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ホーム > 環境生活部 > 文化局文化振興課 >  夢枕獏氏インタビュー ~縄文人の心に迫る~

北海道の分類: 教育・文化  > 文化・芸術・スポーツ > 文化財

最終更新日:2020年4月01日(水)

 北海道縄文スペシャルインタビュー   

「世界遺産登録に向けて ~縄文人の心に迫る~」 


これまでに、人気シリーズ作品「陰陽師」や「キマイラ」を手掛け、作家生活43年目を迎えた夢枕獏氏。

2018年には「縄文探検隊の記録」(共著・岡村道雄、かくまつとむ)を上梓するなど、縄文文化への造詣も深い。

今回は、夢枕氏の元を訪ね、縄文文化に興味を抱いたきっかけやその魅力、さらには俳句と縄文文化の知られざる接点などについて語っていただいた。 

  

インタビュー風景1

夢枕 獏(ゆめまくら・ばく)

1951年、神奈川県小田原市生まれ。

1977年「カエルの死」でデビューし、1984年「魔女狩り」でSF作家として注目を集める。

「上弦の月を食べる獅子」(1989年)で日本SF大賞、
「神々の山嶺(いただき)」(1997年)で柴田連三郎賞、

「大江戸釣客伝」(2011年)で泉鏡花文学賞・舟橋聖一文学賞・吉川英治文学賞を受賞。

さらに2016年、絵本「ちいさな おおきな き」(山村浩二・画)で
小学館児童出版文化賞、17年菊池寛賞、日本ミステリー文学大賞を受賞。2018年春、紫綬褒章を受章。

ペンネームである伝説の生物「獏」は、<鉄>や<悪夢>を好んで食べると云われ、武器や兵器の原料である鉄を食べる獏は、平和の象徴ともされる。

  



    聞き手 阿部 千春
 (北海道環境生活部縄文世界遺産推進室特別研究員)

        阿部特別研究員

1959年、北海道赤平市生まれ。
「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産登録推進業務をはじめ、歴史・文化を活用した観光振興やまちづくりなど、文化遺産のネットワーク構築に取り組んでいる。北海道埋蔵文化財センター、南茅部町教育委員、函館市教育委員を経て、2011年「函館市縄文文化交流センター」館長に就任。
2015年から現職。          


 ― 「縄文」に興味を持たれたきっかけは、どういうところ
                   だったのでしょうか。

 

 (夢枕)古代史一般には元々興味があったんですよ。
      インカとかいろいろと世界中のね。

小説怪しい話が多いんですね。世間では伝奇小説と呼ばれてるジャンルの物語です。
伝奇小説っていうのは、つきつめてゆくと、要するに古代の神さまは何だったのかということなんです。
怪しい宗教があったり、いろんな結社が怪しいことをしてい
たり。人々が古代にどういった神さまを信仰していたのかっていう秘密を探っていくと、江戸から平安までだんだん遡っていって、そうすると中国まで行くんですよね。
それで、最後に縄文の神さまって何だろうというところに行きついてしまう。

縄文が面白いなと思い始めたきっかけですが、小説を書きながら神さまを探す旅に出たら、その最終コーナーに縄文があった、という感じですね。多分縄文より古いのになると旧石器になるので、僕らの手に及ぶ範囲ではないし、縄文だったらできるかなと思ったのがきっかけですね。それで、縄文時代の人々が信仰していた神話をでっち上げて小説にしようと思っていたんですけど、だんだんおもしろくなってきて、今はちょっと違う手を考えているところです。もう10年以上たってまだ書いていないんだけど。

縄文の信仰というのは、全てのものに魂が宿っているというのが、やはり基本的な考え方だろうと思ってます。これはどなたと話しても反対する方はおられないですね。証拠があるのかというとないんですけど。

 

 (阿部)先生も行かれたとのことですが、函館の垣ノ島遺跡には巨大な盛土遺構があって土器とか石器とか道具を廃棄したところなんですけど、人の墓ので、単に捨てているんじゃないんですね。鹿角でつくった針も3つに折って火を焚いてから埋めるといったことをやっています。貝塚にも人の墓がありますから、人間はもちろんだけど、動物や植物、道具にも魂が宿っていると信じていたのだと思います

 

 

 (夢枕)貝塚にも人間の死体をね。あれ捨ててるんじゃなくって葬っているんですよね。
たぶん再生とかそういったものに関わりがあるような。その鹿角の鉤ってどのくらいの大きさでした?あれ使いづらいでしょう。釣りやってる人なら分かると思いますけど。   

 

 (阿部) いや、縫い針のことです

   

 (夢枕)あ、縫い針ですか。釣鉤が出たのかと思った。   

僕は、あの鹿角の釣鉤ってルアーの効果もあって、大きい鉤は投げて引っ張るだけで絶対に魚が寄ってくるんじゃないかと。  

 

 (阿部)函館の縄文センターでは体験学習で釣鉤つくりをやるんですけど、鹿角でつくると魚が寄ってくるんですよね。

              鹿角の匂いだと思うんですけど。

 

 (夢枕)僕もね、ちゃんとつくってやりましたよ。多分、昔の純情な魚は釣れたんだろうけど、今のスレたやつはどうだろうね。

 

 (阿部)隣でリールや現代的な道具でやってる人よりも
               魚が寄ってきますよ。   

 

 (夢枕)ああそうですか。何も付けない方が

 

 (阿部)いや、エサはちょっと付けますけど、付けなくても鉤自体を突っついてきますよ。

 

 (夢枕)そうか、まず色でアピールして、寄ってきたら匂いがする。でも鉤は単に道具というよりは呪具としての機能あったと思いますね。完全に利用不可能なくらいに大きいのもありますし。

 

   

   (阿部)そうした機能があったからこそ、小さな釣鉤に動物の意匠を彫刻することもあるんですね。

それに、どうしてお前こんなでかい食いついたの?ってくらいに無理無理食いついてくるんですよ。

 

 (夢枕)魚もでかい底物なんかは意地汚いから。鉤のことで言うと、ニュージーランドなどでは完全にお守りのような機能があって、鉤先がぐるぐる巻いちゃって使えそうもないやつとかありますよ、マオリが昔使ってた鉤なんかね。
それと、海幸と山幸が鉤と弓を換えてるでしょ。弓なんてもう完全に呪法の道具で
身を守るときに鳴らしたりしてるので。海の呪法と山の呪法を取り替えっこなんかした話じゃないかなと思っているんですけどね。

 

 (阿部)がずっと現代まで伝わってきてるんですよね。

 

 (夢枕)そうですね。アウトドア雑誌で仕事させてもらっていて、そこに有名なライターの方がいるんですが、彼なんかアウトドアをやりながら縄文に来ちゃった人で、自分がやってるアウトドアって結局は縄文人がやってた技術だよなっていうことに気がついて、それで何となく縄文にはまったんですね彼は。みんな自分の仕事をやってると、縄文にたどり着くみたいですね。
以前、真脇遺跡に行ったときに案内してくれた人から聞いたんですが、京都の西陣の方で、やはり僕らと同じで、西陣を織っているうちに、江戸時代はどうやって織っていたんだろう、じゃあ平安時代はどうやって織っていたんだろうなって、とうとう弥生時代から縄文に来ちゃった。縄文の布に興味があって、縄文の布をレクチャーしてもらおうと思って遺跡を訪ねたようです。   

 

 (阿部)最古の漆製品が函館の垣ノ島遺跡で出ているんですが、それは漆の糸なんですよね。植物の繊維で糸をつくって、そこにまた別の繊維をくるくると巻いて最後に漆を塗ったものですけど、一般の方から「私の持っている西陣の漆の帯同じようにつくってるのね」と聞いてびっくりしたことがあります。

 

 (夢枕)西陣の人もそういうところで「ああルーツは縄文なんだな」という風に思われたのかもしれないですね。

音楽やってる人も縄文に自然に行くんじゃないですかね。今は太鼓なんかを敲いている人もいますもんね、縄文の土器に皮を張って。笛なんかもね、穴が開いている石は縄文の笛だなんて。それが本当かどうかは分かりませんけど。みんな自分の専門分野をたどっていくと、縄文に行くんじゃないですかね。



インタビュー風景  

 

  

 (夢枕)僕の今の最先端は「俳句は縄文であるです。「縄文の神が宿らないと季語にはならない」という言い方をしてるんですが、神が宿ると言葉が季語になる。例えば外来語も今は季語になってるんです。アイスクリームとかね。これは縄文の神が宿るまでは季語に認定されてなかったんですから。

縄文の神さまのあり方って、でかい石がそこにあるだけじゃだめで、誰かがそれに気配を感じて、なんとなく神さまがいそうだね、となる。それも一人だけじゃだめで、何人かが来て、ああそうだねっていう人が増えてきて信仰の対象になっていくんだと思うんですよね。季語も全く一緒で、一人だけがアイスクリームは夏の季語だっていってもだめなんですよね。俳句を詠んでいくうちに、アイスクリームは夏の季語でいいんじゃないのっていう雰囲気ができて、なんとなくみんなが認知して、季語になるという感じなんですよ。そういう意味で言うと、縄文の神が宿ったと。あとは、山笑う」とか、もろ縄文のような季語があるんですよね。春とか初夏、木がどんどん芽吹いてくる、あの状態のことを山笑うって言うんですけど、これは本当に縄文的な季語ですよね。ど真ん中の。だから縄文の神さまは俳句に宿っている。

 

 (阿部)短い言葉の中に必ず自然が入るというところは
               縄文らしいですね。
  

 

 (夢枕)ある意味では、仏教よりも考え方としては凄いですよね。仏教って言うのは、輪廻転生があって人間は生まれ変わるんですけど、せいぜい馬とか犬とか動物くらいまでなんですよね。輪廻転生の対象が。でも縄文って言うのは植物とか石まで魂の宿るもの認識があったと思って、そういう意味では、仏教よりも自然物に分け隔てがないってところがありますよね。

 

 (阿部)最初に入ってきた仏教の教えのなかに「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」という言葉があるから、すっと日本人が受け入れたのかもしれませんね   

 

 (夢枕)空海とかいろんな人が日本に仏教を持ってきて、その後「本地垂迹説(ほんちすいじゃくせつ)」いうのが出てきて、要するに「神道の天照も仏教の大日如来も一緒だよ」っていう考え方なんですけど。大日如来がお姿を変えて現れたのが権現様とか色々あって、割と日本人になじみやすいので、すんなり入っていったんだと思います。

 

 (阿部)盛土遺構では、土器・石器等の道具類をただ捨てないで、ちゃんと火をくなどの儀式をしています。今も針供養ってありますけど、器物供養をやってるところは先進国だとあまりないんですよね。日本くらいじゃないかな。

 

 (夢枕)そうですね。日本人は割りとやりますよね。物を捨てられないときは必ずお寺か神社に行って供養してから捨てるとか。実は写真の審査をやっていたことがあって、審査したあと、写真が残るんですよ。どうしようって相談したら、それは焼いてくださいって言われました。気持ちがこもっているから捨てるんじゃなくて焼くといいですよ、と。それで捨てるんじゃなくて焼くようにしたんですけど。

 

 (阿部)手をかけた物は命がこもっているんですね。

       縄文時代は失敗した土器でもちゃんと焼いて盛土に送っているんです。   


 (夢枕)ちょっと分からないことがあるんですが、囲炉裏の周りに仮面が置かれてた例って、特に岩手県なんかで多く見られますよね。あれってどういうところで発見されてるんですか。

かまど神っていうのが東北の方を中心にしてあるんですけど、その仮面で、かまど面。あれを一個買ったんですね。縄文の火の周りにかまどの神さまっていたと思うので、世界中に、かまどの神さまはいたので、その辺に置いていたのかな。かまど神って、かまどのところに必ずお面が置いてあって、もうもろ縄文みたいな。かまど面で検索してみると、特に岩手県が多くて。あと鼻曲がり面が出てるじゃない、縄文遺跡から。神楽面で鼻の曲がったのが出てきたり、あとは翁の面でも鼻の曲がったのが、愛知の徳川美術館にあったりして、縄文が微妙に生き残ってるんじゃないかなという風に思ってるんですけど。

 

 (阿部)アイヌ文化でも、チセと言う家の中で一番位の高い神さまがアペフチカムイといって、かまどの神さまなんですよね。それと縄文時代の家を作るときも、竪穴を掘ってから炉の場所をつくるんですね。そこで火を焚いて、側に祭壇施設みたいな窪みがあるんですけど、そこに灰を入れて周りに土を盛って結界をつくることがあります。火を焚く場所は神聖だったのだと思います。

 

 (夢枕)お面を調べたいなと思って、お面の出土したところをずっと辿りながら、現代の能に縄文が生きているというところまでは行きたいんですけどね。

北海道で仮面なんて出ていないんですか?

 

 (阿部)いや、出てますよ。仮面で一番有名なのは千歳のママチ遺跡のものですね。

  

ママチ仮面  

     

      詳しくはこちら:北海道教育委員会ホームページ

  

 (夢枕)あっ、知ってます知ってます。そうだこれを忘れちゃいけないですね。これは、墓標って書いてあるんですか?

 

 (阿部)そうです。墓に入れてるんじゃなくて墓の上にあったので、おそらくは木の墓標にぶら下げていて、それがポトッと落ちたという感じで出土しています。

 

 (夢枕)これ、実際はどのくらいの大きさなんですか。

 

 (阿部)(手でサイズ(縦横20cm弱)を示しながら)
               このくらいですね。
       

  

 (夢枕)じゃあ、ちゃんと人が被れるんですね。
               ここに
が開いていますから紐で組んで。

               地図でいうと日本海側に近いところで出たんでしょうか。   

 

 (阿部)新千歳空港の近くです。

 

 (夢枕)千歳だとそんなに近くないか。なるほどね。

 

 (夢枕)(持参の資料を提示して)これは北朝鮮のもので古墳時代の頃と思うんですけど、縄文の土偶にそっくりなのあるでしょ?

 

 (阿部)ネコ顔、仮面とも言われている上黒駒(かみくろこま)土偶
               「ポーズ土偶」に似ていますね。



    上黒駒土偶(イラスト)

    ↑上黒駒土偶(山梨県) イラスト  

    
    詳しくはこちら:文化遺産オンライン(文化庁)

 

  

 (夢枕)そう猫顔の。
               これびっくりして思わず写真を撮ってきたんですけど。

 

 (夢枕)朝鮮大学の博物館にいろんなのがあるんです。これは縄文より後なんですが、そっくりでしょう?

             僕はこれもう驚いてね。似てるという以上の、もう恐ろしいですよね。

             偶然としか考えられないですけどこれは。どう考えても。こんなバカな話してるのが結構楽しいですよね。

 

 (阿部)これ、お酒飲みながらだともっと盛り上がりますよ(笑)

 

 ― 最後に北海道に向けてメッセージをお願いします。   

 

 (夢枕)北海道は飛行機に乗らないで行けるアラスカだと思っています。本当に電車で行けちゃうし、車でも行けちゃう。
アラスカに行けなくてもアラスカ体験ができる凄いところだと思います。アラスカって大変じゃないですか。
でも北海道はさっと行けてアラスカみたい。僕は両方行ったから、割と近い感じがあるんですよね。広いところに川が流れていて、まあアラスカは橋がないんですけど。そういった自然がずっと残るといいなと思ってます。石狩の方だと、丸い石を河口で拾
って割ると化石が出てくるんですよね。海の底に石炭層があったりする凄いところで、本州にはない巨大な自然がやっぱりあるので。そういうところが僕は好きですね。大事にしていってください。釣りができる環境が残ることが、自然が残ることだと思うんですよね。   

 

 (阿部)函館の大船遺跡もそうなんですけど、遺跡があるところってサケやマスが上ってくるような、凄くいい環境なんです。

 

   (夢枕)そうですよね。だいたい水がないとだめだし、北海道は水があればサケが上ってきますもんね。

    

 ― ぜひまた自然も縄文も楽しめる北海道にいらして下さい。

   どうもありがとうございました。

      

   

   

 

 

 

      


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北海道環境生活部文化局文化振興課 縄文世界遺産推進室
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