平成23年度北海道科学技術賞受賞者の功績の概要



 
東京大学医科学研究所病院長・教授
  今 井 浩 三  様
【功績名】
 抗体と免疫細胞による癌の先端医療開発
【功績の概要】
 氏は、NIH博士研究員として留学して以来、一貫して癌細胞上の分子に対するモノクローナル抗体を作製し、約30年にわたり臨床応用を目指して研究を進めて来た。

その結果、抗体と抗がん剤結合物の新しい薬剤の開発に貢献し、悪性黒色腫に対する抗体に同位元素を標識して体内診断薬を開発し、昭和58年に日本で最初に癌患者に使用した。

 昭和60年、英国ケンブリッジ大学MRC研究所において、免疫細胞と癌細胞に反応する二重特異性抗体の作製に世界で最初に成功し、最近は肝癌細胞に対する二重特異性抗体の作製にも成功し、これらの抗体は、副作用が出ないようにヒト型抗体として大量生産に入っており、特許も取得している。

 さらに消化器癌に対する高い親和性を有する抗体を作製し、この抗原分子が免疫細胞を難治性の癌局所に運ぶという方法の開発につながり、また、癌細胞をアポトーシスに導く抗体の樹立に成功し、難治性の消化器癌治療に応用するべく、特許を取得した。

 また、本研究の成果として、新しい先端医療を切り開くことに貢献し、特に昭和58年に、わが国で初めての抗体を使用した体内診断に成功し、その後の白血病等の抗体治療の嚆矢となった。

 また、現在でも完治が極めて困難な胆道癌、特に北海道に多い膵臓癌、肝癌等の最先端治療を目指し、免疫系細胞を癌局所に集める方策に成功している。

 今後北海道において「抗体製造工場」により大量に作製され、治験に入ることにより、本道産業、道民生活の向上に著しい貢献が期待できる。特に本道でも、全死亡の約4割を占める癌に罹患する患者の「生活の質」を高めることに著しく貢献する。

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北海道大学遺伝子病制御研究所教授
  上 出 利 光  様
【功績名】
 独創的基礎医学研究成果の創薬開発事業への展開と産学官連携による本道経済の活性化
【功績の概要】

 近年の生命医科学研究の進歩によるバイオ医薬が、難治性炎症性疾患に対し大きな治療効果を発揮しているが、その一方で、不応答患者群の存在や結核等感染症の再活性化や悪性腫瘍の発生など副作用も問題になっている。
 氏は、病巣の組織微少環境に存在する分子群の中にオステオポンチン(OPN)等の難治性炎症性疾患の病態に深く係わる分子群が存在することを明らかにした。この成果により、世界的権威あるゴードン会議を始め、多くの国際会議で招聘講演を行い、昨年、日本病理学会からその功績により病理学会賞を受賞している。
 
また、当該研究領域の若手育成にも熱心に取組み、我が国のOPN研究会を10数年にわたり主催し、多くの若手共同研究者の育成を行ってきている。
 
さらに、OPNやその受容体が関節リウマチ等の難治性炎症性疾患や癌の治療標的であるとの独創的研究成果を元に将来医薬となる阻害抗体等の開発を行い、自ら北大発創薬開発型ベンチャーを興し国内製薬会社と共同して抗体医薬への臨床開発研究を進めつつ、企業による寄附講座(マトリックスメディスン研究部門)開設も実現させ産学連携による道内経済活性化にも貢献した。
 
また、国内製薬会社によりOPNの受容体に対する抗体医薬の臨床開発研究が進行、他の道外企業においては、道内に動物飼育施設を有する研究施設を建設し、新たな地元雇用を生み、地域振興に貢献している。
 
本年9月からは、北海道大学遺伝子病制御研究所に、本道の代表企業である雪印メグミルク会社による新たな寄附講座の開設に尽力され、道内第一次産品として重要な乳製品の腸内細菌および免疫系に与える効果の共同研究を開始する。この研究成果による乳製品の付加価値向上は、本道産業の振興と経済発展に大きく貢献することが期待できる。

 

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地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部
  水稲品種開発グループ  様
【功績名】
 極良食味米品種「ゆめぴりか」、「ななつぼし」および「ふっくりんこ」の開発
【功績の概要】
 当団体は、昭和55年から「優良米早期開発試験」を開始し、北海道の食味向上を目的にその総力を結集し、現在、通算31年目のプロジェクトとして継続中である。

 この間、「ゆきひかり」(昭和59年)、「きらら397」(昭和63年)、「ほしのゆめ」(平成8年)をはじめ、多数の品種(25品種)が育成され、食味評価は着実に向上し、本州ブランド米に並ぶ評価を得るまでになった。

 特に近年育成された「ゆめぴりか」(平成20年)と「ななつぼし」(平成13年)は日本穀物検定協会の食味ランキングで最高の「特A」にランクされ、「ふっくりんこ」(平成15年)は、道南地域に適応した地域ブランドとして定着し、北海道米の食味評価向上に大きく貢献した。

近年、米の食味・品質の高位平準化の取組みや販売促進運動の展開により、これら極良食味米3品種の販売量は着実に伸びており、従来の良食味米「きらら397」と「ほしのゆめ」とともに、北海道米の販売向上に大きく貢献している。

北海道米の道内食率は、10数年前には50%以下と低迷していたが、関係者の努力と新たな品種効果により、近年、大幅に向上している。また、食味特性の改良や関係機関などによる品質安定生産と販売促進の取組みにより、北海道米の位置づけは大きく向上し、特に極良食味米品種開発の効果は非常に高く、経済的な貢献度はきわめて高い。

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