睡眠とは?

 人は生涯の1/4を睡眠に当てると言われております.人にとって必要不可欠であるこの睡眠も,今なお未知の部分が多い実に神秘的な生理現象です.しかし一つ認識すべき事は,睡眠とは「脳が,脳自身を休息させるために積極的に(能動的に)作り出す現象」であると言うことです.すなわち,脳が健全でなければ良い睡眠は作り出せないし,逆に良い睡眠がとれなければ脳の機能に悪影響を及ぼしてしまいます.ここでは,このとても大切な「睡眠」をお子さまに健やかにとってもらうためにはどうしたら良いのか,一緒に考えていきましょう.

睡眠・覚醒リズムの発達変化 

睡眠,覚醒,そしてそのリズム制御は全て脳の働きによってなされます.つまり脳が発達していく小児期は必然的にそれに沿って睡眠のパターンも変化(発達)していきます.詳しい神経学的なお話はここでは省略しますが,ご家庭での関わりにとって参考になる部分のみ簡単にお話します. 生まれてすぐの赤ちゃんは一定のリズムのない覚醒・睡眠の繰り返しが見られますが,徐々に覚醒の多い時間帯と睡眠の多い時間帯が分かれてきて,生後3-4か月頃の時期に昼間には覚醒,夜には睡眠が集中するという慨日リズムの基礎が築かれます.つまりこの頃までを目安に環境の上でも昼夜のメリハリをきちんとつけてあげることが重要になるということです. 生後4か月を過ぎると夜の眠りは長く持続し,昼の眠りはいわゆる「お昼寝」の性格を有してきます.お昼寝は生後6か月頃には午前と午後の1日2回ぐらいに落ちついてきて,個人差はありますが1歳半頃までに午後1回のお昼寝になってきます.生理的にお昼寝をしなくなるのはおよそ4-5歳以後とされています.これにも個人差がありますが,遅くとも小学校にあがる前にはお昼寝をしないで過ごすようになるのが普通です.     こういった一般的な年齢に沿った変化を理解しておくことは,お子さまの生活リズムの統制に向けて関わる上でとても役に立ちます.睡眠,遊び,食事など全てを含めて,今のお子さまにとってどのようなパターンで一日を過ごすのが理想なのかをまず考えてあげましょう.

睡眠覚醒リズム統制のための4カ条 

睡眠覚醒リズムの統制のためにはご家庭で気をつけるべき事がたくさんあります.お薬による治療に頼る前に,もう一度ご家庭でできることを考えてみましょう.

1.睡眠時の環境の整備(温度,騒音,そして光)

 部屋の温度,騒音は言うに及びませんが,睡眠には光が重要な環境因子となります.夜眠るときには部屋の光を落としてあげましょう.真っ暗が望ましいのですが,お子さまが不安に感じる場合もあります.安心して眠れる範囲で考慮してあげましょう.また逆に,朝起こしてあげるときに充分に光を採り入れて部屋を明るくしてあげる事も重要です.夏は起きた時から太陽の光を存分に浴びせてあげたいものです.冬は朝方暗いこともあると思いますが,人工光でもかまいませんので光に恵まれた環境においてあげて下さい.

2.食事,排泄のリズムも一緒に統制

 人の生活リズムを規定しているのは睡眠だけではありません.食事の後排便をしたくなる,食事の後眠くなる,などは生理学的な体の反応なのです.普段何気なく繰り返されている生活リズムにはこのような必然性があり,睡眠を含めた生活リズムの確立のためにはこれを考慮する必要があります.1日3回の食事,1日1回の排便を定時に行う習慣をつけましょう.

3.昼間の活動を快活に

 大人だって昼間長い時間横になってテレビを見ていたり,下手に昼寝などしてしまうと夜はなかなか寝付かれませんよね.できれば昼間は体を動かす大活躍を,それが困難なお子さまには好きな物を見せる,話しかける,などの覚醒刺激を与えてあげましょう.その際,特にかまってもあげないで眠りそうになったらたたき起こす,というのではまるで拷問のようです.大変だとは思いますが,できるだけお子さまが「楽しく起きている」ことを目標に関わることを心がけましょう.

4.お昼寝は時間を決めて1時間半ぐらいを目安に

 先にも書きましたようにお子さまはある程度の年齢まではお昼寝をして当たり前ですが,お昼寝が4時間にも5時間にもなれば夜に眠れなくなるのは当たり前ですね.また,たとえ短くてもそれが夕方遅くであれば夜寝付く時間に影響するでしょうし,正午をまたぐようであれば昼食の時間をずらさなくてはなりません.すなわち,お昼寝をさせる場合にはその長さと時刻の設定が重要であり,それを誤ると夜間の睡眠のみならず食事時間など他の生活リズムを乱す一因にもなってしまいます.以上を考慮すると,1日1回のお昼寝ならしっかりと昼食をとった後に1時間半から2時間,1日2回なら午後に加えて午前中の朝食後に1回短めに,といったところでしょうか.

 さて,これまでのことを考慮して具体的な関わり方を次に示してみました.これは一つの例であり,ここに示した具体的な時刻に関してはそれぞれのご家庭の生活によって変わってくるものと思います.ぜひ参考にしてみて下さい.

具体的な関わり例

・午前7:00前後にしっかりと起こし,部屋を明るくする.あるいは明るい所へ連れ出してあげる.

・午前8:00前後に朝食をとらせる.できれば排便は朝食後に促す.

・午前中はしっかりと覚醒刺激を与え,最低午後0:00からの昼食が終了するまで覚醒していることを目標とする.

・1日1回の午睡であれば昼食後に設定し,1時間半前後(長くても2時間)を目安としてしっかりと起こしてあげる(1日2回午睡をとらせる場合には1回目を朝食後早めの時間帯に設定する).

・夕食は午後5:00-6:00にしっかりととらせる.・午後8:00頃より静かで暗い部屋にて入床させ,寝かしつける.

 当然一日で簡単にうまくいくものではありません.睡眠障害には難治性のものも多く,あきらめてしまいたくなることもあるでしょうが,あせらず毎日根気よく関わり続けることにより徐々に効果が現れる場合もあるのです. このような試みにおいても改善しない難治性の睡眠覚醒リズム障害に対しては,薬物による治療も考慮していく必要がありますのでこれに関しては当センター小児科外来にご相談下さい.

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