第3章 こんな時、こうしよう 2 来訪時の配慮 (1)窓口・受付での配慮 ①来訪時 ア 全般 入口や受付付近で困っていそうなかたを見かけたら「何かお手伝いすることはありますか?」などと積極的に声掛けや筆談による提示をします。なお、声掛けを行う際は介添者ではなく、本人に対して行います。 イ 視覚障がいのあるかた 職員であることを名乗った上で、周りの状況を具体的にわかりやすく伝えます。 ウ 聴覚障がいのあるかた 手話や身振り、筆談などで話しかけましょう。 エ 盲ろうのかた アナウンスが聞こえなかったり、案内表示が見えないために、周りの状況を把握できないことがあります。何か不安そうな顔をしていたり、周囲の様子を伺っているときは、本人の正面まで来て、肩か腕に触れて声を掛けます。 もし、通じない場合は、手を取って手のひらに文字を書いてみてください。 オ 知的障がいのあるかた 戸惑っているかたや、不安がっているかたにはゆっくりと時間をかけて、やさしい口調で話しかけましょう。 ②誘導 ア 視覚障がいのあるかた まず、どのように介助すればよいか聞いてください。基本は、援助者の腕や肩をつかんでもらい、歩く速度を相手にあわせ、援助者が半歩先に立って歩きます。段差や階段の前では、いったん止まり「下りの段差です」「上り階段です」などと伝えます。 別れる際は安全な場所で、本人の立っている場所と向いている方向を伝えてください。 イ 盲ろうのかた まったく見えないかただけではなく、見えにくさを抱える人たちや、暗くなると見えにくくなる人たちにも介助が必要なこともあります。状況に応じて、本人に確認しましょう。 ③待合室・順番待ちなど ア 視覚障がいのあるかた 周囲の様子を具体的にわかりやすく伝えます。手続き等で待つ必要がある場合は、あらかじめおおよその待ち時間を伝え、いす等に案内しましょう。 また、順番が来た際にはそのことを伝えます。 イ 聴覚障がいのあるかた お互いが可能なコミュニケーション方法を確認し、要件を伺います。呼び出しの音などが聞こえない人には、どのような方法で知らせるか(電光掲示板、番号を掲げる、直接呼びに行く、振動式呼び出し器等)をあらかじめ説明します。 ウ 盲ろうのかた 名前を呼ばれたとき、聞こえなかったり、どこへ行けばよいか分からないことがあります。必ずそばまでいって、肩か腕に触れて注意を促してから、正面に顔を向けて名前を呼びます。もし通じない場合は、手を取って手のひらに文字を書いてみてください。 エ 知的障がいのあるかた 予定がわからないと不安になるかたや、待つのが苦手なかたもいるので、可能であれば具体的にあらかじめおよその待ち時間や応対できる時間などを伝えましょう。 オ 発達障がいのあるかた 視聴覚などの感覚が過敏な場合があります。周りの話し声が苦痛になる場合がありますので、周りに人がいない場所があれば案内します。 カ 精神障がいのあるかた 空調等の音に敏感なかたや、人の視線が気になるかたもいるので、可能であれば別室を用意するなどの配慮をします。 ④コミュニケーションのポイント ア 環境を整える 障がい特性によっては、カウンター越しではなく、できるだけ静かな場所で個別に応対することが望ましい場合などもあります。 また、車いすを使用するかたには、立ったままではなく、同じ目の高さになるよう応対しましょう。 なお、説明に時間を要する窓口などでは、補聴器等で聞き取りやすいよう、ヒアリングループ(磁気ループ)の設置を検討します。 イ 視覚障がいのあるかた 視覚障がいのあるかたが多く訪問する機関では、弱視のかたが自ら読み書きできるよう、拡大読書器、拡大鏡、老眼鏡、手元を照らす照明器具などを常備しましょう。 ウ 聴覚障がいのあるかた 筆談のための器具を備え、環境を整えます。 《筆談のポイント》 ・誰にでも理解しやすいよう、文章は短く簡潔に書きます。 ・記号や図を用いて表現を明確にします。 ・相手が弱視の盲ろうのかたなどの場合には、視野や視力等に応じて、見やすい大さ、太さ等で書くよう 配慮が必要です。 エ 発達障がいのあるかた 初めてのことに極度の緊張があるかたもいますので、強引に接触することは避け、本人が拒否した場合には無理強いしないようにします。 (2)対話・面談・手続きの際の配慮 ①対話・面談  ア 視覚障がいのあるかた 応対している人が誰であるかがわかるよう、同席者も含めて名前を名乗り、離席したり、新たに人が加わる際にはその旨を伝えます。また、物の位置を変えたときにはそのことを伝えます。 書類の読み上げの際は正確な情報を伝えるため、読み手の判断で要約するなど省略しないでください。 イ 聴覚障がいのあるかた あらかじめ、意思疎通支援者(手話通訳者、要約筆記者等)による情報保障の申し出があった場合は手配します。 なお、急にらい庁された場合や、本人の希望する意思疎通手段がわからないときには、まず筆談で方法を確認します。音声で対話する際は、ゆっくり、はっきり、口元が見えるように対面で話をします(マスクをつけている場合は可能な限り外します)。 また、内容が正しく伝わっているか確認し、重要な点は紙に書くなどの方法も併用します。 ウ 知的障がいのあるかた 知的障がいのあるかたには、ゆとりを持って、穏やかな口調で話しかけますが、相手の年齢に応じた言葉を使います。伝えたいことを明確にし、短い文章でゆっくり、丁寧に説明します。専門用語は避け、一般的なわかりやすい言葉で、できるだけ具体的に説明します。 一度に多くのことを伝えようとせず、簡潔に話します。状況によっては、筆談、絵や写真、図、コミュニケーションボード等を用いたり、身振りを交えるなどの工夫をすることも必要です。 氏名の読み方は必ず確認してください。何通りかの読み方がある氏名の人の場合、違った読み方をされると自分のことだと気がつかず、返事ができない場合もあります。 エ 発達障がいのあるかた お願いや指示をする場合、説明をする場合はできるだけ具体的に伝えます。 絵や写真を使って説明したり、短い文で、一つずつ順を追って、具体的に示されると、理解しやすくなります。 また、読むことが苦手なかたに文書を用いて説明する際は、物差しをあてるなどして、読む部分を明確にするようにします。 オ 精神障がいのあるかた 話の内容を頭から否定したり、安易に同調しないようにしましょう。幻覚や妄想、つじつまが合わない、本題と関係のないと思われる話であっても、内容の正否の判断を急がず、まずは耳を傾けます。 話を聞き、落ち着く様子が見受けられたら、話題の転換を図ってみるようにします。 説明は要領よく短時間で行うよう心掛けます。長時間話していると障がいのあるかたの緊張や疲労、いらだちに繋がることもあり、一休みして気分転換するよう促したり、日を改めたりすることが有効な場合もあります。 また、障がいのあるかたが、泣き出したり、怒り出したり、笑いが止まらなくなったりする場合も、基本的にはゆっくりと時間を掛けて、本人が落ち着くのを待つようにします。怒り出した原因に心当たりがあればすぐに詫び、心当たりがないときも、誠意を持って応対します。 意思疎通がしづらいからといっていい加減な応対をしないようにしましょう。 ② 手続き ア 視覚障がいのあるかた 必要に応じて必要な箇所や希望箇所を読み上げます。読みかたとしては、まず目次や全体の構成を説明し、その後に必要な箇所を読みます。その際は、要点をまとめるのではなく、原文をそのまま読み上げます。 代筆をした場合には、その内容を読み上げ、内容を確認してもらいます。 イ 知的障がいのあるかた ゆっくりはっきり、聞き取りやすく伝える工夫をしましょう。相手の様子を見て、よりわかりやすい言葉に言い換える工夫をしてください。 書類の記入については、本人に確認し、必要に応じて代筆するか見本を示すなどの支援をしますが、内容の誘導にならないよう じゅうぶん注意しましょう。 文書を交付する際などは、可能であれば平易な文章にし、漢字にはルビ(ふりがな)を振ります。 (3)案内・表示における配慮 ①全般 障がいのあるかたに対応した設備(特にトイレやエレベーター、駐車場)が来館者にわかりやすく伝わるよう、施設案内の内容の充実や表示の設備に努めるとともに、ウェブサイト等を通じて対応設備や案内の情報を提供します。 なお、点検等で設備が使用できない場合は、事前の告知に努め、代替手段の情報も提供するようにします。 ②視覚障がいのあるかた 視覚障がいのあるかたにも、現在地や行き先が分かるよう、音声案内をしたり、建物の案内表示や手すり等に点字をつけるほか、触地図の整備を検討します。 また、案内表示は弱視、色弱のかたにも見えやすいよう、大きさ、位置に配慮し、カラーユニバーサルデザインの観点から色づかいにも留意しましょう。 建物の案内表示や触地図は常に最新の情報に更新し、利用者が迷わないようにします。特に、点字が併記してある場合には点字も同様に更新しましょう。案内表示を設計する際には更新のしやすさや費用も考慮することが望ましいです。 来館者向けにタッチパネル式機器等を設置・提供する際は、視覚障がいのあるかたにでもテンキーや音声などで操作できるようにするか、有人窓口や案内係など、他の手段も利用できるように配慮します。 ③知的障がいのあるかた、発達障がいのあるかた 必要に応じて、案内にふりがなをつける、図や記号、絵を併用するなど、知的障がいのあるかたなどへの配慮を行います。また、これらの配慮は読み書きが苦手なかたや、日本語に不慣れな外国人などに対しても役立ちます。