スマートデバイス表示はこちら

ホーム > 環境生活部 > 文化局文化振興課 >  北の生活文化(アイヌの人々の民具 )


最終更新日:2019年4月10日(水)


北の生活文化(アイヌの人々の民具 )


ダイジェスト・北の生活文化


第3章/北海道の民具と職人

 日常生活や生産活動の必要から製作し、使用してきた伝統的な道具が民具である。北海道には、先住民族であるアイヌの民具、移住者たちがもたらした日本各地の多様な在来民具、海外からの技術文化導入などの過程で流入した外来民具や、これらを改良し、あるいは新たに考案した北海道独自の民具があった。

アイヌの人々の民具<クアリとサラニ
photo_25 photo_26-a photo_26-b
25. 江戸末期に描かれた仕掛け弓 26-a. サラニ(吊るし編み) 26-b. サラニ(織り機編み)
 アイヌ民族が使う狩猟具の中にアイヌ語でクアリまたはアマッポと呼ばれる仕掛け弓がある。獲物の通る道に糸を張り、その糸に動物が触れると止め鉤(かぎ)が開放され、矢が放たれる仕組みで、矢じりには毒が塗られた。これは、人間が誤ってかかる恐れもあり、仕掛けが近くにあるときは目印をつけると共に、仕掛ける地域も狩猟集団によって決められた。

 このように無人でも猟ができる罠は、特にキツネなど小型獣皮の需要が伸びるに伴い、大陸から伝わり、積極的に取り入れられた道具だった可能性もある。クアリは明治時代になると、開拓使によって使用を禁止され、猟銃が貸し出されるようになった。

 サラニは編んだ袋物のことで、アイヌの人々は、ドングリやクルミなどの木の実を運んだり、アワやヒエなどの農産物を収穫、保存したりするときに利用した。サラニには吊るして作る方法と織り機を用いて作る方法がある。前者は、場所を選ばず、いつでもどこでも作ることができ、毎日の仕事に追われていた婦人たちにとってはうってつけの方法だった。後者はいつも同じ場所に台を置いていたので、家で腰を落ち着けて作られていたと考えられている。後者の一部は”みやげもの”としても流通した。

本州の在来民具と外来民具
photo_27 photo_28 photo_29
27. 大正期のスキー用具一式 28. 仙台鍬 29. 酢徳利
 北海道への移住者や出稼ぎ者と共に日本各地からもたらされた在来民具は、東北、北陸地方出身者が多いため、この地方のものが特に目立つ。

 江戸時代から明治初期に形成された渡島半島沿岸の旧和人地(松前地)や新開の魚村地帯には、津軽・南部・秋田地方の影響を強く受けた民具が多い。伊達市や当別町では、明治初期に旧仙台藩士が入植したため仙台鍬(せんだいぐわ)が使用され、旧尾張藩士が入植した八雲町では尾張鍬が使われた。また、北海道への酢の輸送容器として明治・大正期に尾道・鞆(とも)(広島県)、大阪、鳥取などで生産された酢徳利(すどっくり)が道内各地に残っているが、これは国内の商品流通が発達してきたことを示すものだ。

 北海道には比較的早くから外国の民具も流入し、明治には開拓使が欧米技術文化導入政策のもと、主にアメリカから洋式農具を買い入れたり、洋式の民具を製作した。また、ロシアからも馬橇(ばそり)などを取り入れた。外来民具にはこうした政策的なもの以外にも、洋服、靴、食器、さらにはスキーやスケートといったスポーツ用具が貿易、文化交流の進展につれて流入し、欧米文化の影響を受けた北国独自の生活文化を形成した。なお、北海道に洋風文化の大きな波が及ぶのは、第一次世界大戦後の大正後期から昭和初期にかけてである。

北海道的民具の成立
photo_30 photo_31
30. タコ足式直播器 31. 札幌駅構内での除雪作業・昭和53年
photo_33
33. もっこと背負い篭
 江戸時代から漁業がさかんな北海道では、漁村特有の民具が生まれた。例えばニシンを船から収納する場所(廊下(ろうか)、魚坪(なつぼ))へ運ぶ道具・もっこは、縄類で編んだ本州の背負(しょ)い具を基本としながら、木製に改良したものだった。木製は重い魚を運ぶのに丈夫であること、木材が豊富だったこと、ニシン漁の時期は4、5月で、背負った魚で背中がぬれると作業能率が低下し、寒さで病気にもなりかねなかったのが改良の理由だった。

 明治初期の農業は、寒冷地に適さない稲作をあきらめ、畑作を主体としていた。しかし、籾(もみ)を直接水田に蒔(ま)き、作業能率を高めた直播器(ちょくはんき)の発明などさまざまな工夫や稲の品種改良を重ねた結果、明治中期から次第に稲作が普及した。平成12年(2000)現在ではコメの収穫量が全国1位となるまでに至った。

 北海道を代表する民具には除雪具もある。古くは東北、北陸地方の、一本の木でできたへら状のコスキと呼ばれるものを使用したが、雪質が本州と異なり、さらさらしているので、雪がこぼれ落ちないように側面や後方に板を取り付けたものや、竹製の雪かきが使用された。また、箱型の雪押しも国鉄などで考案されるが、今ではスノーダンプと呼ばれるようなプラスチックやアルミニウム製の軽い除雪具が広く利用されている。

icon NEXT 次のページへ