(仮称)石狩コミュニティウインドファーム事業環境影響評価準備書に係る知事意見

○環境影響評価準備書に係る知事意見 (平成27年11月24日) 

1 総括的事項
(1)
対象事業実施区域が位置する石狩湾新港工業団地は、工業用地として造成され、地域の経済的な価値を創出し、持続的な発展を続けるため、企業立地に影響があってはならない重要な場所とされている。
 本事業は、約165.5haの対象事業実施区域に、発電出力20,000kW、単機出力最大3,300kWの風力発電設備を最大9基設置する計画であるが、区域及びその周辺には、風力発電設備設置予定位置のごく近傍も含め事業場が多数立地しているほか、区域の周辺には多数の住宅が存在しており、本事業の実施による低周波音及び超低周波音により、周辺住民及び近隣事業場就業者の健康への影響が相当程度に推定される。また、風車の影によるシャドーフリッカーにより近隣事業場就業者に不快感などの影響を及ぼすおそれが高い。
 このことから、本事業に関しては、対象事業実施区域の位置の変更、規模の大幅な縮小など、人の健康及び生活環境に影響を及ぼすおそれのない計画への見直しが必要である。
(2)本準備書は、「風力発電事業に係る環境影響評価実施要綱(平成24年6月6日、経済産業省資源エネルギー庁)」による経過措置が適用された環境影響評価方法書に基づき環境影響評価の結果や環境保全措置等について取りまとめられたものであるが、2の個別的事項で指摘したとおり、環境評価項目に関する調査、予測及び評価が不十分かつ不適切なこと、環境影響の回避又は低減を図るための環境保全措置に関する検討過程が明らかにされていないこと、グラフの誤掲載等の不備が多数見られることなど、上記実施要綱が適用された事業であることを考慮しても、十分な内容ではないほか、一般に分かりにくく、信頼に足る図書となっていない。
 また、地元市から本事業計画の環境保全措置等に関する住民等との相互理解が得られていないという懸念が示されている。
 今後の事業計画の見直しにあたっては、これらの点についても十分配慮して取り組む必要がある。
 
2 個別的事項
(1)騒音及び超低周波音

 対象事業実施区域及びその周辺には多数の住宅が存在し、特に、低周波音問題対応のための評価指針として環境省が提示し、一般成人における寝室の許容レベルの10パーセンタイル値とされる「心身に係る苦情に関する参照値」を超える範囲に240もの住居が存在することから、周辺住民に睡眠障害等の健康影響の生じるおそれが相当程度推定される。
 また、区域及びその周辺には風力発電設備設置予定位置のごく近傍も含め事業場が多数存在することから、就業者にめまい・ふらつき等の健康影響が生じるおそれも高い。
 さらに、このようなおそれが高いにもかかわらず、近隣事業場について、調査、予測及び評価を行っていないほか、風車の稼動により発生する騒音による苦情の大きな要因となりうる純音成分や風車に特徴的なスウィッシュ音に関して、一般に分かりにくい記載となっている。
(2)風車の影
 対象事業実施区域及びその周辺には多数の事業場が存在しており、シャドーフリッカーにより、就業者に不快感などの影響を及ぼすおそれが高い。
 また、このようなおそれが高いにもかかわらず、事業場を予測及び評価の対象外としているほか、等時間日影図の予測結果をローター直径10倍の範囲内に限定するなど適切な予測及び評価結果となっていない。
(3)動物
  対象事業実施区域のブレードの回転域の高度では、オジロワシ、オオタカ、ハヤブサ等の希少猛禽類やマガンの飛翔が確認されているにもかかわらず評価でふれていない。
 また、ブレードの回転域の高度を飛翔している鳥類については、衝突に係る予測結果が不確実性を伴うにもかかわらず、現状で得ることが可能な最新の知見等の複数の推定法の比較検討を行っていない。
 オジロワシについては、対象事業実施区域及びその周辺において、亜成鳥を含む飛翔が確認されているが、行動圏の広い動物であることに配慮した調査区域を設定しなかったことにより、調査区域に近接するオジロワシの営巣地との関連性が的確に調査されておらず、生息状況を踏まえた的確な予測及び評価が行われていない。
  対象事業実施区域及びその周辺において、区域に隣接するカシワ林を含む保安林は、鳥類やコウモリ類の採餌場や移動経路になっている可能性が高いにもかかわらず、生息環境の減少・喪失、移動阻害の影響について、予測及び評価が行われていない。
 風力発電設備の配置予定箇所の近傍において、公知の事実であるにもかかわらずエゾアカヤマアリの巣の存在を把握できていない箇所がある。
 工事の実施に伴う地下水位の変動によるキタホウネンエビの生息環境に対する影響の検討が不十分である。
(4)生態系
 ノスリの餌環境適合性の推定に当たり、MaxEntモデルを用いて解析を行っているが、解析手法の選定並びに環境要素の抽出及びその組み合わせの妥当性について、客観的な検討が不十分であることに加え、この手法への理解が不十分であることから、信頼に足る予測結果となっていない。
 また、この手法は、解析の過程が難解であるという課題があるにもかかわらず、記載内容がわかりにくく、広く住民からも環境保全上の意見を得られるようになっていない。
(5)景観
 「石狩浜海浜植物保護センター」及び「佐藤水産サーモンファクトリー店ありが塔」は、地域住民をはじめ不特定多数の眺望目的の利用が見込まれ、景観資源である「石狩砂丘」を眺望する際、本事業の風力発電設備が視野に介在することにより、重大な影響を与える可能性があるにもかかわらず、これらを主な眺望点に選定していない。
  また、主要な眺望点からの風力発電設備の視認程度の予測及び評価にあたって、圧迫感の有無だけで評価し、違和感や不快感等の観点からの調査、予測及び評価を行っていない。
 さらに、フォトモンタージュを、風力発電設備が視認しやすい条件で作成していないほか、樹林の葉の繁茂時や落葉時などの季節によって異なる影響についての予測及び評価を行っていない。
(6)累積的影響
 対象事業実施区域及びその周辺に既設の風力発電設備が存在するほか、当該区域内に他社の風力発電事業の計画が進められているが、これらを含めた累積的影響を、関係する環境要素全てについて調査、予測及び評価する必要があるにもかかわらず、騒音及び超低周波音並びに風車の影の既存風力発電設備の影響以外については、予測及び評価を行っていない。
 また、騒音及び超低周波音に係る既設の風力発電設備の影響については、既設の3機全ての定格出力の条件下での調査ではないことから、調査、予測及び評価が不十分である。
 

 

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