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ホーム > 総合政策部 > 地域創生局地域戦略課 >  北海道創生ジャーナル「創る」第4号キーパーソンに聞く

北海道の分類: 行政・政策・税 > 北海道の総合政策 > その他の総合的な政策

最終更新日:2017年10月06日(金)

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第4回キーパーソンに聞く

一般社団法人 地域研究工房 代表理事 小磯 修二 氏(前釧路公立大学 学長)

創造的で大胆な発想は中央から離れた地方でこそ生まれる。   

 -今回は、北海道創生協議会の委員であり、幅広い分野において実践的な地域研究プロジェクトを実施されている前釧路公立大学の学長で地域政策プランナーの小磯修二先生にお話しを伺いました。

Mr.Koiso

-本道の地域創生の取組について、どう評価されていますか。また、今後どのようなことに留意すべきと考えますか。

■国の取組について

 国が進めてきた地方創生の取組については、地域が人口減少問題ということを真剣に考える一つの契機にはなったと考えます。また、若者が出生率の低い東京圏に過度に集中することが、結果的に出生率の低下につながり、人口減少の負のスパイラルをもたらしているという東京一極集中構造に対し、国の政策として向き合うということが、今回の地方創生の大きな意味だと感じています。これまで私自身が関わってきた国土計画や北海道総合開発計画などの国土政策のテーマが、長期的な将来を見据えた国づくり、そのプランニングであったということもあり、今回の地方創生という政策の中で、東京一極集中構造の是正が提起されたことに対する個人的な期待は非常に大きいものでした。ただ残念ながら、東京一極集中構造の是正に向けた骨太の政策というのは、今回の地方創生の中ではなかなか示されなかったのではないかと思います。政府の地方移転など、形としては出てきましたが、実体の政策としては目に見えるものはほとんどなかった。ですから、その部分については極めて残念に感じました。

 このことを、なぜあえて申し上げるかというと、北海道では東日本大震災を受けて、速やかにバックアップ拠点構想を作成しました。私も有識者会議の座長として関わりましたが、地方からの大事な政策提起でした。もし、東京都に直下型地震を含め大規模な災害が起こったら、日本の国そのものが壊滅してしまうくらいの懸念があります。そういう意味では、やはり今の一極集中構造は良くない。そこで北海道が果たすべき役割は多々あるのではないかと思います。一極集中構造の是正に向けた北海道の提案というのが、バックアップ拠点構想であって、それを受けて全国に先駆けて策定したのが国土強靱化計画の地域計画「北海道強靱化計画」です。色々な意味で東京一極集中構造を是正していくための北海道としての主張、政策メッセージとなっており、そのような中で、地方創生の流れがきたと。ですから、国にはこういった脈絡の中で地方創生というものを展開して欲しかったと思っています。この部分は残された課題として、今後につなげていくという気持ちを我々北海道が持っておくべきだと考えます。

■道の取組について

 北海道庁の地方創生の取組には、当初から関わってきましたが、今振り返ってみると、国のまち・ひと・しごと創生本部からのメッセージが出される前から、日本創生会議の提言で色々な議論が巻き起こった際、いち早く人口減少問題に向き合う議論を始めたのが北海道です。人口減少問題の有識者会議という形で始まり、私も座長として参加させていただきましたが、大変良い議論ができたと思います。一つは、人口減少の状況を地域別、市町村別に丁寧に分析を進めた結果、意外と地方部で出生率が高い地域がある。その要因は何なのかということを分析し、それを政策に結びつけていくという議論。もう一つが、産業についての議論。人口減少への対策は、かなりの部分が国レベルの政策事項であるという中、地方で何ができるのかといった場合、力強い産業づくりと、そこから生み出される雇用機会が必要だという内容です。それが人口減少に向き合う地域の政策としては大事だということが、当初の段階で出されたのは非常に大事なことだったと思います。北海道の総合戦略もその主旨を踏まえた内容となっています。このような部分はしっかりと伝えておくべきことだと感じています。

 ■市町村の取組について

 私は、北海道大学の研究者の方と人口減少問題を考える研究会活動をしていますが、そこで、今回の地方創生に実際に向き合った市町村の担当者の方にアンケート調査を実施しました。9割近い市町村から回答を得たのですが、「人口減少問題というものを考える一つの良い機会となった」という声が多くありました。また、「あまりにも事務に忙殺された」という声もありました。当初、国の役割としては、伴走的に支援していくというメッセージでしたが、結果をみると、細かいところへの国の指導が入ってきて、特に交付金に関する事務については繁雑であったというものです。反面、そのような声がある一方で、「国に自分たちの声が直接届く機会にもなった」という回答も多くありました。こうした点からは、北海道庁という都道府県レベルの自治体が、基礎的自治体が実際に総合戦略を推進していく中で、どのような形で関わっていけるかということが、これからの政策として、一つの残されたテーマかと思います。

■民間の取組について   

 戦後、地方の活性化のための地域政策というのは、色々な形で展開されてきました。その中で、大事な脈絡というのは、市場経済の担い手である民間企業の力をしっかりと活かしながら、地域の活性化を進めていくということです。地方創生の議論の中で、その部分がどうだったのかと見ていくと、私自身は、必ずしもこれまでは民間の力を十分活かせてはいなかったように感じています。民間の力を実際に出すインセティブというのは、民間がもっている資金力や情報力を形として実践していくことにあります。支援の輪は広がり、協議会などへ参加する企業は増えましたが、これからは実践面で、資金力や情報力などの民間の活力を活かしていくことが重要なテーマでしょう。そういった面では、国の企業版ふるさと納税制度に期待をしていましたが、制度の縛りが厳しいということもあって、なかなか使われていないということが残念な点です。今後の活用に期待しています。

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 全国的に人口減少と東京への一極集中が問題となっており、北海道においても、道全体の人口減少とともに、札幌への一極集中が大きな課題となっています。

 市場経済だけに任せておけば東京や札幌への一極集中は必然です。それを是正していくのが地域政策、国土政策です。地方創生もそこに主眼を置かなければいけません。戦後、この問題は常にあって、世界が目を見張る戦後の高度経済成長を進めた60年代、70年代のあの時期においても、それを担っていく太平洋ベルト地帯に地方から労働力として若者がどんどん流出していき、過疎・過密問題が生じました。実はこの問題を解決していくために出てきた手法が全国総合開発計画です。長期的な総合開発計画によって、それを解決していこうという手法です。その後も色々な形で日本の国の問題として提起されてきて、少なくとも20世紀の間は大学や大きな企業、工場は大都市に作ってはいけないという法律もありました。ところが、20世紀の最終、21世紀になって構造改革があり、市場の力を活かして国を活性化していくという流れとなりました。これは、すごく大事な考え方ではありますが、結果的に、一極集中した構造の中で、企業なり人口の地方への分散政策というのは次第に弱くなってきました。これはバランスの問題ではあるのですが、20世紀にあったバランスのとれた活性化を図っていこうとする政策が次第に弱くなってきているということについて、今の我々がしっかりと認識することが大事であると思っています。

 その構造は各地域の中でも起きています。市場のメカニズムでいくと集積するところでは、サービス水準は上がり、魅力も増します。放っておくと、そういう所に、どんどん人と企業は集中します。それをただ放置し、市場メカニズムだけで良い国づくり、地域づくりができるかというと、決してそうではありません。しっかりと分散させていかなければなりません。

 こうした問題を解決していくには、長期的なビジョンなり指針を持った政策が必要です。将来どういうところを目指すのかということを行政体だけでなく、民間も住民も含めて共有し、みんなで一緒にやりましょうという機運を高めることが必要です。それがなければ、東京に色々な機能があったほうが効率的だとなってしまうのではないでしょうか。北海道においても、どこか一箇所に置くとなると札幌ということになるのではないでしょうか。それが積み上がっていくと、集積構造を目指してしまう。それによるマイナス。いわゆる経済学でいう外部不経済です。それがもたらすものを政策として見極めていくのが政策マンとしては大事なのではないでしょうか。短期的な視野での施策が中心となっている中で、より長期的なビジョンなり総合計画なりを政策の軸に据えていくということがこれからは大事です。

 

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-これまでの大学でのご経験を踏まえ、地域における大学の役割について、どのようにお考えですか?

 私は国の形を創り上げていく中で、若い人達が学ぶ高等教育の場は地方にあるべきだと思っています。日本の場合、人口の約11%が東京都に暮らしています。そして日本の大学生の26%が東京都にいます。少なくとも先進国の中では、このような構造となっている国はないと思います。この一極集中の中、大学が首都機能に付随するものであれば、集中圏に所在する必然性はあると思いますが、高等教育というのは、ゆとりのある環境の中で将来どうするか、社会とは何かを学ぶ場です。そういう高等教育の機能こそ地方が受け持つべき役割であって、高等教育機能というものをしっかり地方に分散させていくという政策が必要です。ただ、そういった政策が力強く展開されていない現状の中で重要なことは、今、地方にある大学をしっかり育てていくということです。地方の大学の機能を高め、そこを良い意味でこれからの地方分散の受け皿にしていくという考え方があっても良いのではないかと思います。北海道の場合、日本の人口における比率は4%となりますが、大学生の比率は3%となっており、人口比からみても大学生の数は少なくなっています。少なくとも全国の7~8%の大学生は北海道で受けられますよというくらいの北海道の地域戦略があっても良いのではないかと私は考えます。また、北海道はそれに見合うだけの魅力と適性のある地域だと思います。

 私自身、釧路公立大学に13年間奉職しましたが、釧路市における釧路公立大学の意味というのは非常に大きいものがあります。それは人口17万人台の釧路市の中に1300人の 18歳から22歳の若者を常に集める装置なっているからです。しかも学生は道外、域外から集まってきます。そこで最低4年間、釧路の地で青春時代を過ごし、若者がそこで育つという意味を考える必要があります。これは、「地方に大学があるから外にいかなくてもそこで学べる。そこで学んだ学生がそこで就職すれば良い」といった狭い見方ではなくて、大学が持つ機能というのはもっと大きいものがある。そういう大学の役割というものをこれからの地方創生というテーマの中でも、しっかりと意識して、維持し、守り、また外から持ってくるなど、色々な形で地域活性化と大学をテーマとして考えていくことが大事だと思います。

 私は昨年まで、北海道大学公共政策大学院で教えていましたが、その中で、地方に関心がある若者が増えてきたと感じました。昨年、オホーツクの津別町で、地方創生の政策を募集するコンペを実施しており、これに教え子が応募したところ、特別賞を受賞しました。それが縁で、賞をとった学生が中心となって、HALCC(ハルク)という学生組織を立ち上げ、津別町でフィールドワークを行い、これからの津別町の取組について、学生の目から見たアイディア、提案をするという取組をしました。この取組は今年も継続することとしていますが、参加した学生からは、「これまで、こういう経験がなかったので、地方に向き合うことがなかった。自分の就職先は大企業であり東京で就職することを前提として今後の人生を考えていたが、地方で活動するという醍醐味に気付けた。北海道の中で自分の想いを叶えてくれるような企業があるのであれば探してみたい」という感想が寄せられました。若い方達に地方に関心を持ってもらうことの大切さを改めて感じると同時に、大学の役割としても再認識しました。

HALCC

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北海道の地域創生を進めるためには、何が一番大事だとお考えですか。

 行政だけでなく、民間企業を含めて、そこに暮らす人々みんなが、地域を活性化させるために自分達が何をすることができるのか真剣に考える意欲、モチベーションの醸成というのが一番大事なのではないでしょうか。これは私自身、経済協力で海外の発展途上国や貧困地域の開発問題に関わっていく中でも感じることです。

 では、そのために北海道庁をはじめ、各自治体が何をしていかなければならないのかというと、政策力を高めていくということが大事だと思います。地方自治体は、単に目の前にある市民に対する行政サービスを提供するだけでなく、その地域の将来の事を真剣に考え、その方向に沿った取組は何かを考え、自ら実践するとともに、その必要性を発信していくことが求められます。その役割は非常に大きいものだと思います。自分が関わっている地域はどういう地域なのか、地域の力、ポテンシャル、問題点など地域の情報を徹底的に収集し、それを科学的にしっかりと分析し、そこからより説得力のある政策というものを推し進めていくということが、これからの地方創生を進める上で大事な部分です。

 

   

-市町村の方や道内各地で奮闘している皆さんへのメッセージをお願いします。

 社会や世の中の変化を支えていくのは、イノベーションです。イノベーションというのは、技術的な面で捉えられることが多いですが、社会を変革する創造的な創意工夫であり知恵でもあります。では、それがどこから生まれるかというと、地方でこそ創造的な感性や知恵が生まれるのだと思います。大都市では、優秀な人材が集積することで、そこで研ぎ澄まされた創造性が育まれるという面もありますが、あまりにも集権が進みすぎるとそこで思考が停止してしまうという状況が多分にあるのではないかと思います。そういう中での地方の役割がある。歴史的に見ても、創造的で大胆な発想というのは、中央から離れた地方で生まれてきました。明治維新を成就させたのは、薩摩、長州、土佐などの辺境の地からの革新的なエネルギーです。中央にはない感性が地方では醸成させることができるのです。それが地方の魅力であり醍醐味だということを自覚しながら取り組んでほしいと思っています。

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