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最終更新日:2006年2月18日(土)


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term:言葉;≪特に≫術語,用語,専門語
         
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ICF(国際生活機能分類)

 病気の分類は世界保健機関(WHO)の定めた国際疾病分類(ICD-10)に従って行われるようになりました。これに対して、障害の分類は1980年にWHOが定めた国際障害者分類(International Classication of Impairments,Disabilities and Handicaps:ICIDH)が用いられてきました。精神障害についてもこの分類の考え方が取り入れられ、わが国の精神障害福祉施策の推進に大きな役割を果たしました。
 しかし、障害者団体などから、この分類の基礎にある障害観の見直しが求められ、2001年、WHOはこの分類基準を大幅に書き換えました。それが、生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health)です。
 機能障害(Impairments)、能力障害(Disabilities)、社会的不利(Handicaaps)という分類用語も、後の二つが活動(Activities)の制限、参加(Perticipation)の制約と、より中立的な表現に代わりました。この用語の変化は、リハビリテーションの主体が専門家から障害者に置き換わったことを象徴的に示しています。 (T.I.)

IP(Identified Patient) 

家族療法特有の用語の一つに、IP(Identified Patient)という言葉があります。これは一般の「患者本人」と同じ意味です。
 しかしながら、家族療法では特有の個人に問題があるといった考え方はとらず、「問題を処理できない家族」があって、その家族の中でたまたま今、問題を表現している家族メンバーがいて、その人のことをIPと呼ぶようにしています。
 そして、特定の個人(家族メンバー)のだれか一人の症状や行動を変化させようとするのではなく、家族メンバー同士の相互関係(システム)に着目し、個人ではなくそのシステムに働きかけることによって、家族全体の変化を進めようとします。家族療法の理論的背景はシステム理論であり、それはこうしたIPという言葉一つとってみてもわかります。言い方を変えると、家族の中に悪玉をつくらないで、家族のだれも傷つかないようなゆるやかな問題解決を「家族とともに(鈴木浩二)」図ろうとするのが、家族療法の基本であるといえるでしょう。 (N.K.)

アクションメソッド

   あえて直訳すると、「(身体的な)活動を用いた(治療)技法」とでもなるのでしょうが、アクションメソッドと原語のまま用いることが多いです。身体活動という点ではダンスセラピーやリラクゼーションなども含まれるそうですが、国際的には、JL.モレノによって始められたサイコドラマ(心理劇)を基本として様々な方向に発展を遂げた演劇的要素を含む集団精神療法の技法を指すというのが一般的です。具体的には①狭義のサイコドラマ(個人の問題などを扱う即興劇)、②ソシオドラマ(社会問題などを扱う即興劇)、③ロールプレイング(ある役割を取りながら行う対人関係の練習など)、④プレイバックシアター(訓練を受けた役者が個人にとって重要なシーンを再現し、それを見る)などです。
 体を使った表現を含む治療法ですので、言葉にして出すことに抵抗があるような事柄が、体の向きや姿勢、表情、しぐさなどから突如として明らかになったりします。また、実際の場面を再現してその場で見ることができるので、視覚的にも刺激を与えることができ、いわゆるテレビ世代の人々へも効果が期待でき、深い洞察を与えることができます。さらに劇なので後悔している出来事のやり直しや、未来の問題なども扱うことができます。
 重症の精神障害を抱えている方から、心の健康に興味を持っている一般の方まで広く用いることができ、精神保健福祉の分野で新たな治療・支援技法として注目されてきています。  (M.Y.)

ACT(アクト)

  「精神障害者のための包括型地域生活支援プログラム」のことで,要するに,重い精神障害を抱える人々を病院の外でうまく暮らし続けるいけるように,みんなで支えていこうとするプログラムです。英語のAssertive Community Treatment の頭文字をとってACT(アクト)と呼ばれています。
 このACTプログラムの主な特徴や既存の精神保健サービスと異なる点を以下に挙げてみました。①対象となる患者さんは,症状の軽い患者さんではなく,重い精神障害を抱えた人になります。すなわち,これまでは症状や障害のために長期入院を余儀なくされていた人,頻回に入退院を繰り返していた人,あるいは精神科救急サービスを頻回に利用している人などです。②チームは,看護師,ソーシャルワーカー,作業療法士,職業カウンセラー,精神科医などさまざまな職種の専門家から構成されます。③提供されるサービスは,保健,医療,福祉はもちろんのこと医療的危機介入から就労支援にまで幅広く包括的です。④またこれらのサービスはシステムとして提供されるものであり,個々のスタッフの努力や良心などに依存するものではありません。⑤さらに,("Assertive"が「積極的に」という意味であるように)患者さんが実際に暮らしている中でサービスを受けることができるように積極的に訪問が行われることや,⑥危機介入には24時間・365日体制で対応することも特徴としてあげられます。
 ACTは米国で開発され各国に普及していきました。日本では,2002年度から千葉県市川市の国立精神・神経センターにおいて研究プロジェクトが始まりました。それを受けていくつかの地域においてもACTプログラムが試験的に実践され始めています。今後,これらの研究プロジェクトの結果が検証され,より日本の国情,文化,および地域精神保健システムに馴染んだ形でACTが制度化されることが期待されます。 (T.N.)

アスペルガー症候群

  H・アスペルガーが報告した自閉傾向を示す症候群ですが、知的水準は高く概ねIQ70以上です。高機能自閉症の特徴とほとんど同様の障害で、人への関心が乏しかったり、他者の感情に気づきにくいなどの社会性の障害、会話を継続する能力の障害、強いこだわりや限定された興味などの固執性とそれに基づく行動の障害があります。
 ただし、相手との言葉のキャッチボールができず自分の一方的な話で終わったり、相手の気持ちや周囲の状況の変化に応じて、柔軟に対応することが困難であり、アスペルガー症候群と高機能自閉症を厳密に区別するより、高機能広汎性発達障害として一括りで扱うのが現実的という考え方もあります(英国など)。
 学童期・思春期には奇異な存在として、いじめやからかわれの対象になりやすく孤立しがちです。社会人になってからは、複雑に変化する職場環境などへの対応困難のために挫折・失敗体験を繰り返すことが多く、そのために自己評価を下げ、抑うつ、焦燥、衝動的興奮など、神経症的状態、精神疾患的状態になることがあります。周囲からはなかなか認識されづらく、社会生活を送る上ではハンディの大きい障害です。本人は適応困難な理由が分からずに悩むことも多いので、障害の特徴を本人に説明するとともに、障害者として福祉的支援の対象として考えることも必要になります。 (K.O.)

AC(アダルトチャイルド)

 ACとはAdult Child of Alcoholics(アルコール依存症家族で育った人)、あるいはAdult Child of Dysfunctional Family(機能不全家族で育った人)の略です。
 家庭で「機能不全」の状態がシステムとして固定された場合、そこで育った子どもは、幼い頃から家庭内の危機を肌で感じ、生きのびるために必死で家庭システムに自分を順応させていきます。そして家庭内の暗黙のルール(「感じない」「信じない」「話さない」-C.Black)を身につけるのです。思春期に家庭内暴力や摂食障害などで表現する場合もあれば、「いい子」のまま大人になり、非常な生きにくさを感じる人もいます。
 子どもの頃の自分と向き合い、自分を語り、生きる苦しさから回復するための治療や援助の場が増えてきています。 (C.O.)

アディクション(嗜癖)

 この言葉には変遷がありました。アルコール問題の用語としては不適切と世界保健機関から廃語の方向で扱われ(1965年)、依存症の用語が使われていました。しかし、80年代になって、アディクションは現代の社会病理を説明する概念として再びクローズアップされてきました。すなわち止めよう、止めなければ、と思っていてもコントロールできなくなった状態、有害となった悪習慣を指して使われます。シェフA.Wなどの米国のセラピストたちは、嗜癖を2つのサブカテゴリーに分けようと試みています。1つは、ある物質を身体内に摂取、常用して快体験を得るもので、物質嗜癖(サブスタンスアディクション)と呼びます。アルコール、麻薬、タバコなどがあります。もう1つは行為自体、すなわちプロセスそのものに快を得るもので、過程嗜癖(プロセスアディクション)と言います。ギャンブル、強迫的買い物、過食嘔吐などです。ワーカホリック(仕事中毒)やラブ・アディクションという表現もあります。 (H.T.)

アパシー・シンドローム(Apathy Syndrome)

 笠原嘉(1984)が提唱した、1970年前後から増えてきた高学歴青年に多くみられる独特の無気力反応です。高校生から30歳台にわたりますが、中心は大学生です。
 アパシーとは無気力、無感動、無関心といった意味で、臨床的には、①無気力、無感動、目標喪失感、意欲の低下などがみられ、本業から退却してしまいます。本業以外への参加にはそれほど抵抗を示しません。②本業からの退却には、優劣勝敗への過敏さが関係しています。つまり予期される敗北と屈辱からの回避です。③病前はむしろ適応のよすぎるほどの人で、広い意味での強迫パーソナリティです。あいまいさを許さない黒白二分式の完全主義と、攻撃性と精力性の欠如が共通しています。
 症状と経過からみて二つの類型、つまり「準神経症タイプ」と「ボーダーライン群」に分かれます。前者は、退却が軽度かつ短期でほとんど自力で回復し、後者は、長期にわたり経過中に一過的に、対人恐怖、軽うつ、軽躁、昏迷様状態、関係・被害妄想等を呈するが、統合失調症への移行はありません。治療は成熟を促すための精神療法でしかありませんが、治療へのモティベーションがないか少ないことが治療上最大の困難です。 (H.S.)

イネイブラー(enabler)

 「あることを可能にしてくれる人」という意味です。アルコール医療では、「飲み続けることを可能にしてくれる人」即ち「飲酒問題に巻き込まれ、飲酒の支え手になってしまった人」を言います。
 妻や母がイネイブラーになる例は多く、「酒を止めさせたい」と思いつつも、本人の飲酒問題の尻拭いや社会的役割の肩代りをしてしまい、本人が問題点に直面しないですむ環境を作ってしまうのです。家庭外に問題がもれることを恥じ、恐れ、また「自分が助けなければ、この人は何もできない」と考え、巻き込まれます。時には医療従事者もイネイブラーになりえます。「これが最後の入院」とお説教しつつ、何度も受け入れると「飲んでもまた病院がなんとかしてくれる」と本人に思わせるからです。本人とイネイブラーとの関係を最近は「共依存」と呼ぶようになりました。 (H.T.)

医療保護入院

 精神科(精神病院)の入院形態には大まかに任意入院、医療保護入院、措置入院の三つがあります。
 医療保護入院は精神保健指定医の診察により、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であって当該精神障害のために第22条の3の規定による入院(任意入院)が行われる状態にないと判断されたもので、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくても入院を認める入院形態です。
 この入院の法的性格に関しては、①保護者と管理者の間に有効な契約が結ばれていることを前提とした、本人の意思によらない強制的入院であること。②この様な入院が認められる根拠は、精神障害者本人が、入院の必要性について適切な判断をすることができず、自己の利益を守ることができない場合があるためです。このため入院の要件を明確化し、本人に病識がないなど、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態であることが必要とされました。
 医療保護入院の必要性の判断は精神保健指定医が行うこととなります。更にどういう理由で医療保護入院を行ったかについては、医療保護入院届や診療録に記載され、精神医療審査会によって事務的にチェックされることになります。
 この入院は昭和62年の精神衛生法改正までは、「同意入院」と呼ばれていました。その時の改正で、「医療保護入院」と改名され、更に精神保健指定医の判定を入院のための積極的要件とし、保護者の同意はその入院契約を補完するための消極的要件となったことなどがあげられます。
 なお、英国で類似の入院形態がありますが、医療保護入院はわが国独自の入院形態といえます。 (M.E.) 

SSRI

 SSRIはSelective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の略で、うつ病、うつ状態、強迫性障害の治療に用いられている新しいタイプの薬です。
 抗うつ薬の薬理学的作用機序はまだ解明されていませんが、脳内のセトロニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害することにより効果を発揮すると想定されている従来の抗うつ薬は効果発現までに1~2週間を要し、その上口渇・便秘・尿閉などの抗コリン性副作用が強く、また心臓・循環器系に対する副作用もあるため臨床的には使い難い薬でした。
 SSRIは従来の抗うつ薬と同等の効果を有する副作用の少ない薬として開発され、先行する欧米に10年遅れて日本でも使用できるようになりました。抗コリン性の副作用や心毒性などの副作用はほとんど出現せず安全な薬といえますが、服用初期に軽度の悪心・嘔吐・下痢などの出現が報告されています。 (T.F.)

SST(Social Skills Training)

 わが国では「生活技能訓練」と訳されており、精神科リハビリテーションの分野で最近急速に広まってきました。この訓練のねらいは、対象者の社会的能力を強化することにあります。具体的には、本人の希望に基づき生活の中で必要とされる対人的コミュニケーション技能や自立生活のための生活技能の獲得、行動の改善を援助します。
 この技法は、社会学習理論、行動療法理論、認知療法理論などに基づいて体系的、構造的に行われます。具体的には、参加者とともに改善したい行動に関する模擬場面を作り、ロールプレイを行って練習し、宿題を出すなどの行動的方法を用いると同時に質問をし、また問題解決技法を用い影響を与える働きかけを行います。個人でもグループでも用いられますが、グループでの効果が大きく、治療教育的グループワークプログラムとして有効といわれています。 (T.F.)

エンパワーメント(Empowerment)

 エンパワーメントは、パワーの増強、力の付与、権利を与えるという意味ですが、適訳がないとも言われます。米国で50年代から台頭した黒人運動や公民権運動などで用いられ1980年代以降のソーシャルワーク実践において強調されるようになった概念です。
 ソロモン(B.B.Solomon)は1976年に「黒人のエンパワーメント」を著しソーシャルワークにエンパワーメント概念を先駆的に導入しました。ソロモンの定義ではエンパワーメントとは、スティグマ化された集団のメンバーであるという理由で加えられた否定的な評価によるパワーの欠如状態の改善を目指して、クライエントの活動にソーシャルワーカーが関わっていく過程、となります。
 簡単に言うと、烙印を押されたことで力を削がれた人たちが援助者と協力して恢復していく道のりといえるでしょう。精神保健の領域でも社会的偏見にまつわる苦しみが多いだけに援助者にとって鍵となる概念です。 (J.Y.)

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解離性障害

 解離とは、本来ならばひとりの人間が統合して持っている精神機能(記憶、意識、知覚、同一性など)が連続して統一されていない状態を言います。この状態は病的な状態のときにのみみられるわけではなく、非病的な状態として現れることもあります。たとえば、「考え事をしていて話しかけられても気づかない」「白昼夢」「何かに集中しすぎてまわりに起こる出来事にきづかない」などです。病的な解離は、非病的な解離に比べて持続が長く、その症状も特徴があり、それぞれに病名がついています。それらをひとまとめにして解離性障害と呼んでいます。その原因は心因性であり、トラウマ的な出来事、解決しがたく耐えがたい問題、障害された対人関係と時期的に密接に関連している。以下に代表的な解離性障害を解説します。
<解離性健忘>
 ストレスや外傷体験と結びついている個人的な記憶を想起できなくなる状態。自分の名前や生活史を想起できなくなることもありますが、一般的な知識はよく保たれています。
 詐病との鑑別が必要です。
<解離性遁走(フーグ)>
 突然、家庭や職場から離れ、時には数百キロも旅をすることがあり、遁走中には自分についての記憶がないものをいいます。見知らぬ土地で警察に保護され、自分の住所も家族のことも答えられない、というようなかたちで発見されます。
<解離性同一性障害>
 多重人格とも呼ばれる状態です。複数の別の人格が同一人物の中に存在し、それぞれの人格ごとに独立した行動をします。不安障害、気分障害、薬物依存を伴う場合や境界性人格障害が合併することもあります。生活歴に児童虐待(性的虐待など)などの外傷体験が見られます。しかし、学者によっては多重人格の存在を認めない立場の人もいます。
<離人症性障害>
 自分の意識が自分自身から遊離して、自分が外部の傍観者であるように感じる状態が持続または反復して続くものです。現実の出来事に現実感がなく、映画の画面を見ているように感じられ、自分の肉体も自分のものであるという感覚がなくなってしまいます。
 同じような状態は、健康な人にも疲労時などにみられることがあります。また、うつ病や統合失調症など精神疾患の部分症状としてあらわれることもあります。
<解離性転換障害(身体症状への転換)>
 歩けない、目が見えない、声がでない、皮膚感覚がなくなり痛み、熱さがわからないなどの症状があるにも関わらず、身体医学的な背景が認められないものです。これらの症状は葛藤や苦悩などが体の痛みや機能障害に転換されたものと考えられます。(S.K.)

 

学習障害

 学習障害とは、全般的な知的な遅れはないが、聞く、話す、書く、推理するあるいは計算するなどの能力の習得と使用に著しい困難さを示す障害群を総称する用語です。このような認知障害は、必然的に社会的な場面での行動特性に反映されるため、知的な評価よりも対人的な場面でのほうが問題を顕在化させる場合が少なくありません。
 原因については詳しくは分かっていませんが、中枢神経の機能障害によると推定されます。したがって、家庭環境や社会環境などの環境的に恵まれない結果として学習上の問題を持つ子供や、症状が視覚障害や知的障害が直接の原因と推定される子供は除外されます。ただ、診断する側の適用の幅が広いため診断の一致度は高いとは言えません。特に幼児期では、行動や言語面で兆候が見られても総体として知的能力に遅れが見られないため、将来にわたる障害としての認識は持たれにくいし実際明確な識別も難しいです。早期療育の場面で診断上の混乱を持ち込み適切な療育の機会を逸する場合も少なくありません。現状では、学校教育の場で障害として顕在化することや対処の中心が教育的な配慮が中心となるという意味では教育的な意味合いの強い診断と言えます。
 ただ前述したように障害は就学期間の教科学習に留まりません。というより年齢が増すに従って、対人場面での自然な振る舞いが取れず、周囲の理解や配慮のないままに社会集団から孤立していく過程も深刻です。障害としての社会的な認知や福祉的な援助を受けにくいという二重の負担を被っているのが実情でしょう。
 しかし、社会的な保護の対象と考えることも適当とは言えません。学習の障害というよりも普通と信じている学習以外の方法で学習を積み重ねる個性として尊重した上で、幼児期の早期対応や、教育期間以後の就労や社会活動などでのトータルなケアシステムが求められます。 (K.K.)

過食症(Bulimia)

 極端なダイエットを契機に発症する例が多く、習慣的または周期的に、大量の食べ物を食べ続ける病態です。特に若い女性に多いですが、男性のケースもあります。
 DSM-Ⅳによると、「週2回以上、3カ月にわたるむちゃ食い。むちゃ食いの間は、自分ではどうすることもできない。一方で痩せたい、痩せねばという思いにとらわれており、体重増加を防ぐため、嘔吐、下剤の乱用、絶食または激しい運動を繰り返す。」とあります。
 身体的には、拒食後の無月経、虫歯、腹痛、不整脈などを伴いやすく、精神的には、罪悪感、落ち込み、不安を強く感じます。また、それらを忘れるためにさらに過食するという悪循環にはまりこみます。患者さんは、回復を望みながらも深い無力感を抱き、対人関係がうまくいかないことから引きこもることもあります。家族も巻き込まれて混乱し、家族の干渉と患者の反発という共依存的な悪循環も起こりやすく、家庭内暴力などの問題が加わって、さらに難しくなる場合も少なくありません。アルコール依存や薬物依存と合併していく例もあります。
 最近は、思春期問題としてのみならずアディクション問題としてのアプローチをする機関も増えてきました。治療は、①病気として受けとめるための心理教育 ②内科・婦人科身体治療、カウンセリング、認知療法、行動療法、薬物療法、フェミニストセラピーなどの個人療法③家族療法 ④自分一人ではないことがわかり回復への希望が持てる援助(自助)グループの活用、などいろいろなアプローチが報告されています。 (Y.T.)

強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)

 冷静な時には、それが無意味で不合理であり、その必要がないことを自覚しているにもかかわらず、意志に逆らってある観念や表象や衝動が常同的な形で、繰り返し心に迫ってきたり(強迫観念)、ある行為を繰り返し確認せずにいられないような状態(強迫行為)に持続してとらわれている時、強迫性障害と診断します。
 強迫観念は嫌な内容が多く、強迫行為は恐れている出来事を取り消したり予防したりする目的を持っているようにみえます。多くの症例では強迫観念と強迫行為の両方をあわせ持っていますが、一方だけの場合もあります。
 強迫性障害の発症は通常小児期か成人早期のことが多く、出現頻度に男女差はみられません。また、その基礎となっている人格にはしばしば顕著な制縛的特徴が存在しています。経過はさまざまですが、慢性化して周囲を巻き込み、患者の毎日の生活習慣、社会的活動、職業機能などが著明に障害されている症例では入院治療が必要です。 (T.F.)

グリーフワーク(Grief Work)

 深い悲しみを癒す作業、悲嘆作業、喪の作業などと訳されます。もともと悲哀は人生につきものであり、病的な展開をするものではありませんが、心に傷を残すほどになると不眠や抑うつ、イライラ、感覚の鈍麻などが強く出ることがあります。心的外傷の影響については、災害や戦争での肉親の死など衝撃的な体験による様々な後遺症(PTSD)で広く知られるようになりました。また、アルコール依存症ないしは機能不全の家庭で育ち大人になった人たち(AC)の回復過程や統合失調症で健康を喪失した本人や家族もある時期グリーフワークが必要とされます。
 いずれにしろ深い悲しみは十分に感じとられ、表出され、分かち合われることが病的な悲嘆とならないために大切です。当人だけでうまく進められない場合、専門家や同じ悩みを持つ人と共同して悲しみを癒す作業(グリーフカウンセリング、グリーフセラピー)が必要となるでしょう。 (J.Y.)

グループホーム

 1992(平成4)年度からスタートした精神障害者地域生活援助事業に基づいて運営されている、5~6人規模の居住型(永住型)の共同住居をグループホームと称しています。
 入居対象者は、①日常生活上の援助を受けないで生活することが可能ではないかまたは適当でない者、②一定程度の自活能力があり、数人で共同生活を送ることに支障がない者、③就労(福祉的就労を含む)している者、④日常生活を維持するに足りる収入がある者、のいずれにも該当する精神障害者です。配置された世話人が(専任職員)が、これらの人々に食事の世話、服薬指導、金銭出納に関する助言など日常生活に必要な援助を行います。
 障害をもつ人ももたない人も地域でともに暮らすというノーマライゼーションの理念の具現化としての「居住」空間の確保は、全国的に波及した共同作業所設置運動に続く、地域精神保健福祉活動の次なる主要テーマといえるでしょう。 (T.F.)

芸術療法

 わが国では art therapy を「芸術療法」と訳し、あらゆる芸術的、創造的諸活動(造形、陶芸、箱庭、音楽、舞踏、詩歌等)を媒体にした治療的アプローチ全体と定義しています。しかしこの包括的な概念はわが国特有のもので、欧米においては art therapy は絵画療法に特定されることが多いようです。日本で芸術療法と一括される絵画療法、音楽療法、舞踏療法などはそれぞれ独自のジャンルとして教育がなされ、様々な場面でセラピストが活動しています。
 いずれにしても、これらは「言語によるコミュニケーションを主とした精神療法」に対比して「イメージによるコミュニケーションを主とする非言語的精神療法」と考えることができます。つまりその本質は "言葉では言い表せない自己を芸術活動を通して表現させ、それを治療的に活用すること" なのです。同じように絵画や音楽を用いても「活動を楽しむこと、あるいは活動に従事すること」という意味での援助については、レクリエーション療法・作業療法と呼んでいます。 (N.O.)

高次脳機能障害

 私たち人間の脳は、高性能でデリケートな部品でできたコンピューターにたとえられます。ところが、交通事故等で強く頭を「ゆさぶられる」ことによって、なかの部品のケーブルがちぎれてしまい、コンピューターの機能が部分的に停止してしまうことがあります。これが「脳外傷」です。
 脳外傷によって起きる障害は、大きく分けると、身体機能障害、認知機能(情報処理)障害、行動傷害があり、障害者の社会復帰の足かせとなっています。この認知や記憶、言語、行為などの障害は「高次脳機能障害」と呼ばれることもありますが、今のところ必ずしも厳密に定義されているものではありません。そして、この認知機能障害等は外見からはわかりにくいのが特徴です。
 脳外傷は、治療、リハビリテーションによりある程度の改善は望めますが、障害が残ってしまうこともあり、そういう場合には障害者の家族はもちろん、周囲の方々も援助者となり、スタッフ(専門家)とも協力して「社会生活上、問題となる行動を出来るだけ未然に防ぐように対応する」のが最も重要です。 (N.O.)

国際生活機能分類

ICF(アイ・シー・エフ)の項参照

コンシューマー

 医療を提供する「治療者」に対して医療を受ける側のことを「患者」と呼ぶのが一般的です。しかし最近患者のことを「コンシューマー(consumer=消費者)」と呼ぶことがあります。コンシューマーとわざわざ言い換えるのは、これまでのように医師から一方的な施しとして医療を受けるのではなく、商品を十分品定めして購入するように、患者自身が良い医療を選択していく時代だということを強調するためです。「説明と同意(インフォームド・コンセント)」に基づいて患者が納得できる医療を受けられる体制を作ることが大切なわけです。
 ただし、医療を商品と同じに扱ってよいのか、また精神科医療ではいつも対等で自由な入院契約が成り立つわけではないなど、コンシューマーという市場原理に基づいた用語を医療の世界に導入するには疑問もあり、これに代えてユーザー(利用者)やサバイバー(精神病院からの生還者)と名乗って精神医療の改革に努める人たちもいます。 (T.I.)

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さ

サイコドラマ(心理劇)

 サイコドラマは即興劇の手法を用いた集団精神療法の一つです。
 通常、一人の参加者(主役と呼ぶ)に注目し、その人の人間関係などについて具体的な場面を組み立て、参加者全員で主役の問題について考えていきます。言葉のみのグループワークに比べ、何かの役(主役のお父さん役、恋人役、上司役など)になって実際に体を動かし場面を目の前に作るので、参加への抵抗感が減り短時間で効果的なセッションが行い得るというのが特徴です。
 また、ロールプレイが特定の場面設定を予め行っているのに対して、サイコドラマでは次々と主役の語る内容に合わせて場面が変化します。そして、参加者がストーリーの全体を共有することによって深い共感が生じ、その共感をベースとした暖かい雰囲気は主役に自己を振り返るまたとないチャンスを与えてくれます。一方、主役以外の参加者は、主役を含むドラマの登場人物に自分の姿を見出し、思いを重ねていくのです。
 精神保健領域における応用の可能性は広く、当事者の治療・問題解決という点では人格障害、摂食障害、統合失調症などに適応があり、他のグループワークや精神療法との併用も可能です。家族会などで家族と当事者の関係を考えたりするときにも有効です。
 また、精神保健のサービスを提供する側(保健師や自治体の職員など)の心理的な葛藤の解決やスーパーヴィジョンにも広く使われています。 (M.Y.)

自殺対策基本法

 我が国における自殺の死亡者数は、平成9(1997)年までは25,000人前後で推移しておりましたが、平成10(1998)年に30,000人を超え、それ以後は、その水準で推移しております。
 自殺には、健康問題、経済・生活問題、家庭問題の他、人生観・価値観や地域・職場のあり方の変化など様々な社会的要因が複雑に関係しているとされ、自殺予防対策の推進には総合的な対策が必要とされています。
 こうしたなか、自殺防止と自殺者の親族等の支援の充実を図ることを目的に、国や地方公共団体などの責務を明確化した自殺対策基本法が、平成18(2006)年6月21日に公布されました。
 この法律では、「自殺対策の基本理念」「国、地方公共団体、事業主、国民のそれぞれの責務」「政府による自殺対策大綱の策定と、国会への年次報告」「国・地方公共団体の基本的施策」「内閣府に関係閣僚をメンバーとする自殺総合対策会議を設置」することなどが盛り込まれています。
 また、基本理念には「自殺が個人的な問題としてのみとらえられるべきものではなく、その背景に様々な社会的要因があることを踏まえ、社会的な取り組み」として自殺対策が実施されなければならないことが規定されているほか、基本的施策として、国及び地方公共団体は、国民の理解の増進や医療提供及び自殺発生回避のための体制の整備、自殺未遂者や自殺者の親族等に対する支援を講ずることが規定されております。
 この法律の成立を機会に、事業主や住民の皆様にも自殺予防についての認識が深まること、さらに行政と民間が一体となって自殺予防対策が推進されることが期待されます。(M.N.)

 

心的外傷後ストレス障害
PTSD(ピー・ティー・エス・ディー)の項参照

性同一性障害

 社会において価値観が多様化するなかで性のありかた自体も変化し、従来築かれた男女の性意識が変遷し、求める性役割も大きく変貌しつつあります。
 性には男性、女性という身体的(生物学的)側面(セックス)と性の自己認知(「自分は男あるいは女である」)・自己意識(「男あるいは女として暮らすことが合っている、しっくりする」)という側面(ジェンダー)がありますが、性同一性障害とは「生物学的な性は完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性別に属しているかをはっきり認識していながら、その反面で、人格的には自分は別の性別に属していると確信している状態」と定義されています。
 性同一性障害では①反対の性になりたいと強く望む結果、反対の性としての服装、遊びを好む、②自らの生物学的な性別に強い嫌悪感を抱き、自分の性別を象徴するものに強く反発する、③日常生活で反対の性別役割をとろうとするなどの症状がみられますが、最近では自らの生物学的性別と自己の性意識(自己認知)の不一致のために生物学的性別に対する違和感、嫌悪感を抱く人達を広く性別違和症候群ととらえ、その中で上述したような特徴的な症状を示すものを性同一性障害といい、なかでも、性器を転換して反対の性に~本人にとっては本来の性に~変えたいという変性願望や性転換願望を持ち、ホルモン投与や性転換手術までも行おうとする状態を性転換症と呼んでいます。(T.F.)

成年後見制度

 従来の制度は「禁治産制度」といわれ、本人の事理弁別能力の程度に応じて、禁治産者には後見人を、準禁治産者には保佐人を選任しました。法改正により禁治産の名称を改め「後見」とし、本人の能力の程度に応じて「後見」類型、「保佐」類型とし、より程度の軽い人のための「補助」類型が新設されました。それぞれ対応する成年後見人を「後見人」、「保佐人」、「補助人」といいます。改善点として手続きの簡素化、費用の軽減、戸籍にのせないなどがあります。このほか判断能力が衰える前に後見人を選任しておく「任意後見」の規定が盛り込まれました。これらは主に、痴呆性高齢者などの財産管理や身上監護を内容とするものです。
 なお、その程度がこれら法定後見の対象にならない人でも、関連するものとして地域福祉権利擁護事業があります。 (M.E.)

措置入院

 措置入院とは精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律(以下法)第29条に規定されている非自発的入院(強制入院)のこと。この規定では、このまま入院治療を行わなければ「自傷他害(自分自身を傷つけたり、他人に害を及ぼす)のおそれ」がある精神障害者を、精神保健指定医2名が診察し、入院治療の必要性が認められた場合、知事(札幌市など政令指定都市は市長)の命令で指定病院に入院させることができる。

措置入院の条件である「自傷他害のおそれ」を示す症状を措置症状と呼び、具体的には幻覚(幻聴・幻視・体感幻覚等)や妄想(被害妄想・関係妄想等)を基盤とした興奮や奇異で了解不能な言動(不法侵入、器物破損等)を指す。措置入院では、6か月ごとに病状や治療経過を報告しなくてはならない(入院後6ヶ月を経過するまでは3ヶ月目にも報告しなければならない)。精神保健指定医は措置症状が消褪したと判断したら、速やかに措置入院者の症状消退届を提出し、措置入院を解除して、他の入院形態に変更するか、退院させなければならない。

ちなみに、北海道では平成18年度の新規措置入院件数は58件である。(S.K.)

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退院請求

 精神病院に入院している人、またはその保護者は、都道府県の知事に対して退院請求を行うことができます。
 1987年、当時の精神衛生法から精神保健法への改正により、入院や処遇の妥当性を審査する精神医療審査会制度が設けられ、入院している患者さんの退院請求及び処遇改善請求の権利が法的にも保障されました。
 請求は文書あるいは口頭で行うことができ、請求を受けた知事は、精神医療審査会に審査をはかり、審査会では、患者さんの人権が守られ適切な医療が行われているかどうかについて審査を行います。
 北海道においては、現在、医師・法律家及び有識者から成る15名の審査委員が3つの委員会に分かれて審査にあたっており、患者本人・保護者及び医療機関から実際に意見を聴取したり関係者から報告を求めるなどして、その入院形態または処遇が妥当かどうか判断しています。
 また、平成14年から、審査会の事務は、行政からの独立性と専門性を高めるために精神保健福祉センターが行うこととなりました。北海道立精神保健福祉センターでは、請求のための専用電話回線を設置し、より専門性を生かしたきめ細かな対応を目指して、日々寄せられる様々な訴えをお聞きしています。 (K.N.)

タイプA

 1959年フリードマンとローゼンマンによって名づけられた行動パターンの一つです。タイプA行動パターンとは、時間切迫感(せかせかと時間に追いまくられること)、精力的活動、競争性・攻撃性(競争を好み、他人に挑戦し、敵意を抱く傾向)などを中核とする行動パターンで、上記の行動特性と異なるタイプをタイプBといいます。
 タイプA者は、仕事上での昇進が早く、高い職業的地位につきやすいといわれるが、タイプB者に比べて冠状動脈心疾患の罹患率が2倍以上高いとされ、精神的には「燃え尽きる」可能性があるといいます。職場のメンタルヘルスなどの領域で、ストレス研究の一つのテーマとなっていますが、最近タイプAと冠状動脈疾患との関連について否定的な報告もあり、さらに多角的な検討の必要性が指摘されています。 (M.E.)

地域福祉権利擁護事業

 社会福祉事業法の改正(平成12年6月)による新「社会福祉法」において、福祉サービスはこれまでの措置から契約が基本原則になりました。しかし、契約上の意思決定能力の不十分な方に対する「自己決定と選択」を保障する必要があり、それらの方への権利を擁護する目的で地域福祉権利擁護事業が実施されました。
 対象は在宅で生活する痴呆性高齢者、知的障害者及び精神障害者で、サービスの内容は①福祉サービスの情報提供や利用手続き、利用しているサービスの苦情解決への手続き ②公共料金の支払いや年金受領の確認、預金からの生活費の払い戻しなど日常的な金銭管理 ③預金通帳や年金証書などの重要書類の預かり、などです。
 実施主体は北海道社会福祉協議会(道社協)で、「地域福祉生活支援センター」を各支庁に置き、「自立生活支援専門員」を配置し、相談の受付から面接・調査、生活支援計画、契約締結までの一連の支援を行います。契約後の具体的なサービス提供は、各市町村ごとに登録された「生活支援員」が利用者のもとを訪問して提供します。 (K.S.)

Tグループ

  TグループのTは「人間関係訓練グループ(human relations training group)」または「対人的感受性訓練(interpersonal sensitivity training)」のtrainingのTであり、グループで率直に自分の感情を表現することによって、感情への感受性を高め、みずからの対人関係の歪みや癖に気づき、改善しようとするものです。
 グループ体験を通して、患者や家族の立場に立って、見たり、聴いたり、援助者としての自己を見つめ直すことと同時にグループのすすめ方を学ぶことがねらいです。 (K.S.)

DV(ドメスティック・バイオレンス)

 子供の虐待、老人の虐待、夫婦間の暴力など、家庭の中にも様々な形の暴力的問題が、かつて予想された以上に潜在的に存ることが、近年わが国でも取り沙汰されています。欧米ではこれらを総称して、family violence または domestic violence(DV)と呼びますが、これを直訳すれば「家庭内暴力」となります。ところが、日本ではこの単語で、不適応を起こした思春期の息子が母にふるう暴力を、主に指してきました。しかし、息子→母 型の暴力は、社会現象としてはどうやら日本特有のものらしいです。
 さて近頃、新聞雑誌等で、DVという略語をよく見かけます。あえてDVという表記を使っている時、多くは夫婦間暴力のことを指しており、息子→母 型の「家庭内暴力」と区別する意図があるようです。どうやら日本では、DV≒夫婦間暴力の意味で定着しそうです。
 さてそうした場合、DVとは、パートナー関係にある男女間の、主に男性から女性にふるわれる暴力を指します。だから、法的には夫婦ではない、恋人や内縁の夫からの暴力も概念としては含まれます。また、DVは基本的に、男性が暴力で女性を支配従属させようとする行為です。それゆえ、身体的暴力ばかりでなく、心理的・性的な暴力も重要です。
 今後、社会の認識が進むほどに、ケースの掘り起こしも加速度的に進むことが予想されます。そうなれば、全国どの地域にも縁のある問題になるでしょう。このことを、精神保健の関係者も心しておきたいものです。 (Y.A.)

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な

ニート

 ニートとは、Not in Education, Employment, or Trainingの頭文字、N、E、E、Tをとったもので、「職につかず、学校に行ってもいず、職業訓練の場にもいない」若年層の人々を意味します。もともとは1990年代後半にイギリスで、若年層の雇用政策上の論議から生まれた言葉で、年齢的には概ね15~24才の年齢層を対象にしています。一方、日本で使われ始めたニートという言葉は、イギリスとはやや異なった背景、異なったニュアンスを持っています。この日本型ニートにはイギリスの定義にはない「求職活動をしようとしない」という条件が加えられ、また年齢的にも15~34才の層を対象としています。「ひきこもり」の社会問題化が背景にあり、その延長線上の「ひきこもってはいないが、働こうとしない若者たち」というのが日本におけるニートのイメージのように思われますが、各方面共通の明確な定義があるわけではありません。ニートはマスコミにもとりあげられ、一種の流行語となった感があります。職についてはいるが意欲や目標をもてない”仮面ニート””社内ニート”という言葉まで出現してきました。国で用いている「若年無業者」とはニートとほぼ同義語ですが、内閣府が2005年3月にだした集計では84万7千人、厚生労働省の平成17年度労働白書では64万人と発表されました。(数字の差は対象の条件の違いからきてます。)昨年政府もようやく重い腰をあげて、厚生労働省の「若者自立塾創出推進事業」、内閣府の委嘱事業である「長期ボランティア活動」など、青少年の就労自立にむけて試験的な試みを始めていますが、的をしぼりきれていない感もあります。国はニートに対する視点を整理して、より実効性のある施策をうちだしてほしいものです。(H.H.)

脳卒中後うつ病   

 脳卒中患者の多くが「うつ」になるらしい。フォルシュタイン(1977)やロビンソン(1982)たちは、脳卒中受傷後の急性期に、患者の30~50%がうつ病・うつ状態になるという「脳卒中後うつ病」を報告した。臨床症状は脳卒中のないうつ病と変わらなかった。最近では、「脳卒中後うつ病」は無症候性の脳梗塞(検査上のみ認められる)のあるうつ病と併せて「脳血管性うつ病(vascular depression,VD)」と総称される。
 脳卒中(あるいは脳血管性障害)では、脳のある領域への血液供給が突然断たれた結果、特定の組織が持続的に障害される。クレペリン(1921)やブロイラー(1951)のかつての報告と同じく、「脳卒中後うつ病」の発症は脳の損傷(とくに左前頭葉)と深く関連し、病後の身体障害や社会的活動の制限による二次的うつ病ではなかった。脳血管障害は高齢者に多く、「脳卒中後うつ病」は身体機能の回復のみならずリハビリテーションを妨げ、「うつ病と自殺」という観点からも高齢者の医療や福祉という重大な社会問題となろう。
 さて、うつ病患者に”はげまし”は禁物とされている。それでは「脳卒中後うつ病」患者が受傷後すぐに始めるリハビリのために、どのような”はげまし”があるのだろうか。現場では難しい舵取りが求められる。(J.I.)              

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発達障害と発達障害者支援法

 発達障害とは、先天的な脳の機能障害で、意思疎通が苦手な人(アスペルガー障害や高機能自閉症)や、特定の基礎的な学習が苦手な人(学習障害、LD)、じっとしていることが苦手な人(注意欠陥多動性障害、ADHD)などが含まれます。これらは、先天的な障害であるにもかかわらず、本人の性格や意欲、親の躾の問題であるといった誤解を持たれ、人間関係のトラブルに繋がりがちで、不登校や引きこもりの原因の一つになっているとも言われています。一方、文部科学省の調査では、普通学級に通う小中学生の6.3%で、これらの障害のいずれかを抱えている可能性があったと報告されていて(約16人に1人!)、支援の必要性が指摘されていました。
 このような中で、4月に施行となったのが発達障害者支援法です。はっきりとした知的な遅れが無いため障害とは認められずに、これまで福祉サービスの谷間に置かれてきた方々を支援することを目的とし、障害の早期発見から自立に至るまでの総合支援を国と自治体に義務付けています。
 道内では、函館に発達障害者支援センター「あおいそら」がある他、「発達障害者支援地域センター」が旭川市に設置されることが最近決まりました(道東地域にも計画中)。札幌市も自閉症者専門施設を新設の予定です。当センターでも相談対応をしていますし、特殊教育センターなどを中心に特別支援教育も実践されてきていますが、全体としては、法律はできてもその運用に関ては発展途上と言えそうです。                              (M.Y.)

パニック(恐慌性)障害

 理由もなく突然、動機や発汗、身震い、息苦しさ、胸痛、めまい感、しびれ感、吐き気、死への恐怖などの症状が現れる「パニック発作」を繰り返す病気です。一度発作が起きると、「また発作が起きるのではないか」という予期不安に襲われます。発作が起きた時に逃げることができない状況(特急電車、高速道路での車の運転、デパート、理髪店など)を避ける「広場恐怖」を伴うことも少なくありません。
 この病気は慢性化するとうつ状態やうつ病を合併することも多く、患者のQOL(生命・生活の質)は著しく損なわれますが、大部分は抗うつ薬や抗不安薬が有効です。パニック発作が起きる仕組みについては脳内の神経伝達物質の関与が推定されており、治療は薬物療法が基本となりますが、行動療法や森田療法、バイオフィードバック療法なども試みられています。 (T.F.)

引きこもり

 「引きこもり」は最近マスコミ等で取り上げられていますが、類似の症状は大学生の無気力症(スチューデント・アパシー)という形で1970年代から見られていました。さらに、これは明治時代に「遊民」と呼ばれていた若者と同じで、夏目漱石の小説の主人公はみなそうだとも言われます。
 「引きこもり」は精神疾患による症状の一つとして現れることがありますが、病名ではありません。単に「引きこもり」という場合は、一般に精神病によるものでないものを指しますが、今のところ学術的な定義はありません。臨床的にはいろいろな基準が提案されていますがそれらの共通部分をまとめてみると、おおむね次のようになります。
 ①社会的に要請される役割(仕事・学業)から、非自発的に退いていること
 ②これが、おおむね6ケ月~1年以上続いていること
 ③精神病(特に統合失調症)によるものでないこと  (N.K.)

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

 PTSD(Post-traumatic Stress Disorder)とは、耐え難い心的外傷を受けた人にみられる精神障害で、DSM-Ⅲ(1980)に新たに登場した呼称ですが、この疾患概念の起源は古く、臨床上はクリミア戦争(1853~1856)、第一次、第二次世界大戦といった戦争時の経験から1つの疾病としてとらえられてきました。
 診断基準の大略は、①きっかけとなる深刻な出来事の存在(自然災害、戦争、激しい事故、拷問、殺人事件、レイプ、テロリズムなど) ②心的外傷の再体験(反復想起、悪夢、フラッシュバックなど) ③心的外傷にまつわる行動の回避と感情的な萎縮(心因性健忘、興味減退、疎遠感なども含む) ④過覚醒による諸症状(睡眠障害、易怒性、集中困難、驚愕、警戒心など)です。これらの症状は心的外傷後、数週から数カ月にわたる潜伏期間(6カ月を超えることは稀)を経て出現します。
 PTSDの治療は恐怖症の治療と基本的には同じであり、その治療目標は、人生を左右する深刻な出来事を乗り越えさせ、個人の有能感を取り戻し、現実に再適応できるように援助することにあります。 (H.S.) 

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陽性症状・陰性症状

 統合失調症では多彩な症状が見られますが、大きく「陽性症状」と「陰性症状」の二つに分けられます。
 陽性症状には妄想(他人に自分の心の中を知られてしまう、仲間外れにされるなど周囲の出来事に特別の意味を持たせて解釈するものが多い)、幻聴(現実にはない声に話しかけられたり、非難めいた口調で批評されたり、命令されたりするものが多い)、混乱した思考とまとまりのない会話、まとまりのない行動や落ち着きのなさ、感情の不安定さなどがあります。これらは主に発症間もなくの急性期に見られ、薬物療法が有効です。
 一方、陰性症状には意欲や自発性の低下、感情鈍麻(感情表現が乏しくなるものから、快・不快・喜怒哀楽の感情反応が消失するものまでその程度は様々です)、思考内容の乏しさ、集中力や注意力の低下、ひきこもりなどがあります。これらは主に慢性期に見られ、症状の改善には薬物療法のみならず適切なリハビリテーションへの導入が大切です。 (T.F.)

抑うつ状態

 抑うつ状態とは抑うつ気分(気分がふさぎこみ、ゆううつでもの悲しく、寂しさ、孤独感が強まり涙もろくなる)、生活全般にわたる興味・喜びの喪失、行動・思考の制止(気力・決断力の低下、集中力・思考力の減退)、不安焦燥感、自信喪失、希死念慮(軽い場合は生きている意味や価値がないと感じる)などの精神症状や不眠、食欲不振、便秘、胸部・腹部の重苦しさ、頭痛、めまい、疲労感などの多彩な身体症状を示す状態をいいます。
 抑うつ状態は典型的にはうつ病や躁うつ病のうつ病相にみられますが、それだけではなく悲嘆反応と呼ばれる近親者との死別の際や種々の身体疾患に合併してもみられます。近年最も広く用いられている診断基準(DSM-Ⅳ)によると、従来の躁うつ病、心因性うつ病、神経症性うつ病は気分障害の名のもとにまとめられ、その上で下位分類としてうつ病性障害、双極性障害(躁病を伴うタイプ)、一般身体疾患による気分障害及び物質誘発性気分障害に分類されています。 (T.F.)

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リフレクティング

 家族療法の技法のひとつ。直接の担当セラピスト以外のチームスタッフが当事者である家族の前で、自分たちの考え、意見を述べること。家族を肯定し現状に寄り添う立場が基本になりますが、家族(メンバー)に対立する意見が述べられることもあります。リフレクティングは、時には家族にとって癒され励まされる体験となり、あるいは硬直した家族システムの中に新たな価値観、選択肢を持ち込むことにもなります。そして、家族メンバーが自由度を高め、家族の中での役割をより機能的に演じることを可能にしていきます。 (N.K.)

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※ これらの用語解説はすべて当センターの「精神保健福祉ジャーナル」に掲載されたものです。