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 「おじいちゃん、こんにちは。いつもありがとうございます」
 駅前にさしかかったちいちゃんは、元気よく、おじいちゃんの背中に声をかけました。
 「やあ、ちいちゃん」
 ふり返ったおじいちゃんの額には、うっすらと汗がにじんでいます。
 「図書館で、読み聞かせのボランティアがあるの」
 「ほう。感心、感心。まごのえりも、ちいちゃんが本を読んでくれるのを、とっても楽しみにしているよ。今日も『ちいちゃん、どんな本を読んでくれるかなぁ』ってにこにこしながら、図書館に行く用意をしていたよ」
 「そうなの?よかったわ。私も、小さい子に本を読んであげるのが、楽しくって楽しくってしようがないの」
 ちいちゃんは、心の底から喜びがこみ上げてきました。
 「それにしても、ちいちゃんは本当にがんばり屋さんだね。ボランティア活動で心の汗を流すと、気持ちがいいものだよ。気をつけて行きなさいよ」
 そう言うと、おじいちゃんは、また自転車をならべ始めました。
 ちいちゃんとたっくんは、元気よく「行ってきまーす」とあいさつをして、図書館を目指しました。
 「あのおじいちゃん、いつもここで、歩道にはみ出した自転車を、一台一台、きちんとならべてくれているの。以前はあちこちに自転車があって、車いすで駅前を通るのが一苦労だったのよ」
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 たっくんはドキンとしました。となりまちの駅に置いて来た自分の自転車のことを思い出したのです。
 「いつだったかな。目の見えないおばあちゃんが、白いつえで前の方に障害物がないか確かめながら、点字ブロックの上を歩いて来たの。ところが、ブロックの上に自転車が置かれていて、道が分からなくなってしまったの。そのとき、ベンチで休んでいたあのおじいちゃんが、手を引いて駅まで連れて行ってあげたのよ。それから、いつも駅前で、自転車を整理しているおじいちゃんを見かけるようになったの。今は、おじいちゃんのおかげで、車いすでも安心して通れるようになったのよ」
 『止まったところに、ポンとおいてきたぼくの自転車。それが、通る人たちにこんな迷わくをかけていたんだ』
たっくんは、胸がチクッと痛くなりました。
 あのおじいちゃんの、やさしい笑顔と、もくもくと働く後ろすがたが目に焼きついて、たっくんの心からはなれなかったのでした。

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