を中心に間伐すると、残存木の平均直径は大きくなるので形状比が低くなり、ランクは上がることとなる。また、間伐後の森林においては、時間の経過とともに、胸高直径の成長が促進されるので、形状比はさらに低くなる。この結果、間伐すれば、直径の太い、すなわち経済価値が高くなるだけでなく作業効率も良い森林に近づけることが可能である。
 このため、既存の造林地では少し強めの間伐を繰り返すことで、めざす姿に近づけることが出来るといえる。ただし、強度間伐は風雪害による被害が起こる危険性があるため、風害が懸念される間伐手遅れ林においては、弱度の間伐を繰り返し行い、樹勢の回復を図った後に強度に間伐するなどの処置が必要となる。

○ 木材生産機能は、単一の樹種を植栽し、一斉に伐採することで効率があがり、より高い機能を発揮することが期待されるため、たとえば生態系保全機能や生活環境保全機能といった他の機能と両立させるのが難しいと言われている。
 しかし、今回の基準では、形状比を低めに保つことを重視しており、林床に光が当たり、下層植生が多様化することで、生態学的な安定性の高い森林や近年頻発する自然災害に対する耐性(健全性)が高い森林と、「めざす姿」が重なる部分が多い。

○ 森林を密仕立てで管理すると相対的に形状比が高くなるため評価ポイントが低くなる場合がある。これは、本基準において、木材生産機能の持続的な発揮のためには森林の健全性の維持が極めて重要であるとの観点から林床植生に乏しい、冠雪害や風害等の気象害を受けやすい、病虫獣害に対する耐性が低いなど形状比の高い林分のもつ一般的なマイナス面の特徴が評価に強く反映されているためである。その一方で、密仕立ての森林管理には、林分成長量と林分材積をより高いレベルで維持できるというプラス面の特徴もあり、また、きめ細かく密度管理(間伐)を行うことにより、森林の健全性を維持しつつ良質の木材を生産することが可能である。
 したがって、密仕立て林分においても、適切に間伐が行われるとともに過去に近隣で風害や冠雪害を受けた記録がなく、病虫獣害等も見られないような場合は、これまでの管理方法を継続していくことに問題はない。

○ 本基準は、森林の造り方や手入れの仕方に特別な方法の採用を求めているのではなく、(1)それぞれの地域の気候、地形、土壌等の自然条件を考慮して、植栽樹種を選ぶ、(2)間伐を行う、(3)将来の主伐候補木に対し、市場で評価されるために必要な枝打ちを適期に行う、(4)林道・作業道の延長整備に努める、などの管理を着実に実行することにより、木材生産機能をより高度かつ持続的に発揮できる森林の姿に誘導できることを示している。

○ 今回は、個々の森林所有者の所有林の評価のしやすさも考慮し、小班(林分)単位に注目した基準を作成した。しかし、木材生産を考える場合には団地的なまとまりで森林を捉えることが大切であり、その場合には、次のような点に留意する必要がある。
・木材の安定的な供給のためには、偏りのない林齢構成であることが望ましい。このような森林をつくるためには、林齢の平準化を念頭に置いた計画的な伐採や更新の実施が求められる。
・木材の効率的な生産のためには、林齢や樹種のまとまりのある森林の配置や効果的な路網の配置などについて配慮すべきである。また、高性能機械の導入に対応できる施業に配慮することも重要な視点である。
・木材生産機能の高い森林づくりを目指すためには、施業の共同化などにより、複数の森林所有者による連携した取組が必要である。
 今回の基準では、評価対象とする森林の単位を「小班」としているため十分反映されないが、実際に施業を進める場合には、これらの点に留意し、対象とする小班だけでなく周囲の小班を含めた団地的なまとまりで森林を捉える必要がある。 

○ 本基準では、同じ森林を対象として複数の機能についての評価を行う場合、それぞれの機能の評価結果は独立として扱うことを前提としている。そのためどの機能を優先させて森林整備等を行うのかについては、対象森林の状況を踏まえて地域で検討する必要がある。

○ 森林を疎仕立てで管理すると相対的に形状比が低くなるが、必要以上の疎仕立てとすることで、年輪幅が広くなり、材としての強度が弱くなることがあるので、留意する必要がある。
  

(参考)製材の日本農林規格より
区分正角(特等、1等)、平角(特等、1等)
平均年輪幅いずれも6mm以下であること

○ なお、広葉樹人工林、複層林、天然林の木材生産機能については、既存の科学的知見が乏しいこと、成長の異なるさまざまな樹種の交じり合った天然林の生産力の考え方等難しい点もあり、本基準から除き、将来の検討課題とすることとした。

オ 評価項目の算出根拠

○ 林分形状比について
 胸高直径は、一般的に太くなるほど生産効率が上がるうえに、販売額も高くなる(=経済的価値が高くなる)ことで知られている。一方で、以前より形状比という概念が耐雪性・耐風性の点から森林の健全性の指標として使われている(文献12、13)。近年、形状比が木材生産の上でも目安になるという考え方が、鋸谷ほか(文献5)によって展開されはじめ、その基本的な考え方は、藤森(文献1)等においても支持されている。  ここで、胸高直径に樹高を加味した形状比について、木材売上額との相関を検討したところ、形状比と相関が見られ、評価因子として採用することとした。

一般民有林カラマツ

(一般民有林カラマツ)

道有林トドマツ

(道有林トドマツ)

○ 林分成長量について
 北海道主要造林樹種収穫表と成長量に関する資料(文献15)より、それぞれの樹種の3等地(4等地まで区分されている場合は5等地)の林齢とhaあたりの材積の関係から両者の関係式を求め、その勾配を林分成長量の基準(表―4)とした。

例:トドマツ林主林木収穫比較表3等地
林齢材積評価方法
25
3076
351076.2
401355.6
451656.0
501935.6
552215.6
602495.6

※平均成長量5.75

トドマツⅢ等地収穫表

○ 小班面積について
 間伐事業経費と事業規模(一伐区あたりの面積)の関係において、1ha未満と1ha以上で事業費に有意な差がみられた(文献7データ)。

図4 事業経費の規模別比較

○集材距離について
伐採林分から土場までの集材距離と生産性の関係は図5のとおりで、集材距離が長いほど生産功程は低下する(文献14)。
森林所有者に間伐収入があり、集材距離の明らかな84事例(文献7データより)において、平均集材距離の分布は、100mに大きな分布の山があった(図6)。集材距離は短ければ短いほど効率が良いが、このような現場の状況を考慮し、林内路網の項目では,集材距離を100m以内に設定した。

図5 集材距離と生産性の関係

図5 集材距離と生産性の関係

図6 伐採林分→土場までの集材距離の分布

図6 伐採林分→土場までの集材距離の分布

○ 傾斜について
生産効率、ここでは主に機械の走行性を考慮し、造林事業竣工調書の傾斜区分のもっともゆるいカテゴリー(10度未満)とした。

○ 最低蓄積について
地位の悪い箇所(カラマツ林の地位6)での標準伐期齢時の材積(30年生で142m3)を参考に設定した。

カ 参考・引用文献

  1. 藤森(2003)新たな森林管理―持続可能な社会に向けて 全国林業改良普及協会
  2. 須合ほか(1982)カラマツ人工林の形状比について 北見営林支局業務研究発表収録27
  3. 竹内ほか(1997)ヒノキ若齢人工林における形状比の変化 日本林学会誌79巻137-142
  4. 梶原(1989)新しい完満度の定義と表現を用いた同齢林における完満度の変化 日本林学会誌71巻 50-55
  5. 鋸谷ほか(2003)鋸谷式新・間伐マニュアル 全国林業改良普及協会
  6. 梶原ほか(1997)択伐林における幹形変化の個体差 森林計画誌28号39-42
  7. 林業試験場専門林業指導員室・経営科(2002)間伐・主伐事例追跡調査 未定稿
  8. 森林保険協会ほか(2004)伐出作業における新たな標準係数の算定に関する調査 未定稿
  9. 北海道水産林務部森林活用課(2004)北海道一万人林家ファイル中間報告書
  10. 北海道立林業試験場 北海道カラマツ細り表
  11. 中島(1947)北海道立木幹材積表メートル法の部 林友会北海道支部
  12. 福地(1994)「クロマツ海岸林の密度管理を考える」光珠内季報94号p11-13
  13. 大島ら(1981)「スギ林木の生態と冠雪害との関係」北海道林業技術研究発表大会論文集p159-161
  14. 林野庁(2003)立木評価に係る伐出作業標準係数調査事業報告書
  15. 北海道主要造林樹種収穫表と成長量に関する資料(1976)北海道林業改良普及協会
  16. 『林業技術ハンドブック』(1998)全国林業改良普及協会
  17. 『北海道林業技術者必携(下)』(1983)北方林業会
  18. 「地球環境・人間生活にかかわる農業・森林の多面的な機能の評価(答申)」日本学術会議(2001)
  19. 「間伐の団地化と巻き枯らし併用間伐による手遅れ林再生について」鹿児島県指宿農林事務所 小牧利明(2005)森林計画研究会会報No.417号p24-29

別紙1 蓄積の求め方

○計算方法

(1) 各胸高直径ごとの樹高を求める

 標準地調査から得られた測定値をもとに各直径階ごとの樹高を推測する。  

 樹高は、胸高直径を横軸にとり、樹高を縦軸にとり、標準地調査から得られた測定値をプロットし、フリーハンドで曲線を描くこともできるが、客観性をもたせるため、数式(樹高曲線式)を応用する。樹高曲線の式には多くの種類があるが、あてはまりの良さよりカラマツは松井善喜式、広葉樹・針葉樹はネスルンド式を使用することとした。

(各樹高曲線式)
  H=D^2/(a+b*D)^2+1.3 ・・・ネスルンド式
 H= a*e^(-b/D)+1.3 ・・・松井 善喜式
 (H:樹高、D:胸高直径、a,bは係数)  

(計算方法)  最小自乗法を使い、y=a+bxとなるa,bを求める。
 上式においてx=D、y=D/√(H-1.3)(ネスルンド)、x=1/D、y=ln(H-1.3)(松井式)とし、
 a= avg(y)-b *avg(x)  b=Sxy/Sxx (ネスルンド)
 a=EXP(avg(y)+b * avg(x)) b=(-sxy / sxx) (松井式)を求める。
ただし、avg(x)=Σxi/n, avg(y)=Σyi /n、Sxx=Σxi2-(Σxi)2/n、S xy=Σxiyi-(Σxi・Σyi )/n、

(2) 材積の算出

 直径と樹高をもとに北海道立木幹材積表(中島式材積計算式)により、材積の算出を行う。 
 材積計算にあたっては、カラマツ、針葉樹(カラマツ以外)のいずれかを使用する。

2-1)樹高係数FHをもとめる
   針葉樹  FH=0.61    -0.0055H+5.48e^-1.025H
   カラマツ FH=0.435719+0.515867*1/H+2.481278*1/H^2

 2-2)直径係数FDを求める。
   針葉樹  FD=0.50    -0.0008D+0.421e^-0.12D
   カラマツ FD=0.439004+0.916461*1/D-0.073809*1/D^2

2-3)胸高樹幹係数FH、FDより立木材積を求める。
(共通)立木材積=H*(樹高係数FH+直径係数FD)/2*0.7854*(D/100)^2    
 (H=メートル単位の樹高  D=センチ単位の胸高直径)

該当樹種のA~Eの区分のなかで、直径と樹高の関係が一番近いものを当てはめる。

トドマツ、アカエゾ
区分 A B C D E
直径 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積
6 8 0.01 7 0.01 6 0.01 6 0.01 5 0.01
8 10 0.03 9 0.03 8 0.03 7 0.02 6 0.02
10 11 0.05 10 0.05 9 0.04 8 0.04 7 0.03
12 12 0.08 11 0.07 10 0.07 9 0.06 8 0.05
14 14 0.12 13 0.11 11 0.1 10 0.09 9 0.08
16 15 0.16 14 0.15 13 0.14 11 0.12 10 0.11
18 17 0.23 15 0.2 14 0.19 13 0.18 11 0.15
20 18 0.29 16 0.26 15 0.25 14 0.23 12 0.2
22 19 0.37 17 0.33 16 0.32 15 0.3 13 0.26
24 20 0.45 18 0.41 17 0.39 16 0.37 14 0.33
26 21 0.55 19 0.51 18 0.48 17 0.46 15 0.41
28 22 0.67 20 0.61 19 0.58 18 0.56 16 0.5
30 23 0.79 21 0.73 20 0.7 18 0.64 16 0.57
32 24 0.93 22 0.86 21 0.83 19 0.76 17 0.68
34 25 1.08 23 1.01 21 0.93 20 0.89 18 0.81
36 25 1.21 24 1.17 22 1.08 21 1.04 19 0.95
38 26 1.39 24 1.3 23 1.25 21 1.15 19 1.06
40 26 1.53 25 1.48 23 1.38 22 1.33 20 1.22
42 27 1.74 25 1.63 24 1.58 22 1.46 20 1.34
44 27 1.91 26 1.85 24 1.72 23 1.66 21 1.54
46 27 2.08 26 2.01 24 1.88 23 1.81 21 1.67
48 27 2.26 26 2.19 24 2.04 23 1.97 21 1.82
50 27 2.45 26 2.37 24 2.21 23 2.13 21 1.97

 

スギ
区分 A B C D E
直径 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積
6 10 0.02 9 0.02 9 0.02 8 0.01 8 0.01
8 11 0.03 10 0.03 10 0.03 9 0.03 9 0.03
10 12 0.05 11 0.05 11 0.05 10 0.05 10 0.05
12 13 0.08 12 0.08 12 0.08 11 0.07 11 0.07
14 14 0.11 13 0.11 13 0.11 12 0.1 12 0.1
16 15 0.15 14 0.15 13 0.14 13 0.14 12 0.13
18 16 0.2 15 0.2 14 0.19 14 0.19 13 0.18
20 17 0.26 16 0.26 15 0.25 15 0.25 14 0.23
22 18 0.33 17 0.33 16 0.32 16 0.32 15 0.3
24 18 0.41 18 0.41 17 0.39 17 0.39 16 0.37
26 19 0.48 18 0.48 18 0.48 17 0.46 17 0.46
28 20 0.58 19 0.58 19 0.58 18 0.56 17 0.53
30 21 0.7 20 0.7 19 0.67 19 0.67 18 0.64
32 22 0.83 21 0.83 20 0.79 20 0.79 19 0.76
34 22 0.93 21 0.93 21 0.93 20 0.89 20 0.89
36 23 1.08 22 1.08 22 1.08 21 1.04 20 0.99
38 24 1.25 23 1.25 22 1.2 22 1.2 21 1.15
40 24 1.38 23 1.38 23 1.38 22 1.33 21 1.28
42 25 1.58 24 1.58 23 1.52 23 1.52 22 1.46
44 25 1.79 25 1.79 24 1.72 23 1.66 22 1.6
46 26 1.95 25 1.95 25 1.95 24 1.88 23 1.81
48 27 2.19 26 2.19 25 2.12 24 2.04 23 1.97
50 27 2.37 26 2.37 26 2.37 25 2.29 24 2.21

 

カラ
区分 A B C D E
直径 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積 樹高 材積
6 9 0.01 8 0.01 7 0.01 6 0.01 5 0.01
8 11 0.03 10 0.03 8 0.02 8 0.02 7 0.02
10 12 0.05 11 0.05 10 0.04 9 0.04 8 0.03
12 14 0.08 13 0.07 12 0.07 10 0.06 9 0.05
14 16 0.12 14 0.11 13 0.1 12 0.09 11 0.09
16 17 0.17 16 0.16 14 0.14 13 0.13 12 0.12
18 18 0.22 17 0.21 16 0.2 14 0.17 13 0.16
20 20 0.3 18 0.27 17 0.26 15 0.23 14 0.21
22 21 0.38 19 0.34 18 0.33 16 0.29 15 0.27
24 22 0.47 20 0.43 19 0.41 17 0.37 16 0.35
26 23 0.57 214 0.52 20 0.5 18 0.45 16 0.4
28 24 0.69 22 0.63 21 0.61 19 0.55 17 0.5
30 24 0.79 23 0.76 22 0.73 20 0.66 18 0.6
32 25 0.93 23 0.86 22 0.82 20 0.75 19 0.72
34 25 1.05 24 1.01 23 0.97 21 0.89 19 0.81
36 26 1.22 25 1.18 24 1.13 22 1.04 20 0.95
38 26 1.36 25 1.31 24 1.26 22 1.16 20 1.06
40 26 1.51 25 1.45 24 1.39 23 1.34 21 1.22
42 26 1.66 25 1.6 24 1.53 23 1.47 21 1.35
44 26 1.82 25 1.75 24 1.68 23 1.61 21 1.48
46 26 1.98 25 1.91 24 1.84 23 1.76 21 1.61
48 26 2.16 25 2.08 24 2 23 1.92 21 1.76
50 26 2.34 25 2.25 24 2.17 23 2.08 21 1.9

 

※各欄左は樹高、右は材積を表す(道有林北見人工林トドマツ・カラマツ、松前人工林スギ使用)

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