第2章 障がいの特性と必要な配慮の基本 2 聴覚障がい 聴覚障がいは「聞くこと」についての障がいです。 先天的にまったく聞こえないかた、聞こえにくいかたや、 後天的に聴力を失った(失聴)かた、聞こえにくくなった(難聴)かたなど障がいの程度や状態は様々であり、 必要とされる配慮やコミュニケーションの方法も人によって異なり、手話ができないかたや筆談での理解が困難なかたもいます。 聞こえかたやこれまでの生活によって、コミュニケーション方法が異なり、どれか一つの方法だけを使うのではなく、 状況に応じていくつかの方法を組み合わせる場合もあります。 補聴器を使用しているかたなどには、言葉を聞き取れるかた、音が聞こえるだけで言葉は聞き取れないかたがいます。 障がいの特性 ろう 聴覚障がいのあるかたのうち、手話でコミュニケーションを取って日常生活を送る人々です。 人は物事を考えたりイメージするときに、無意識に言語を使っており、ろう者が物事を考えるときには、手話言語でイメージします。 また、手話を使っているかたの中には、日本語の読み書きや音声で話すことが苦手なかたもいます。 中途失聴 聴覚を活用して生活していたかたが、事故や病気などにより後天的に聴力を失った場合のことをいいます。 聞こえなくなってからも、引き続きはつわできるかたが多く、 筆談や要約筆記等を活用した文字によるコミュニケーションで情報を取得するかた、音声認識を活用するかた、 手話を習得するかたなど様々です。 難聴 周囲の状況や音質などにより、人によって聞こえかたが違い、音や言葉が聞こえにくい障がいです。 補聴器を使用しているかたや人工内耳を装用しているかたもいます。 難聴のかたの多くは音声で会話をしますが、補聴器などを使用しても完全に聞こえるわけではないため文字情報が必要です。 意思疎通の手段とポイント 手話 手話は特定の意味、概念をシュシ、表情などにより表現する独自の語彙や文法体系を持つ言語です。 身振りやジェスチャーではありません。 なお、国や地域によって使われている音声言語が異なるように、手話も国や地域によって異なります。 筆談 紙と筆記具や筆談具、タブレット端末などを利用して、文字を書いてコミュニケーションを取る方法です。 筆記具などがないときには手のひらに文字を書いたり、空書きする方法もあります。 こうわ・どくわ 聴覚障がいのあるかたが話し手の口の形を読み取る方法です。 口の動きがわかるよう正面からはっきりゆっくり話すことが必要です。 要約筆記 話の内容や会議の進行・講演の内容などを要約し、その場で文字情報として伝える方法です。 手書きとパソコンなどの手法があります。 技術を習得した要約筆記者が行うもので、筆談とは異なります。 音声認識 話し言葉などの音声をコンピュータなどに認識させて、音声を文字に変換する方法です。 スマートフォンやパソコンなどの機器を使用します。 配慮のポイント 外見ではわかりにくい 聴覚障がいは外見ではわかりにくい障がいのため、周囲に気付いてもらえないことがあります。 特に難聴者、中途失聴者の場合は発声・発語できるかたも多く「挨拶をしたのに無視された」など誤解されることなどもあります。 コミュニケーションの方法は様々 音声での会話のほか、手話、指文字、筆談、こうわなど、必要とするコミュニケーションの方法には個人差があります。 これらの中の複数の方法を組み合わせてコミュニケーションをする人もいます。 会話するときには 会話する準備を整えるため、急に話し始めず、注意を促してから話しましょう。 口元の形や表情はことばを理解するための大切な情報です。できるだけ目を合わせて話をしましょう。 緊急時には 緊急時や災害時もアナウンスなどの音声情報には気がつきません。 聴覚障がいのあるかただとわかった場合には文字表示やイラスト、手話など見て分かる方法で伝えましょう。 当事者・支援者からのメッセージ (ろう者の立場から) ろう者は聞こえないから筆談で充分通じると思われるかたが多いですが、ろう者の言語は手話です。 手話が広まれば、ろう者の社会参加も広がります。社会参加の基本は人と人がつながることです。 手話で人と人がつながる社会が、ろう者の願いです。 (中途失聴者の立場から) 突発性難聴などで聴力が低下することは誰にでもあり得ることです。  補聴器などによる補聴手段の確保のほか、いつでもどこでも文字情報のある社会が、 難聴者とのコミュニケーション支援になります。気軽に筆談してください。 スマートフォンやタブレットなどを使用した音声認識アプリも活用してください。 (中途失聴者支援者の立場から) 中途失聴者・難聴者は「話せるが聞こえない・聞き取りにくい」というかたが多いので、 聞こえるかたからの歩み寄り(筆談等の配慮)で、心も楽になります。 口元を見ながら聞いているかたもいますので、会話のときは口元がはっきり見えるような配慮をお願いします。 相談・問合せ先 公益社団法人 北海道ろうあ連盟 北海道中途難失聴者協会 全国要約筆記問題研究会北海道ブロック